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サブカルチャーマシンガン

自分だけの「好き」を貫く為のブログ。

【アルバムレビュー】孤独の音楽/古明地洋哉

2020-04-14 | アルバム感想
                    









1.想いが言葉に変わるとき
2.クロエ
3.素晴らしい嘘
4.dialogue(can you hear me?)
5.太陽のまばたき
6.i miss you(from my bedroom)
7.嘆きの天使
8.waltz(for the star)
9.無知の涙
10.孤独の音楽
11.君を見つけたよ







これは今から約17年前の2003年に出たアルバムです。
まずこのジャケットを見て欲しい
独りの男性が暗闇の中突っ立ってる「だけ」の写真で、
そこに本作のタイトルがシンプルに添えられてる「だけ」、というもの
しかし物凄い深淵に来てしまったかのような感覚にもなる印象的なジャケットだと思う
好きなCDのジャケット、と言われて真っ先に思い浮かぶのがこのジャケットなので、
そういう意味ではもしかして一番好きなジャケットかもしれない。。とか思います
また、表情が良い意味で虚ろというか笑顔とかクールじゃないのも好きです
作ってないというか、そのまんまというか、音楽性もそうなんですが兎に角剥き出しなんですよね。

でもこれ一応(?)メジャーから出てるんですよね
失礼かも分かりませんが正直かなりポピュラリティとかとは一線を置いた作風に思えるので、
そういう意味では結構衝撃的だったりもしたんですが、逆に言えば、
こういう作品を多くの人に届けたかったのかな。。
音楽家としての“覚悟”を感じるような作品になってると思います。


このアルバムに関しては、
かなり部屋で一人で聴いてたんで、
中々軽々しくレビューは書きたくない・・・
そもそも行き着くとこまで行き着いてしまったような内容なので、
それも含めて「最高です!」って書いてもちゃんと届くのかな。という不安もありますが、
しかし自分の音楽人生に於いてはこの盤は避けては通れない所もあります

とは言っても、
音楽性としてはシンプルな弾き語りだったり、
荘厳なアレンジで聴かせたり、
時にはエモーショナルなロックサウンドだったり、
ポップさを追求したアレンジで聴かせたり、、、と別に前衛的な訳じゃない
むしろ結構幅広いジャンルで楽曲を料理されてる印象でかなり聴きやすい・・・
このジャケットから考えると相当聴きやすい心地良い音楽に仕上がってると思います
 また、歌詞の方も別に極端にネガティブなだけではなく、
時にはしっかりと希望を歌ったり、
救われるような歌を歌ったり、
その辺も・・・逆に「リアル」というか、なんでしょう、自身で自身の見られ方を計算してないような、
心の奥から湧き出ている言葉をストレートに歌にしているようなナチュラルさがあります
だからこのレビューも書き出しがあんな感じになってますけど(笑
見た目ほどとっつき辛い訳ではない、と言いたいですね。



子供みたいに夢を見ていたいんだって
いつかは病めると知っても
しがみついてさ
泣きじゃくってさ (嘆きの天使)



しかし、
個人的にこのアルバムを聴いて感じるのは、
(ある程度)何かや誰かに傷付いた人の為に歌ってる気がするというか、
タイトル通り孤独を感じている人の為に作られた感じもしていて、
そういう意味ではやっぱり(精神的な意味で)行くとこまで行ってしまった作品な気がする
 それと同時に、
この作品は別に自分自身の孤独に酔っているわけではなく、
孤独を突き詰めて、
孤独を受け入れて、
孤独のまんま進んでいく・・・という
(逆説的な意味合いで)ポジティビティを感じる内容にもなっていると思うんです
孤独である事を悲しんでいるような曲もあるけど、
でもそんな自分を認めてあげるような曲もあったりして、
その極端に明るくもなく暗くもない温度感が実に最高なアルバムだと感じますね
どっちもあって人間というか、ポップな自分もダークな自分もいる、
そういう色々な意味での「孤独」をきちんと聴き手の背中を押すまで突き詰めた文字通り魂のアルバムだと思う
一曲一曲しっかりと作り込まれている作家性の高さ含めて自分の中ではマスターピースの一つ、ですね
多分一生聴き続けるレベルの作品だと思います、自分の中で。




“憂鬱”の名において、全ては“真実”
“真実”の名において、全ては“憂鬱”(孤独の音楽)




