日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)交渉は、17日からブリュッセルで首席交渉官会合を再開する。農産品や自動車の関税削減など残された課題を集中的に議論し、今年初めには交渉の基本的要素で一致する「大枠合意」にこぎ着けたい考え。ただ、EU側が求める乳製品や豚肉などの関税撤廃をめぐり国内では強い反発が出ている。
「豚肉などの関税措置が撤廃されれば大きな影響が懸念される。市場開放に歯止めがかからなくなる」自民党有志議員による「日EU経済連携対策議員連盟」が16日、初めての総会を開き、会長の岡田広参院議員は環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で合意した水準以上の譲歩を認めない考えを強調した。
今回の首席交渉官会合で争点解消のめどが付けば、岸田文雄外相とマルムストローム欧州委員(通商担当)が閣僚会合を開き、大枠合意する予定だ。だが、EUは豚肉やチーズ、パスタ、ワインといった農産品を中心にTPP以上の市場開放を要求。全国農業協同組合中央会(JA全中)は「日本の農業を守るため(豚・牛肉や乳製品など)重要5分野は譲れない」(大西茂志常務理事)と反発しており、自民党は次期衆院選への影響も考慮し政府の動きを監視する。
関税交渉の焦点は乳製品だ。EUは著名な産地名を知的財産に指定する「地理的表示(GI)」の保護強化と合わせ、カマンベールやモッツァレラなどTPPで現状維持となったソフトチーズの関税削減・撤廃を図る。国内では競合する高品質チーズの生産量は少ないが、高付加価値の加工品で収益改善を目指す酪農家への影響は避けられない。
さて、再開する交渉はどうなるか?