Across The Universe

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市町村合併の新市名にみる文法の乱れ

2006年03月20日 | 管理人のひとりごと
 きょう3月20日、愛知県西春町と師勝町が合併して「北名古屋市」が誕生しました。市町村合併に伴う新市名は、どうしてこうもセンスのない名称が多いのでしょうか。今回の北名古屋市は「汚い肥やし」と聞こえてしまうし、昨年話題になり結局実現しなかった「南セントレア市」にしても然り。昨年4月には「愛西市」が誕生していますし、七宝町・大治町・美和町が合併して「名西市」となる動きもあるようです。しかし、今回はこうしたセンスのない新市名を斬るつもりはありません。似たような性質の地名として、すでに「名古屋市名東区」と、一宮市との合併で消滅した「尾西市」というのがありますが、「名東」、「尾西」、それから「愛西」と、「北名古屋」、「名西」、「南セントレア」の3つとでは、大きく違う点があります。そこを指摘していきたいと思います。
 この6つの地名、安直な命名方法という点では似ていますが、「北名古屋」、「名西」、「南セントレア」の3つは、文法的に見て根本的に間違っている点があります。通常、「北○△」とか「○△西」などとつける場合には、その地域が、「○△」という地域の範囲内に入っていなければなりません。ところが、新たに「北名古屋市」「名西市」になる地域は、名古屋市に隣接しているだけで、名古屋市の範囲内に入っているわけではありません。もちろん破談になった「南セントレア」も、セントレアの内部で南に位置する場所においてのみ使用できる地名で、セントレアに隣接する場所では、セントレアの範囲外に当たるわけですから使用はできません。
 同じ愛知県内だし隣接しているのでいいじゃないかという人もいるとは思いますが、極論すると、たとえば岐阜県の多治見市辺りが、愛知県に隣接してるからといって「東愛知市」を名乗るようなものだといえば、そのおかしさがわかると思います。
 これに対し、「名東区」はもちろん名古屋市内だし、「尾西」、「愛西」にしてもそれぞれ尾張、愛知県の範囲内に入っています。したがって、地名の命名方法としては安直でも、文法上は間違ってはいないことになります。
 いま愛知県に限らず、全国的に市町村合併がかつてない規模で進められていますが、合併後の新市名をめぐる対立を面白おかしく報道したり、国語学者が懸念を表明することはあっても、新市名の文法上の問題点について指摘されることはほとんどないように思います。しかし、「北名古屋」とか「名西」などのおかしさは、日本語に限らずどの言語の話者から見てもおかしく見えます。この点を指摘することのほうが、「ら抜き言葉」を批判することよりもずっと重要なのではないでしょうか。