お気に入りの3曲はやはり迷いました
本作の中で最もポップなアレンジながら最も深淵の雰囲気がする「孤独の音楽」、
聴き手のすべてを許すような罪悪感からの解放アンセム「クロエ」、
そして唯一、激情の想いを叩き付けるロックナンバー「dialogue」と一応選んではみたんですが・・・。

「想いが言葉に変わるとき」はアコギのシンプルで力強い音色を聴いてるだけで気持ちが良く、
丁寧に丁寧に紡ぎ出された誠実なフレーズの数々がまた身に沁みる名曲、
「素晴らしい嘘」はスケール感のあるメロディが素晴らしく、
荘厳なアレンジもまた聴き応えがあって気持ちが昂り考えさせられる楽曲です
「太陽のまばたき」もアルバムのテーマに寄り添ったマイノリティに向けた歌詞になっていて素晴らしいし、
落ち着いたメロディやアレンジも古明地さんならではのナチュラルさがあって素敵な一曲。

本作では最も暗さを感じる「i miss you」の虚無感も好きだし、
これまたサビのメロディがポップで優しい「嘆きの天使」もまた美しい楽曲
どっちかっていうと孤独を嘆いてるんじゃなく、孤独を癒そうとしている感覚がとても聴いてて心地良いですね
それもまた孤独を感じてる誰かの為の歌というか・・・
それは個人的に勝手に感じてる事、ですが。
 これまた賑やかな音色が響き渡るカラフルなアレンジが素敵な「waltz」、からの
本作でも随一のディープサイドを歌った苦しみを吐露しながらも足掻く「無知の涙」も切実な楽曲で大好き
最後の物寂しくも温かい「君を見つけたよ」の素朴さも光ってるし・・・という事で
正直個人的にはどの曲も各々の良さがあって粒揃いのアルバムだと思います
何よりアルバム全体から漂っている孤独に寄り添うような、
そういう雰囲気及びシリアスさが大好きですね
決して遊びに逃げてない、
バラエティを言い訳にして深い想いを紡ぐ事から一歩も逃げてないのが一番素晴らしいと感じますね
だからそれ相応に重いアルバムだと思いますけど、それでもアレンジで最後まで聴けるように工夫されてますし、
また最後までしっかり聴き込む価値のある優れたクオリティのアルバムだとも思います。

今、こんなご時世だからこそ、敢えてこの作品を語るときが来たかな、と。










最後に、
お気に入りの3曲について改めて・・・
「dialogue」は、人と人との繋がりに於いて、
物凄く本音を曝け出している、かつ切実な想いが洪水のように流れてくるアッパーなロックナンバー
今作で唯一テンポが速い楽曲なのも相俟ってレアリティというかパッと聴きで印象に残る曲になってるかと
例え失敗しても、(相手に)気にしないで欲しい~というのは我がままですけどある意味真実ですよね。
 「クロエ」は、
かなり神々しいテイストの曲で、
ゆったりしたテンポのABメロから、
一気に浮遊感のあるサビが「溢れてくる」アンセム感が兎角素晴らしい
この曲を聴いてると何もかも許された気分になるから不思議です
サビ、と言っても声オンリーで歌詞が一切ないのも潔くてオルタナティブで大好きですね。

「孤独の音楽」は、
アレンジこそポップにも感じますが、
歌の雰囲気、歌詞、そしてそのポップさが逆に深淵を強く感じさせる、
行き着くとこまで行き着いてしまった感じが凄く好みです
完全に孤独になった時の為の歌、というか、
そこからまた歩き出す為の歌、というか。

こういう音像も歌詞も正直な話ポピュラーな方からは出せないエッセンスに感じます
その絶望と、そこから生まれる希望と・・・希望というか、辛うじて残った報われようとする想いのかけらと。
個人的にはイントロからしてグッと来る、今作でも最も聴き込んだ一曲です。






パレードに雨が降るなら
それでいい
僕等は立ち止まらない (孤独の音楽)




書いてて感じましたが、
「孤独の音楽」という曲は、
2020年という時代に凄く似合う曲だと思いました
そういう意味だとやっぱりちょっとは良さを分かってもらえたら・・・って今不意に感じましたが(笑
でも、このアルバムがどういう売り上げでどういう評価をされてようと、
自分にとっては何時まで経っても大切に聴く類の作品です。
一枚通してアルバムをじっくりと聴き込む、
そういう行為にも相応しい名盤。