カトリーナ、そして数日前のオフィーリアに引き続いて、リータという名前の熱帯性低気圧がフロリダ半島に近付いている。キーウエストではすでに住民の避難が始まったが、この熱帯性低気圧がハリケーンに変化して、復興作業が始まった南部湾岸地帯の被災地を通過する可能性も出てきた。そんな中、ブッシュ大統領は復興事業費捻出のために各省庁での予算カットを示唆していて、復興費の捻出が財政赤字に与える影響は一時的なものと強調したけれど、これには共和党議員からも「現実的になりましょうよ」とクレームがつく始末。また、ABCニュースのインタビューに答えたクリントン元大統領までが、これまでの沈黙を破って、ブッシュ大統領の政策に苦言を呈している。今日は「リータ」という新しい脅威に直面しつつあるニューオーリンズの話と、全米の高校で広がりを見せるキャンパス・ビジネスの話題を。
ニューオーリンズのネーギン市長は19日午後、同日朝から許可していた住民の帰還を再び中止すると発表し、その理由としてフロリダ州に接近している熱帯性低気圧「リータ」がカテゴリー3程度のハリケーンに変化し(カトリーナはカテゴリー4だった)、今週末にもルイジアナ州を通過する可能性があるためと語った。「リータ」の進路に関しては複数の予測が立てられており、ルイジアナではなくテキサス州ガルベストン周辺を通過するのではとの見方も存在する。1900年にガルベストンを通過したハリケーンでは、周辺住民の6000~1万2000人が死亡したとされている。国立ハリケーン・センターは今週末の「リータ」の進路に関し、テキサスからルイジアナまでの広範囲が通過ルートになる可能性があるとして、現時点で細かい絞込み作業は困難であることを示唆している。
被災地で復興作業に従事する陸軍工兵隊の関係者はCNNのインタビューに対し、ニューオーリンズ周辺に作られた全長350マイルの防波堤が「ちょっとした水位の上昇」にしか対応できないと語っている。ネーギン市長は市内に設置されたポンプでは次のハリケーンから町を守るのは困難とも判断し、19日午後になって帰還許可の中止を決定している。ネーギン市長は市内を流れるミシシッピー川東岸部の住民に対し強制避難を命じ、洪水被害がほとんど無かった西岸部の住民にも避難を勧告している。「カトリーナによる凄まじい被害を目撃した市民の皆さんが、カトリーナ後にやってくるかもしれないカテゴリー3のハリケーンの危険度を理解してくれていると願ってます」、19日午後に行われた記者会見で市長はそう語った。すでに新たな避難のために150台のバスが用意されており、ルイジアナ州政府はハリケーンの上陸する72時間前にニューオーリンズから住民を全て避難させたい考えだ。
ネーギン市長の強い意向もあって、19日朝から始まったニューオーリンズ市民の一部地域への帰還だが、ブッシュ大統領や連邦・州政府高官は早すぎる帰還許可に消極的な姿勢を示していた。「ニューオーリンズに市民を戻したいという市長の考えは尊重しますが、現実的として考えなければならない問題がいくつもあります」、ブッシュ大統領はそう語っている。辞任したFEMAのマイケル・ブラウン長官に代わって被災地で復興作業の指揮を執る湾岸警備隊のサッド・アレン参謀長にいたっては、ネーギン市長による住民帰還計画を「問題だらけ」と批判し、飲料水や医療サービスの復旧が完了していない状態での帰還許可に大きな懸念を示している。アレン発言を受けたネーギン市長は、記者会見で激しく反論し、「アレン参謀長の仕事ぶりには尊敬の念を抱きますが、ニューオーリンズ市民の話をするのは御門違いでしょう。ニューオーリンズに市長は1人しかおらず、それは私なんですから」とコメントしている。
オハイオ州シンシナティ郊外にあるメーソン高校に通う16歳のアレックス・ザモジスキ君は、ランチを買うお金を家に置いてきてしまったが、何の問題もなく昼食を購入している。校内に設けられた銀行に預金口座を作っていたため、ザモジスキ君は必要額だけを引き出し、そのままランチを買いに行ったのだ。「小額のランチ代なんかが必要な時に、こういったサービスは本当に便利だと思うよ。それに自分のお金を直接扱うのだから、以前よりも自立心が出てきた気もするし」、ザモジスキ君はAP通信の取材に対してそう語っている。全米の高校では生徒が直接運営に関わるビジネスを奨励している所が少なくなく、以前はカフェテリアの一角で鉛筆やルーズリーフ用紙を販売するだけだった学生参加型ビジネスだが、現在は大きく様変わりしている。メーソン高校のように校内で銀行を運営する学校もあれば、旅行代理店やデザイナー・ジーンズを扱う衣料品店まで誕生している。
