思考の踏み込み

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

形影神29

2014-10-08 05:09:21 | 
「その前に少し、整理させて頂きたい。」

知性が発言した。
肚はご随意に、と一言。




「要するに ー 我々が "心" の範疇にあると思っていた "聖" への志向とでもいう様な類の傾向は、実は心の作用ではなく、彼ら "魂魄" の働きであり、その彼らの本能と、"形" の本能は方向性が違う、それが我々が抱えた "乖離性" という矛盾であると ー そういうことで宜しいか?」

「さすがは知性だな。それだけ理解しておればもう "順逆" の問題の事もわかるだろう。私がこれ以上話すには及ぶまい。君が話してみてくれ。」

柔かな笑みを浮かべて肚は知性にそう言った。

「順逆…。」

そう呟いて少し知性はかんがえながらー 。

「淵明殿の話からも推測すれば、初めに在ったのは "形" ではなく、彼ら。
その "力" 、それを淵明殿は "気" と表現されたが…。ともかくもその気の作用によって "形" は凝って存在していると…。」

「だとすれば?」

知性の考えを導き出すように肚が接ぎ穂を入れてやる。そしてその次の言葉を待つ。

「だとすれば…我々の本質は "彼ら" こそであり、我々に彼らが宿っている ー という考えでは齟齬が生じる。
つまり…。」

「つまり??」



今度は意識と理性が挟む。それは肚とは違って結論を切実に求める声だった。

「つまり…… 我々という "存在" の主体は彼らなのではないか?形も心も…意識も理性も、その主体性に対しては "従" であるべきだと…もちろん知性も。
それが順逆 ー つまりこの世界の原理原則に上手く則る最善の選択なのではないか…?」

「………。」

意識、理性、考えている。
肚が言う。

「ふむ。では、彼の言った内容をふまえてこれまでの話を思い返してみて貰おうか。
性の問題、生業の問題 ー 。」

形、心、影もザワザワと話しはじめた。
直感と淵明は既にあまり興味がないのか、酒を酌み交わしながら何か違う話をしている。
感覚はどうやらまた寝てしまったようだ。



月は作り物の様に空々しく、相変わらず中天で輝いている。
柏の木は夜気を含んだ秋風にそよめく。
琴の音がその全てを包む様に響いている…。






最新の画像もっと見る

コメントを投稿