わずかばかしのボストン滞在、砂時計のように残された時間が徐々に過ぎていくのを肌で感じながらも、短い時間を思いっきり楽しんできました。半年に1度の割合で日本に戻る時もそうだけれど、限られた時間で会える人の数って限られていて、今回もあと2週間ほどボストンに滞在したい気持ちのまま、ローガン空港を発ったのでした。数週間前に散髪したばかりだけど、時間を見つけてブルックラインにある美容室に行こうと思っていたのも事実で(これ以上切ると、ラスト・サムライの渡辺謙のような髪形になってしまうのですが…)、2年ほど世話になってたカターニャ(シチリア島)出身でダニー・アイエロに瓜二つなサルバトーレにハサミを入れてほしかったんだけどなぁ。彼の美容室で働くペルージャ出身のマリアという女の子が「できちゃった結婚」をする時には、みんなでお祝いなんかもしたりして…。人間臭さがプンプンとするフェンウェイ・パーク近くの美容室、今度こそは遊びに行かないと。
ローガン空港に向かう前、腕時計の時間を気にしながらも、どうしてもボストンで買っておきたい物があったので、ダウンタウンに立ち寄る事にした。2日前から気になっていたボストン・グッズ(?)、それはですねぇ、ハーバード大学のロゴが入ったトレーナーでもなければデービッド・オルティス(レッドソックスのスラッガー)のワールドシリーズ優勝記念バブルヘッド人形でもなく、ダンキン・ドーナツのコーヒーだったのです…。アイリッシュ・パブとダンキン・ドーナツが1ブロックごとに必ずあるボストンとは違い、ワシントン周辺では郊外に僅か数件しかない寂しい状態で、我が家から最も近い店ですら車で20分はかかる始末なのだ。その代わりに多いのがスターバックスのようなヤッピー・テースト満載のアメリカ風イタリアン・コーヒーを売る店で、どうにもシックリこなかった。ワシントン来てからコーヒー専門店で豆を買い、自宅に常時5種類ほどのコーヒーを揃えるようになったけど、それもこれもダンキン・ドーナツが近くに無かったためで…。
1950年にボストン近郊のクインシーという町で生まれたダンキン・ドーナツは、今では世界中に6000以上のフランチャイズを構えるまでに成長し、ドイツやフィリピンといった国にもフランチャイズはある。ドーナツをあまり口にする事の無い僕だが、僕にとってのダンキン・ドーナツは学生時代そのものを意味し、ボストン市内にある店でクラスメートと深夜まで企画会議を続けた経験が何度もある。地元警察官のオアシス的存在でもあるダンキン・ドーナツ(ボストンやニューヨークが舞台の刑事ドラマを見る機会があれば、チェックしてみてください。店内でドーナツを美味そうに頬張る勤務中の警察官が必ず出てくるので…)、学生や会社帰りのボストニアンも気軽に立ち寄る場所で、ある意味で地域の集会所のような役割を果たしている。そんな学生時代の思い出が懐かしくなり、強いて言うなら独特のコーヒー臭から元気をもらうために、(インターネットで買えるにもかかわらず)大急ぎでコーヒー豆を買いに行ったわけです。ワシントンに戻って早速作ったコーヒー、本当においしかったなぁ。
ブッシュ政権のイラク政策をめぐって意見の分裂も見られた民主党だが、ハリケーン「カトリーナ」への対応に対しては一致団結し、激しい政権批判を展開している。2008年の大統領選挙で出馬が有力視されているヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州)は、連邦緊急事態管理局(FEMA)のマイケル・ブラウン長官のリーダーシップに批判の集中砲火を浴びせ、ジョン・エドワース元上院議員(ノースカロライナ州)は、昨年の大統領選挙で彼が主張した「2つのアメリカへの分裂化」がハリケーン対策の遅れによって加速したと語っている。7日にCBSの報道番組に出演したクリントン議員は、災害対策の遅れを調査する独立機関を設立したい意向をあらわし、そのあとでFEMAのブラウン長官についてもコメントを発している。「私ならこんな人物を(FEMA長官に)指名はしなかったですね。誰だって指名しないでしょう。普通は経験豊富な人物を指名するはずです」、クリントン議員はそう語った。