こういった学生参加型ビジネスが全米の高校内で増え始めた理由だが、学校側はビジネスの実務的な部分を生徒にキャンパス内で経験してもらう事で、教科書だけでは学べない様々な事柄に触れてほしいと考えているようだ。また、各授業の合間やランチタイムに参加できることもあり、生徒が自主的に参加しやすい環境なのも魅力となっている。コンピューターが大きな役割を果たしているのも事実で、キャンパス・ビジネスに参加した生徒はレジやバーコードを使って商品の在庫状況や発注の仕方を学び、航空券の手配も学校のコンピューターで覚える事ができる。この教育スタイルは生徒や親、そして学校関係者からの支持も強く、より多くの学校で同様のキャンパス・ビジネスが導入されるかもしれない。「(キャンパス銀行は)経済やマーケティングを学ぶ学生にとって実務経験をするには最高の場所ですし、直接業務に関わっていない生徒にとっても、お金の管理を学べる場所になるでしょうね」、メーソン高校の経済学教師で学生銀行顧問でもあるシンディ・ドネリーさんはそう語った。
このようなキャンパス・ビジネスの多くはDECA社との共同事業として行われており、同社常務取締役のエドワード・デービス氏がAP通信に語ったところでは、少なくとも約3000校が生徒が運営するキャンパス・ビジネスをDECA社の協力で展開している模様だ。利益追求ではなく、生徒に実務経験をつませる事がキャンパス・ビジネスの大きな目的となっているが、売上金は基本的に各学校でプールされ、場所によっては学校行事や奨学金に用いるケースもある。事業開始に必要な資金は数千から数万ドルと幅が広く、事業内容によって大きく異なるが、学校組織に加えて民間企業などからの寄付金が使われる場合もあるそうだ。メーソン高校での銀行設立には、近くの町にある銀行から2000ドルと机、受付窓などが提供されている。
何日か前にボストン・レッドソックスをテーマにした「フィーバー・ピッチ」という映画をDVDで見たんだけど、久し振りに「見なけりゃヨカッタ」と3ドル50セントのレンタル代を払った自分を恨む事に。僕のような犠牲者をこれ以上出さないために言っておくと、オリジナル版(1997年に作られたイギリス映画)で見る事のできた「地元チームへの愛情」が全く感じられず、何度も巻き戻しして見たくなる良質のクライマックスをリメイク版で期待しただけ馬鹿を見た格好だ。レッドソックスとオリジナル版の「フィーバ・ピッチ」の両方が好きな映画ファンが僕の他にもいるとしたら(いるんだろう、きっと)、その数だけ溜息と失望感が存在するんだと思う。映画の中で唯一共感を持てたのが、レッドソックス関連グッズで埋め尽くされた主人公の寝室。主人公が神棚のような位置に飾られたトニー・Cの写真にキスをして十字を切るんだけど、似たような光景を現実の世界で何度も見た事があるし、僕もボストン時代はベッドの側にテッド・ウイリアムズのポスターをはって崇拝してから。
明日の朝、取材でワシントン市内のシンクタンク「AEI」を訪ねる予定。アポイントも無事に取れ、さっきまで何を質問しようかなぁと色々考えていたんだけど、意外にも今回が初めてとなるAEIでの取材に少しワクワクしているんです。AEIといえば、いわゆる「ネオコン」と呼ばれる人達の牙城でもあり、リン・チェイニー(あの利権好きなオヤジの奥様)やニュート・ギングリッジ、リチャード・パールなんかが在籍してる場所として知られている。取材云々よりも、ネオコンと呼ばれる学者さんが集まる場所がどんな雰囲気なのか、本当はそっちに興味があったりして、時間があれば廊下で人間観察でもしたいんだけど…。戦場に行った事も無いくせに戦争を煽り続ける「チキンホーク」と呼ばれる種族がどんなものなのか、この目で見たいんだけどなぁ(ちなみに、明日の取材を引き受けてくれた方は戦争やイラク問題とは無縁のテーマを扱っている人です、念のため)。ローリング・ストーンズの新曲「スイート・ネオコン」のサビの部分を口笛で吹きながら建物に入りたいような、小学生並みの悪戯心に興奮しながら、今日は寝ることに。
