『令和の民俗学』汐留一郎

日本のグランドデザインを考える

いすみ鉄道はなぜ再生できたか

2018-06-04 11:30:49 | 日記
瀕死の重病人であった「いすみ鉄道」がどうにか蘇生した。
それは鳥塚亮氏というひとりの公募社長の存在であった。

彼は帳面にズラズラっと書いて暗記して試験で良い成績をとっての秀才タイプではない。
受験のテクニックに長けた都内で育っているにも関わらず、明治大学卒である。
ただただ鉄道が好きで好きでたまらない。
価値観が一流大学に入る、出世やお金儲けではなく、いつも鉄道のことを考えている。

恐らく社長に就任した当初、田舎の地元民は疑いの目で見たに違いない。
なぜなら地方の人間が大好きな東大卒ではないのだから。
東大に入れる人間、その力量はガキの頃からずば抜けて、はるかに町の住民の上を行く。
そういう姿を見せつけられている。

官僚も揶揄したに違いない
「明治の首席なんて東大のビリだろ」
人それぞれだが、こういう意識が染み込んでいる役人も多い。

何故、重病人が生き返れたか。
それは、鳥塚亮氏が異質だったからに他ならない。

ストレンジャーキング
海の向こう(異界)から、王がやってきて地元の娘を娶り国の系譜が始まる。
日本に限らず離島でしばしば聞かれる神話である。
古事記のスサノオもそうであったかもしれない。

国家において国境を接する辺境では
異質の文化が流入し活性化する。
中央アジアなどでは仏教だかヒンズーだかムスリムだか
現地人は見分けられるが我々にはわからないが
華やかな文化が存在する。

ストレンジャーキングはその土地にしがらみがない分大胆な改革を進める。
人事を始めとして新しいことを始めても嫉妬や妨害は起きにくい。
人材を内部から抜擢すると
やつは子供の頃はどうだった、入社した時は俺の方が、絶対やつの言うことは聞かない。
極め付けは高校は俺の方が偏差値が高い。
大抵はこれで潰される。威勢のいいことを言って市長などになっても、いざとなると動けない。
仕方ないから、ヤクザや中央の大物が後ろ盾になる。

組織の大小に関わらず同じだ。
日産はカルロスゴーンを迎え再生したし
JALやシャープは倒産もしくは倒産寸前において異質な存在を取り込み生き延びた。

いすみ鉄道においての次期社長の人選
内部の者か外部から招くのか
日本中のファンを始めとして、企業経営者や行政の指導者は興味を持っている。
現状維持で少しずつ推し進めていくのか。
それとも突飛な共感を得られないような思いつきの発想を持ったトップにより迷走するのか。

これまでの路線を丁寧に推し進め
さらに磨きをかけて行くとともに
チャレンジもして失敗は出来るだけした方がいい。
始めてみると、今まで知らなかった事や問題はいくらでも噴出してくる。
前進するつもりが大きく後退していたなんてザラだ。
また、周囲は鳥塚というカリスマ以上の活躍を期待してはいけない。
これまでがボーナスステージだったのだ。
地道に真摯に弛まず続けていく。

カンボジアのバッタンバッタンに行くと
鉄道を引くべく赤土の大地にツルハシを振るっている。
今時、重機でなくツルハシとスコップだ。
しかし、彼らは偉大なアンコールワットを作ったクメール人の末裔として誇りを持っている。
今日もその鉄路を10センチ20センチ刻みで延伸している。









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