IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ギャングズ・イン・ブルー

2005-09-30 13:34:15 | 政治
ワシントン近郊のアレクサンドリアにある連邦拘置所に収監されていたニューヨーク・タイムズ紙記者のジュディス・ミラーが29日午後に釈放され、取材源の守秘義務を守る形で7月6日から収監されていたミラー記者は、30日にワシントンの連邦大陪審で情報源の正体に関する証言を行う予定だ。CIA工作員の正体を明かす記事を書いた彼女に対し、ブッシュ政権は情報のリークを行った人物の名前を言うよう圧力をかけてきたが、彼女がこれに従う事はなく、その代償として拘置所に収監されていた。ニューヨーク・タイムズ紙は政権側と事実上の「手打ち」を行った彼女の決断を支持すると発表してるけれど、どうも全てが中途半端な形で政治的に解決された気がして、あまり釈然としない気分だ。明日の証言や彼女の会見などを聞かないと何も分からないけれど、「なぜこの時期に?」という疑問が残る。

ハリケーン「カトリーナ」の時とは全く違う対応を取ったブッシュ大統領だが、その涙ぐましい努力が実を結んだのか、支持率が5ポイント上昇したようだ。CNN・USAトゥディ・ギャロップの3社が9月26~28日に共同で行った最新の世論調査によると、約1週間前に40パーセントだった大統領の支持率は45パーセントに上昇し、同時期にフォックス・ニュースが行った世論調査でも45パーセントの支持率を記録した。数日前にニューオーリンズ市警のエディ・コンパス本部長が突然の辞任発表を行ったが、こちらでは警察官による略奪行為を取り締まれなかった事が辞任理由の1つだと指摘する報道が出始めている。真相は依然として不明だが、略奪行為を行った警察官に対する調査はすでに開始されている。今日はそのニュースを紹介して、トム・ディレイ下院議員が起訴されたニュースを2本目で。昨日はブログの更新ができなかったので、今日は気合入れて書くぞ、たぶん。

ニューオーリンズ市警の警察官がハリケーン通過後の市内で略奪行為に参加していたという疑惑が数週間前に浮上していたが、略奪を行ったとされる4人の警察官がすでに停職処分となり、別の1人も配置転換されていた事が29日にウォーレン・ライリー市警本部長代理の話で明らかになった。警察官の略奪行為を調査しているニューオーリンズ市警は、「カトリーナ」の通過後に少なくとも12人の警察官が略奪行為に参加した可能性があるとして取調べを続けている。「警察官として恥ずべき行為に参加したものは、問答無用で相応の処分を下すつもりです」、29日に行われた記者会見でライリー本部長代理はそうコメントした。調査の対象となっている警察官の容疑は様々で、家電製品や宝石を盗み出したとされる警官もいれば、市民の略奪行為を止めなかったとされる警官もいる。

「2000人以上の職員が勤務するニューオーリンズ市警は、その評判を台無しにするような一部の警官による行為を決して見過ごさない事で一致団結しています」、ライリー本部長代理はそう語った。また、災害時に250人程度の警察官が職務放棄したとの報道が存在したが、「報道は正確性を欠いている」と語り、250人の中には正当な理由で現場に出てこれなかった警官もいたと反論している。ライリー本部長によれば、被災現場に姿を現さなかった約250人の警察官に対する個別調査は現在も実施されており、職務放棄をした警官とそうでない者の選別が近いうちに完了する模様だ。「市内で洪水が発生したあと、電話や無線が全く使えない中、自宅の屋上で5日間も助けを待った警官がいたのも事実です。250人全てが脱走警官ではないし、当時は警官が警官に救助されるような状況だったのです」、とライリー本部長代理は言う。

しかし、ニューオーリンズ市民からは警察官による略奪行為の存在が指摘されており、市内でホテルを経営するオスマン・カーンさんはCNNの取材に対し、8人の警察官がホテルの10階部分に居座って、そこを拠点に周辺の商店へ略奪に出かけていたと語った。カーンさんの話によると、市内で洪水が発生した8月29日夜に70人の警察官がホテルにやって来て一晩を過ごしたが、その殆どは翌日にホテルを離れて治安維持の任務に就いたのだという。8人の警官はホテルに残り、昼間は酒を浴びるように飲み、夜になって周辺の商店で略奪行為を行っていた模様だ。「8人は毎晩10時頃にホテルを出て、いつも翌朝4時半頃に戻ってきました。アディダスのシューズやローレックスの時計など、色々な物を持ち帰ってましたよ」、とカーンさん。警察官による略奪を指摘するのはカーンさんだけではなく、洪水発生後に市内に残った市民からも目撃情報が警察に寄せられている。洪水の被害が少なかった一部の住宅街に警察車両で乗り付け、空き家となった邸宅で略奪行為を行っていた警察官の目撃情報もあり、市警はその対応に追われている。