写真:帰還許可の下りた19日、ニューオーリンズ市内にある民家を撮影したもの。ベニヤ板は「能無しブッシュ。FEMAはどこにいる」とのメッセージが。(ニューオーリンズ・タイムズ・ピカユーン紙より)
ニューオーリンズのネーギン市長は19日午後、同日朝から許可していた住民の帰還を再び中止すると発表し、その理由としてフロリダ州に接近している熱帯性低気圧「リータ」がカテゴリー3程度のハリケーンに変化し(カトリーナはカテゴリー4だった)、今週末にもルイジアナ州を通過する可能性があるためと語った。「リータ」の進路に関しては複数の予測が立てられており、ルイジアナではなくテキサス州ガルベストン周辺を通過するのではとの見方も存在する。1900年にガルベストンを通過したハリケーンでは、周辺住民の6000~1万2000人が死亡したとされている。国立ハリケーン・センターは今週末の「リータ」の進路に関し、テキサスからルイジアナまでの広範囲が通過ルートになる可能性があるとして、現時点で細かい絞込み作業は困難であることを示唆している。
被災地で復興作業に従事する陸軍工兵隊の関係者はCNNのインタビューに対し、ニューオーリンズ周辺に作られた全長350マイルの防波堤が「ちょっとした水位の上昇」にしか対応できないと語っている。ネーギン市長は市内に設置されたポンプでは次のハリケーンから町を守るのは困難とも判断し、19日午後になって帰還許可の中止を決定している。ネーギン市長は市内を流れるミシシッピー川東岸部の住民に対し強制避難を命じ、洪水被害がほとんど無かった西岸部の住民にも避難を勧告している。「カトリーナによる凄まじい被害を目撃した市民の皆さんが、カトリーナ後にやってくるかもしれないカテゴリー3のハリケーンの危険度を理解してくれていると願ってます」、19日午後に行われた記者会見で市長はそう語った。すでに新たな避難のために150台のバスが用意されており、ルイジアナ州政府はハリケーンの上陸する72時間前にニューオーリンズから住民を全て避難させたい考えだ。
ネーギン市長の強い意向もあって、19日朝から始まったニューオーリンズ市民の一部地域への帰還だが、ブッシュ大統領や連邦・州政府高官は早すぎる帰還許可に消極的な姿勢を示していた。「ニューオーリンズに市民を戻したいという市長の考えは尊重しますが、現実的として考えなければならない問題がいくつもあります」、ブッシュ大統領はそう語っている。辞任したFEMAのマイケル・ブラウン長官に代わって被災地で復興作業の指揮を執る湾岸警備隊のサッド・アレン参謀長にいたっては、ネーギン市長による住民帰還計画を「問題だらけ」と批判し、飲料水や医療サービスの復旧が完了していない状態での帰還許可に大きな懸念を示している。アレン発言を受けたネーギン市長は、記者会見で激しく反論し、「アレン参謀長の仕事ぶりには尊敬の念を抱きますが、ニューオーリンズ市民の話をするのは御門違いでしょう。ニューオーリンズに市長は1人しかおらず、それは私なんですから」とコメントしている。
オハイオ州シンシナティ郊外にあるメーソン高校に通う16歳のアレックス・ザモジスキ君は、ランチを買うお金を家に置いてきてしまったが、何の問題もなく昼食を購入している。校内に設けられた銀行に預金口座を作っていたため、ザモジスキ君は必要額だけを引き出し、そのままランチを買いに行ったのだ。「小額のランチ代なんかが必要な時に、こういったサービスは本当に便利だと思うよ。それに自分のお金を直接扱うのだから、以前よりも自立心が出てきた気もするし」、ザモジスキ君はAP通信の取材に対してそう語っている。全米の高校では生徒が直接運営に関わるビジネスを奨励している所が少なくなく、以前はカフェテリアの一角で鉛筆やルーズリーフ用紙を販売するだけだった学生参加型ビジネスだが、現在は大きく様変わりしている。メーソン高校のように校内で銀行を運営する学校もあれば、旅行代理店やデザイナー・ジーンズを扱う衣料品店まで誕生している。