民主党議員によるブッシュ政権たたきは続き、ハリー・レイド上院議員(ネバダ州)は大々的な調査を実行し、大統領が休暇先で災害対策にどれほどの時間を費やしたのか追求すべきだと語った。ナンシー・ペロシ下院議員(カリフォルニア州)はブラウン長官の解任を再度要求し、「先週、アメリカでは2つの災害が発生しました。自然災害と人災の2つで、2つ目の災害はFEMAの度重なるミスから発生したものです」とコメントしている。ペロシ議員は6日、ホワイトハウスでブッシュ大統領に直接ブラウン長官の解任を要求したが、大統領から出た言葉は「なぜ僕がそんな事をしなければならないの?」というものだった(ペロシ議員談)。今回のハリケーン災害とは異なり、イラク戦争を巡っては民主党内でも意見が分裂し、クリントンやエドワーズ、ジョン・ケリー(マサチューセッツ州)といった上院議員達は、2002年のイラク戦争決議案を支持していた。
エスカレートする民主党の政権非難に対し、ケン・メールマン共和党全国委員長は「アメリカ国民が協力して困難に立ち向かうとする中、民主党議員による批判ゲームのせいで全てがバラバラになる」と声明で語り、ホワイトハウスのマクラレン報道官もレイド議員の発言を「大統領への個人攻撃」と非難している。対応の遅れを指摘されるブッシュ政権もイメージ回復に必死で、8日にはチェイニー大統領が被災地域の視察を行うほか、ブッシュ大統領も議会に対して538億ドルの災害復興予算追加承認を要請している(105億ドル分はすでに承認されている)。しかし、共和党関係者のコメントの中に被災者の神経を逆なでするものが幾つもあり、それが新たな政治ゲームの材料となっている模様だ。デニス・ハスタート下院議長は「ニューオーリンズの復興に、どれだけの価値があるのか疑問だ」と発言し、バーバラ・ブッシュ(ブッシュ大統領の母親)は「ああいう恵まれない人たちはヒューストンのアストロ・ドームで生活する方がよっぽどマシだわ」と語っている。
洪水が発生してから8日目を迎えたニューオーリンズ市内には、現在も非難を頑なに拒み続ける市民が1万人程度いる模様で、7日夜にネーギン市長は警察と軍関係者に対し、市内に残る全ての住民を立ち退かせる命令を出した。立ち退きの際に抵抗する住民には、「力ずくで」避難させることも容認されたものの、「力ずくでの強制退去」には、現場からも戸惑いの声が出始めている。1955年から市内の家に住み続ける86歳のアンソニー・シャーボネットさんは、兵士に連れ出されヘリコプターに乗せられる際、近くにいたAP通信の記者に向かって「ここを離れたくはないんだ」と悲痛な叫び声を上げている。ネーギン市長は市内で発生する火災や水質汚染、ガス漏れが非常に危険なレベルに達していると強調し、住民達に対して一刻も早く避難するように求めているが、住みなれた町を離れたくないとする市民の一部が現在も自宅に残ったままとなっている。
疾病対策予防センター(CDC)のジュリー・ゲーバーディング博士がAP通信に語ったところでは、洪水によって市内に大量の下水が流れ出し、市内のほぼ全域に広がった洪水に含まれるバクテリアの量は安全基準の10倍以上に達している。博士は市内に残る住民達が水に触れないようにして、一刻も早く町の外へ脱出すべきだと語った。7日午後までに、武力を用いて強制的に住民が退去させられたケースは報告されておらず、現場の関係者らも困惑した様子を隠せない。米軍は強制撤去に武力を用いない姿勢を打ち出しており、ルイジアナ州軍でも「力ずくの」強制撤去は行わない構えだ。また、警察側も強制的な立ち退き作業の準備ができていないと語り、それぞれの組織が「力ずくでの立ち退き」に抵抗感を見せる結果となった。
警察・米軍・州兵の3組織を合計すると、現在ニューオーリンズ市内には約7000人の治安関係者が展開しており、一部では「今のアメリカで最も安全な都市はニューオーリンズ」といったジョークまで囁かれるほどだ。しかし、市内では現在も銃撃が散発的に発生しており、7日にも市内にある電話関連施設の修復にやってきた技術者達が狙撃される事件が発生した。7台の装甲車に分乗した100人以上の警察官らによって、アパートに隠れていた犯人は逮捕されたものの、依然として安全が確保された状態ではない事が明らかになっている。減少傾向にある犯罪発生率とは対照的に、水質汚染が原因による病原菌の大量発生も懸念されており、南部湾岸地域特有の蒸し暑さによって大腸菌バクテリアなどが増殖しやすい環境が生まれつつある。市側は今後数日間で自発的に避難する住民を町から出し、本格的な強制立ち退き作業を実施する構えだ。
最高裁判事が2人もいない状態で、本当はこのニュースも取り上げたかったんだけど、「カトリーナ」関連のニュースが気になってしまい、今日も災害関連の話に終始してしまいました。被災者達が全米各地に移動し始め、ニューオーリンズの排水作業も開始されたけれど、被災者の「これから」を考えると、どうしても悲観的になってしまう。40万~100万人が失業する可能性が高く、洪水被害による保険金もあまり出ないと報じられているけど、実はもう1つ問題がある。今年4月にブッシュ大統領が署名した破産乱用防止・消費者保護法では、自己破産申請希望者は自分の住む州の平均年収以下の稼ぎしかない場合のみ申請を認められることになり、法律は10月から施行される。市民団体からは改正された破産法の被災者への適用を延期すべきとの声があがっているけれど、ホワイトハウスには届いているのかな。
