思考の踏み込み

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形影神8

2014-09-17 06:00:16 | 
ー 卒爾ながら伺いたい。
そう言っていきなり "理性" が問いかける。

「淵明殿、貴方は今、存在として何と呼ぶべきモノであるのか?俗に言う "霊" というやつだろうか?」



「なんじゃ?まだ酒の感想も言うとらんのに、忙しないことだ。」

そう言いながら機嫌は悪くなさそう。
どうやら酒がお気にめした様子。


「 "霊" と一口に言ったって様々じゃよ。生霊もあれば死霊もいるし、精霊と呼ばれるモノ達もいる。かくそれぞれに高低の位もある。ー まあわしも死んでみて初めて知ったことじゃがのう。」

だから難しい事は考えても無駄よ、お前さんも一度死んでみればわかることさ。

とは、淵明も言わなかったが、代わりに自らの詩を詠じようとした。

「えー、たしか…古えより…。」

「古えより皆没する有り、何人か霊長なるを得し。」

「おお!それよそれよ。我が代わりにあの小僧の為に詠んでやってくれい。」

もちろん、頼まれたのは "記憶" 。
実はこのモノが一番の淵明ファンなのではあるまいか。






" ー 古 (いにし) エヨリ 皆没スル有リ
何人 (なんぴと) カ 霊長ナルヲ得シ
死セズ 復 (ま) タ 老イズ
万歳 (まんさい) 平常ノ如キヲ
赤泉 (せきせん) 我ガ飲ニ給シ
員邱 (いんきゅう) 我ガ糧ヲ足サバ
方 (まさ) ニ 三辰ト游ビテ
寿考 豈ニ渠 (にわ) カニ央 (つ) キンヤ"


昔から人は皆死ぬ。
霊妙なる長寿を得た者も無し。
死なず、また老いず。
万年変わらぬ姿を保った人などいない。
不老不死の水をたたえる赤泉の水を普段から飲み、長命をもたらすという員邱の実で我が腹を満たせば。
まさに日と月と星の仲間入りして。
この寿命尽きるときなし。

※「山海経を読む 其の八」より。

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