テキサス州トラビス郡の大陪審は28日、トム・ディレイ共和党院内総務を政治資金を違法に流用した罪で起訴した。起訴状によると、ディレイ議員は2002年に行われたテキサス州議会選挙において、2人の支持者と共謀して同議員に送られた企業献金19万ドルのマネー・ロンダリングを行い、地元の共和党候補者に還元したとされている。ワシントン政界で最も影響力と資金収集力が高い共和党指導者の1人として知られてきたディレイ議員だが、起訴された議員は要職から離れなければならないと定めた下院のルールに基づき、28日午後にデニス・ハスタート共和党下院議長に対して院内総務の辞任を申し入れた。政治資金法違反の問題が決着するまで、ナンバー3のロイ・ブラント院内幹事が院内総務の職を暫定的に務めることになり、共和党下院議員からの承認も終了している。共和党ナンバー2のディレイ議員は宗教右派の代表格としても知られ、同じくテキサス州を選挙地盤とするブッシュ大統領とは古くからの友人だ。

選挙資金違反を巡ってディレイ議員と地元検事との間で8月に会談が数回行われたが、検察側がディレイ議員に対する強硬姿勢を崩さなかった事から、ワシントンの政界では起訴は時間の問題と噂されてきた。いくつもの問題点が指摘されるブッシュ政権と共和党に新たな問題が加わった事で、来年行われる中間選挙で共和党が予想以上の苦戦を強いられるとの見方が強まっているのも事実だ。捜査の担当検事が民主党系だったことから、ディレイ議員は政治的な策略だったと主張しており、ホワイトハウスのマクレラン報道官も記者会見の中でディレイ議員を擁護してる。しかし、自らを「自由企業と規制撤廃のチャンピオン」と評するディレイ議員には以前から金銭スキャンダルにからむ疑惑が指摘されており、私的な海外旅行費用をロビー団体に負担させていた疑惑が存在したり、2003年にはテキサス州の選挙区区割り変更で地元関係者に不当な圧力かけていたとされている。

28日午後に行われた記者会見で、ディレイ議員は捜査を担当するロニー・アール検事が2002年に行われたテキサス州議会選挙の政治的復讐を行おうとしているのだと批判を展開したが、議員は記者からの質問を受けつけずに会場を去っている。テキサス州法では州議会選挙における候補者への企業献金は禁じられており、共和党が130年ぶりに過半数を占める結果となった2002年の州下院選挙からしばらくして、民主党のアール検事による捜査が開始されている。政治的な色合いも否定できない今回の起訴だが、29日付のワシントン・ポスト紙が報じたところによると、ディレイ議員に対してテキサス州内で集められた企業献金19万ドルがワシントンの共和党全国委員会(RNC)へ一度送られ、2002年10月に19万ドルがRNC名義でテキサス州下院選挙に出馬した7人の候補者に寄付されている。現時点でこれを選挙資金法違反と100パーセント立証するのは難しいが、検察側は徹底的に行く構えを見せており、有罪判決が出た場合、ディレイ議員には最高で2年の禁固刑が科せられ、議員職も失う事になる。

月刊サイゾー用原稿を仕上げて(ついに終わったぜぃ、初めて挑戦するテーマだったので、いつもより仕事した気分…)、さぁブログでもと思ったのが夜中の1時過ぎ、昨日もやっちゃいました。気がつけばソファーで朝まで寝ていたようで、ブログも更新も忘れてたし、何よりも阪神タイガースのリーグ優勝の喜びを大阪の友人と分かち合う事もできなかった。起きたのが午前10時頃で、ウェブの新聞記事を見ると、そこにはすでに甲子園で胴上げされる岡田監督の写真が掲載されていた。何人かの友人からメールをもらい、甲子園球場で昨日の試合を観戦した大学時代の悪友からは球場の様子を写した臨場感溢れる写真を送ってもらった。僕の夢は同じ年にタイガースとレッドソックスの優勝を見ることで、今年はまだ可能性があると信じているんだけど、プレーオフ出場をかけた明日からの対ヤンキース3連戦、一体どうなることやら…。

そうそう、お知らせが1つあります。色々なところで色々なお仕事をさせてもらっているのですが、10月5日から夕刊フジで毎週1回のコラムを連載する事になりました。政治だけではなく、ワシントン以外の町の人間臭い話なんかも紹介できればなと思っております。機会があれば、会社や学校の帰りに駅のキオスクでものぞいて見て下さい。ヨロシク!


写真:4-4で迎えた9回裏、デービッド・オルティスの決勝タイムリーでレッドソックスが勝利(ようやった、ビッグ・パピィ!)。首位との差を1ゲームとしたまま、明日からフェンウェイ・パークでヤンキースとの最後の3連戦が始まる。 (AP通信より)