こういった学生参加型ビジネスが全米の高校内で増え始めた理由だが、学校側はビジネスの実務的な部分を生徒にキャンパス内で経験してもらう事で、教科書だけでは学べない様々な事柄に触れてほしいと考えているようだ。また、各授業の合間やランチタイムに参加できることもあり、生徒が自主的に参加しやすい環境なのも魅力となっている。コンピューターが大きな役割を果たしているのも事実で、キャンパス・ビジネスに参加した生徒はレジやバーコードを使って商品の在庫状況や発注の仕方を学び、航空券の手配も学校のコンピューターで覚える事ができる。この教育スタイルは生徒や親、そして学校関係者からの支持も強く、より多くの学校で同様のキャンパス・ビジネスが導入されるかもしれない。「(キャンパス銀行は)経済やマーケティングを学ぶ学生にとって実務経験をするには最高の場所ですし、直接業務に関わっていない生徒にとっても、お金の管理を学べる場所になるでしょうね」、メーソン高校の経済学教師で学生銀行顧問でもあるシンディ・ドネリーさんはそう語った。
このようなキャンパス・ビジネスの多くはDECA社との共同事業として行われており、同社常務取締役のエドワード・デービス氏がAP通信に語ったところでは、少なくとも約3000校が生徒が運営するキャンパス・ビジネスをDECA社の協力で展開している模様だ。利益追求ではなく、生徒に実務経験をつませる事がキャンパス・ビジネスの大きな目的となっているが、売上金は基本的に各学校でプールされ、場所によっては学校行事や奨学金に用いるケースもある。事業開始に必要な資金は数千から数万ドルと幅が広く、事業内容によって大きく異なるが、学校組織に加えて民間企業などからの寄付金が使われる場合もあるそうだ。メーソン高校での銀行設立には、近くの町にある銀行から2000ドルと机、受付窓などが提供されている。
何日か前にボストン・レッドソックスをテーマにした「フィーバー・ピッチ」という映画をDVDで見たんだけど、久し振りに「見なけりゃヨカッタ」と3ドル50セントのレンタル代を払った自分を恨む事に。僕のような犠牲者をこれ以上出さないために言っておくと、オリジナル版(1997年に作られたイギリス映画)で見る事のできた「地元チームへの愛情」が全く感じられず、何度も巻き戻しして見たくなる良質のクライマックスをリメイク版で期待しただけ馬鹿を見た格好だ。レッドソックスとオリジナル版の「フィーバ・ピッチ」の両方が好きな映画ファンが僕の他にもいるとしたら(いるんだろう、きっと)、その数だけ溜息と失望感が存在するんだと思う。映画の中で唯一共感を持てたのが、レッドソックス関連グッズで埋め尽くされた主人公の寝室。主人公が神棚のような位置に飾られたトニー・Cの写真にキスをして十字を切るんだけど、似たような光景を現実の世界で何度も見た事があるし、僕もボストン時代はベッドの側にテッド・ウイリアムズのポスターをはって崇拝してから。
明日の朝、取材でワシントン市内のシンクタンク「AEI」を訪ねる予定。アポイントも無事に取れ、さっきまで何を質問しようかなぁと色々考えていたんだけど、意外にも今回が初めてとなるAEIでの取材に少しワクワクしているんです。AEIといえば、いわゆる「ネオコン」と呼ばれる人達の牙城でもあり、リン・チェイニー(あの利権好きなオヤジの奥様)やニュート・ギングリッジ、リチャード・パールなんかが在籍してる場所として知られている。取材云々よりも、ネオコンと呼ばれる学者さんが集まる場所がどんな雰囲気なのか、本当はそっちに興味があったりして、時間があれば廊下で人間観察でもしたいんだけど…。戦場に行った事も無いくせに戦争を煽り続ける「チキンホーク」と呼ばれる種族がどんなものなのか、この目で見たいんだけどなぁ(ちなみに、明日の取材を引き受けてくれた方は戦争やイラク問題とは無縁のテーマを扱っている人です、念のため)。ローリング・ストーンズの新曲「スイート・ネオコン」のサビの部分を口笛で吹きながら建物に入りたいような、小学生並みの悪戯心に興奮しながら、今日は寝ることに。
写真:帰還許可の下りた19日、ニューオーリンズ市内にある民家を撮影したもの。ベニヤ板は「能無しブッシュ。FEMAはどこにいる」とのメッセージが。(ニューオーリンズ・タイムズ・ピカユーン紙より)