*写真はニューオーリンズ市内のウエスト・バンク地区で狙撃者を探す警察 (ロイター通信より)
ローガン空港に向かう前、腕時計の時間を気にしながらも、どうしてもボストンで買っておきたい物があったので、ダウンタウンに立ち寄る事にした。2日前から気になっていたボストン・グッズ(?)、それはですねぇ、ハーバード大学のロゴが入ったトレーナーでもなければデービッド・オルティス(レッドソックスのスラッガー)のワールドシリーズ優勝記念バブルヘッド人形でもなく、ダンキン・ドーナツのコーヒーだったのです…。アイリッシュ・パブとダンキン・ドーナツが1ブロックごとに必ずあるボストンとは違い、ワシントン周辺では郊外に僅か数件しかない寂しい状態で、我が家から最も近い店ですら車で20分はかかる始末なのだ。その代わりに多いのがスターバックスのようなヤッピー・テースト満載のアメリカ風イタリアン・コーヒーを売る店で、どうにもシックリこなかった。ワシントン来てからコーヒー専門店で豆を買い、自宅に常時5種類ほどのコーヒーを揃えるようになったけど、それもこれもダンキン・ドーナツが近くに無かったためで…。
1950年にボストン近郊のクインシーという町で生まれたダンキン・ドーナツは、今では世界中に6000以上のフランチャイズを構えるまでに成長し、ドイツやフィリピンといった国にもフランチャイズはある。ドーナツをあまり口にする事の無い僕だが、僕にとってのダンキン・ドーナツは学生時代そのものを意味し、ボストン市内にある店でクラスメートと深夜まで企画会議を続けた経験が何度もある。地元警察官のオアシス的存在でもあるダンキン・ドーナツ(ボストンやニューヨークが舞台の刑事ドラマを見る機会があれば、チェックしてみてください。店内でドーナツを美味そうに頬張る勤務中の警察官が必ず出てくるので…)、学生や会社帰りのボストニアンも気軽に立ち寄る場所で、ある意味で地域の集会所のような役割を果たしている。そんな学生時代の思い出が懐かしくなり、強いて言うなら独特のコーヒー臭から元気をもらうために、(インターネットで買えるにもかかわらず)大急ぎでコーヒー豆を買いに行ったわけです。ワシントンに戻って早速作ったコーヒー、本当においしかったなぁ。
ブッシュ政権のイラク政策をめぐって意見の分裂も見られた民主党だが、ハリケーン「カトリーナ」への対応に対しては一致団結し、激しい政権批判を展開している。2008年の大統領選挙で出馬が有力視されているヒラリー・クリントン上院議員(ニューヨーク州)は、連邦緊急事態管理局(FEMA)のマイケル・ブラウン長官のリーダーシップに批判の集中砲火を浴びせ、ジョン・エドワース元上院議員(ノースカロライナ州)は、昨年の大統領選挙で彼が主張した「2つのアメリカへの分裂化」がハリケーン対策の遅れによって加速したと語っている。7日にCBSの報道番組に出演したクリントン議員は、災害対策の遅れを調査する独立機関を設立したい意向をあらわし、そのあとでFEMAのブラウン長官についてもコメントを発している。「私ならこんな人物を(FEMA長官に)指名はしなかったですね。誰だって指名しないでしょう。普通は経験豊富な人物を指名するはずです」、クリントン議員はそう語った。
民主党議員によるブッシュ政権たたきは続き、ハリー・レイド上院議員(ネバダ州)は大々的な調査を実行し、大統領が休暇先で災害対策にどれほどの時間を費やしたのか追求すべきだと語った。ナンシー・ペロシ下院議員(カリフォルニア州)はブラウン長官の解任を再度要求し、「先週、アメリカでは2つの災害が発生しました。自然災害と人災の2つで、2つ目の災害はFEMAの度重なるミスから発生したものです」とコメントしている。ペロシ議員は6日、ホワイトハウスでブッシュ大統領に直接ブラウン長官の解任を要求したが、大統領から出た言葉は「なぜ僕がそんな事をしなければならないの?」というものだった(ペロシ議員談)。今回のハリケーン災害とは異なり、イラク戦争を巡っては民主党内でも意見が分裂し、クリントンやエドワーズ、ジョン・ケリー(マサチューセッツ州)といった上院議員達は、2002年のイラク戦争決議案を支持していた。
