IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

テキサス・ルイジアナ・ワシントン-それぞれの週末

2005-09-26 08:04:57 | イラク関連
レバノンから嫌なニュースが入ってきた。隣国シリアによる政治的な影響力を公然と批判し続けてきた女性キャスターのマイ・シディアクさんが、車に仕掛けられた爆弾の犠牲となり、病院で手足を切断する大手術を受けた模様だ。レバノンの民放テレビ局LBCで政治番組の司会者として知られていたシディアクさんは、最近ベイルート周辺で多発する反シリア政治家やジャーナリストを狙ったテロの新たな犠牲者となってしまった。フランスのパリに本部を置く「国境なき記者団(RSF)」の調査によると、2005年1月1日から現在までの間に、世界中で少なくとも50人のジャーナリストが殺害され(イラクでは、そのうちの21人が殺害されている)、112人が投獄されている。僕の知り合いにもベネズエラやウクライナといった国で、同僚を「政治的な理由」で殺害された記者が何人かいるけど、ジャーナリストに対する暴力は未だ消える気配は無い。

ハリケーン「リータ」は24日夜に熱帯性低気圧へと変わり、前もって避難活動が大々的に行われていた事もあって、「カトリーナ」が南部湾岸地域を通過した時のようなパニックは発生しなかったようだ。しかし、国立ハリケーン・センターのマックス・メイフィールド所長はCBSニュースのインタビューの中で、「今年のハリケーン・シーズンはまだピーク時にある模様で、1ヶ月以内に新しいハリケーンが発生する事も十分に考えられます」と語っている。今日はまずハリケーン「リータ」が通過したあとの南部湾岸地域の様子を紹介し、それから昨日ワシントンで行われた大規模な反戦デモの話に行きたいと思います。ハリケーンによる災害や、見通しが全く分からないイラクの現状、そして突如表れたシンディ・シーハンという女性登場によって、イラク戦争開戦後に下火になりつつあった国内の反戦運動が再び盛り上がり始めている。では、ハリケーンの話から。

ハリケーン「リータ」が南部湾岸地域を通過した翌日の25日、救助チームはルイジアナ州南西部の広範囲に展開し、周辺住民の救助作業を開始した。周辺では「リータ」が上陸する前から住民に対して強制避難命令が下されていたが、避難しなかった住民も相当数いる模様で、大雨の影響で再び発生した洪水による被害が懸念されている。洪水が発生したバーミリオン郡では、大雨と暴風の影響で救出作業に向かったボートが転覆する事故まで発生しており、25日まで本格的な作業が開始できなかった。現地で救出活動の指揮を執る湾岸警備隊のサッド・アレン参謀長はCNNに対し、25日午後までにルイジアナ州内で「リータ」による死者は報告されていないと語っている。しかし、ミシシッピー州ベルゾーニではハリケーンの影響で発生したトルネードによって1人が死亡している。

テキサスとの州境に近いルイジアナ州レイク・チャールズではハリケーンによって多くの建物が破壊され、町の大部分が洪水に襲われた。「湖の水位がここまで上昇するのを見たのは、生まれて初めてのことです」、7万5000人が住むレイク・チャールズのランディ・ローチ市長はそう語った。ニューオーリンズ市内では「カトリーナ」によって決壊が発生した防波堤の修復作業が急ピッチで進められていたが、「リータ」による大雨の影響によって再び市内の一部地域で洪水が発生しており、陸軍工兵部隊が防波堤の修復作業に追われている。テキサス州では数日前にヒューストンの高速道路上で避難中のバスから出火して24人が死亡する事故が発生しているが、それ以外の死者は現在までに確認されていない。テキサス州のリック・ペリー知事はハリケーンによる州全体の被害総額が80億ドル以上になると見積もっており、25日にはヘリコプターで被災地域の視察を行っている。

「リータ」の上陸前にテキサス州湾岸地域から避難した住民の一部が25日に帰還を開始したが、地元当局は「帰還は時期尚早」として、もうしばらく避難場所に滞在するよう訴えている。ヒューストン周辺の高速道路数ヶ所ではすでに交通渋滞が発生している模様だが、ハリケーン前に行われた住民の避難によって発生した大渋滞には至っていないとの事だ。23日にコロラド州に移動したブッシュ大統領は、コロラド・スプリングスにある北方軍司令部内でハリケーン関連のブリーフィングを受け、翌日にテキサス州に移動している。25日朝には州内のランドルフ空軍基地で再び「リータ」に関するブリーフィングを受け、各被災地での救助活動が効率的に行われているかどうか、何度も関係者に質問していたのだという。

首都ワシントンで24日に開かれた反戦集会は、イラク戦争後に行われたデモとしては最大規模の物となり、数十万人が参加した模様だ。デモ開催前、ワシントン市警察は参加者が10万人程度に達するだろうと予測していたが、主催者側は約30万人の参加者が集まったと主張している。ワシントン市警のチャールズ・ラムジー署長はワシントン・ポスト紙の取材に対し、15万人以上の参加者が集まっていただろうと語っている。ハリケーン被災地の視察を行うため、ブッシュ大統領はワシントンを離れていたが、10年ぶりにホワイトハウス前での反戦集会が許可された事もって、24日のワシントンは反戦ムード一色に染まった。すでに60代の後半に達したシニア層や、大学生、ベビーカーに子供を乗せて参加した母親達、そして迷彩服に身を包んだ退役軍人ら一同に集まり、世代を超えてイラクからの撤退を声高に求めた。

デモ参加者の多くはホワイトハウス南側にある広場に集結し、そこからホワイトハウス周辺を更新し、夕方からはワシントン記念碑の周辺でコンサートを行っている。この数年で最も大きな規模となったワシントンでのデモだが、過去に発生したような暴力事件や破壊行為などは見られず、警備を担当した警察官とデモ隊との間にも緊張はほとんど存在しなかったようだ。建設現場のフェンスが倒され、路上にあった新聞の自動販売機が破壊されたものの、市警には怪我人の報告が一度も入らなかった。しかし、窃盗未遂などで3人が逮捕されている。24日のイラク戦争反対集会はワシントンのほかにロサンゼルスやサンフランシスコ、さらにローマやロンドンといったアメリカ内外の大都市で実施されており、ワシントンでの集会は「ANSWER」などの反戦団体が主催して行われている。「イラク戦争を中止して、早期撤退を開始せよ」と各地のデモ参加者が叫び続けた9月24日現在、イラク戦争での米兵戦死者は1911人、負傷者が1万4641人に達しており、イラク人死亡者が3万人を超えているとの報告もある。

ホワイトハウス近くで行われた集会には、女優のジェシカ・ラングや黒人指導者ジェシージャクソン師、そして昨年イラクで24歳の息子を亡くしたシンディ・シーハンさんらも参加し、そこで行われた演説の中で改めて米軍のイラク撤退を強く要求している。カリフォルニア出身のシーハンさんは8月、ブッシュ大統領が夏休みを過ごすテキサス州クロフォードを訪れ、26日間におよぶ反戦集会を現地で続けながらブッシュ大統領との面会を求め続けていた。その姿はメディアによって連日のように報じられ、反戦運動の象徴的存在となったシーハンさんは、全米を回りながら各地での反戦集会に参加してきた。「みんなで新しい歴史を作っていきましょう」、壇上でそう語ったシーハンさんに、会場に集まった聴衆からは大きな拍手が沸き起こった。ロード・アイランド出身の陸軍兵士フランク・クッキナムさんは、特殊部隊のバッジをつけた軍服を着てデモに参加した。湾岸戦争にも参加し、最近までイラクに派兵されたいたクッキナムさんはワシントン・ポスト紙の取材に対し、「こんなデモに参加するとは夢にも思っていなかったけれど、この戦争のナンセンスさをブッシュ大統領に理解してほしいから」とコメントしている。

ありがとう、レッドソックス!金曜日にボルチモアでスタートしたオリオールズとの3連戦、なんとか3連勝して、首位に再び浮上(ヤンキースと同率で)している。主砲のデービッド・「ビッグ・パピー」・オルティスがスランプ気味で、最近4試合の成績が15打数1安打と散々な結果に終わっているけど、地元ボストンで行われるリーグ戦最後の6試合で復活してくれると信じている。3番のオルティスと4番のマニー・ラミレス(今日も男前なホームランを一発。オリオールズの皆様、毎度ありがとうございます)の2人で稼ぎ出した打点の合計、今日の時点で275となっており、300を超える可能性は非常に高い。先発投手全員の防御率が4点以上を記録する中で、中継ぎ陣の頑張りと打線の破壊力で踏ん張ってきた今季のレッドソックス、プレーオフまでに投手陣の改善は図れるのだろうか?唯一の朗報は、カート・シリングの調子が少しずつ上向いてきた事。今年もプレーオフの主役となるのは、意外にシリングなのかもしれない。

写真:ルイジアナ州レイク・チャールズに住むドルー・マーティン君は、25日朝から妹と共に自宅周辺の瓦礫撤去を開始した。 (AFP通信より)