エスカレートする民主党の政権非難に対し、ケン・メールマン共和党全国委員長は「アメリカ国民が協力して困難に立ち向かうとする中、民主党議員による批判ゲームのせいで全てがバラバラになる」と声明で語り、ホワイトハウスのマクラレン報道官もレイド議員の発言を「大統領への個人攻撃」と非難している。対応の遅れを指摘されるブッシュ政権もイメージ回復に必死で、8日にはチェイニー大統領が被災地域の視察を行うほか、ブッシュ大統領も議会に対して538億ドルの災害復興予算追加承認を要請している(105億ドル分はすでに承認されている)。しかし、共和党関係者のコメントの中に被災者の神経を逆なでするものが幾つもあり、それが新たな政治ゲームの材料となっている模様だ。デニス・ハスタート下院議長は「ニューオーリンズの復興に、どれだけの価値があるのか疑問だ」と発言し、バーバラ・ブッシュ(ブッシュ大統領の母親)は「ああいう恵まれない人たちはヒューストンのアストロ・ドームで生活する方がよっぽどマシだわ」と語っている。
洪水が発生してから8日目を迎えたニューオーリンズ市内には、現在も非難を頑なに拒み続ける市民が1万人程度いる模様で、7日夜にネーギン市長は警察と軍関係者に対し、市内に残る全ての住民を立ち退かせる命令を出した。立ち退きの際に抵抗する住民には、「力ずくで」避難させることも容認されたものの、「力ずくでの強制退去」には、現場からも戸惑いの声が出始めている。1955年から市内の家に住み続ける86歳のアンソニー・シャーボネットさんは、兵士に連れ出されヘリコプターに乗せられる際、近くにいたAP通信の記者に向かって「ここを離れたくはないんだ」と悲痛な叫び声を上げている。ネーギン市長は市内で発生する火災や水質汚染、ガス漏れが非常に危険なレベルに達していると強調し、住民達に対して一刻も早く避難するように求めているが、住みなれた町を離れたくないとする市民の一部が現在も自宅に残ったままとなっている。
疾病対策予防センター(CDC)のジュリー・ゲーバーディング博士がAP通信に語ったところでは、洪水によって市内に大量の下水が流れ出し、市内のほぼ全域に広がった洪水に含まれるバクテリアの量は安全基準の10倍以上に達している。博士は市内に残る住民達が水に触れないようにして、一刻も早く町の外へ脱出すべきだと語った。7日午後までに、武力を用いて強制的に住民が退去させられたケースは報告されておらず、現場の関係者らも困惑した様子を隠せない。米軍は強制撤去に武力を用いない姿勢を打ち出しており、ルイジアナ州軍でも「力ずくの」強制撤去は行わない構えだ。また、警察側も強制的な立ち退き作業の準備ができていないと語り、それぞれの組織が「力ずくでの立ち退き」に抵抗感を見せる結果となった。
警察・米軍・州兵の3組織を合計すると、現在ニューオーリンズ市内には約7000人の治安関係者が展開しており、一部では「今のアメリカで最も安全な都市はニューオーリンズ」といったジョークまで囁かれるほどだ。しかし、市内では現在も銃撃が散発的に発生しており、7日にも市内にある電話関連施設の修復にやってきた技術者達が狙撃される事件が発生した。7台の装甲車に分乗した100人以上の警察官らによって、アパートに隠れていた犯人は逮捕されたものの、依然として安全が確保された状態ではない事が明らかになっている。減少傾向にある犯罪発生率とは対照的に、水質汚染が原因による病原菌の大量発生も懸念されており、南部湾岸地域特有の蒸し暑さによって大腸菌バクテリアなどが増殖しやすい環境が生まれつつある。市側は今後数日間で自発的に避難する住民を町から出し、本格的な強制立ち退き作業を実施する構えだ。
最高裁判事が2人もいない状態で、本当はこのニュースも取り上げたかったんだけど、「カトリーナ」関連のニュースが気になってしまい、今日も災害関連の話に終始してしまいました。被災者達が全米各地に移動し始め、ニューオーリンズの排水作業も開始されたけれど、被災者の「これから」を考えると、どうしても悲観的になってしまう。40万~100万人が失業する可能性が高く、洪水被害による保険金もあまり出ないと報じられているけど、実はもう1つ問題がある。今年4月にブッシュ大統領が署名した破産乱用防止・消費者保護法では、自己破産申請希望者は自分の住む州の平均年収以下の稼ぎしかない場合のみ申請を認められることになり、法律は10月から施行される。市民団体からは改正された破産法の被災者への適用を延期すべきとの声があがっているけれど、ホワイトハウスには届いているのかな。
*写真はニューオーリンズ市内のウエスト・バンク地区で狙撃者を探す警察 (ロイター通信より)