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サブカルチャーマシンガン

自分だけの「好き」を貫く為のブログ。

【アルバムレビュー】SELL OUR SOUL/THA BLUE HERB

2020-04-07 | アルバム感想
                   







1.SHINE ON YOU CRAZY DIAMOND
2.天下二分の計(COAST2 COAST3)
3.ウルトラC
4.29 TO THINK
5.人斬り
6.路上
7.S.S.B
8.I'M PRIVATE ARMY
9.STILL STANDING IN THE BOG
10.BROTHER
11.SMILE WITH TEARS
12.サイの角のようにただ独り歩め






これは・・・2002年に出たアルバムです
前回の54-71も2002年だったのでほぼ同時期ですね
本作もまた衝撃というかある意味自分の人生観にまで影響を与えたアルバムになってます。

で、
今回も毎回恒例のお気に入りの3曲を赤字にしてみたんですが、
正直このアルバムに関してはお気に入りというか、そういう類のアルバムではない気がします
なんかこう、バラエティに富んでますよ~というのとは真逆を往ってる方向性なので。
どっちかって言えば全部含めて一つの作品になってます、という感じなんですよね
だからお気に入りも何も無いというか、
お気に入りなのはこの作品自体だ!って感覚ですね
でも、そうはいっても企画は企画なんで仕方なく選んではみました
選んでみたら物凄い偏ったので見た人は「前半よりも後半のがいいの?」って思うかもしれない
それはとんでもない、もう頭の3曲だけでも素晴らしいと断言出来るほど大好きです
つまり結果としてこうなっただけで全編通して格好良いアルバムなのは間違いない、、、って事ですね。

ブルーハーブはジャンルで分類すればヒップホップ・・・に当たると思います
ただ、個人的には安易な書き方かも分かりませんがブルーハーブってジャンルだと感じてます
一般的にヒップホップと言えばポップアイコン・・・つまりポップスのレベルまで昇華したものや
クラブとかで流れるようなちょっとディープなものだったりを彷彿すると思います
けど、
総じてパーティ的というか、
ある程度盛り上がる事を想定してどの曲も作られてると思うんです
しかしブルーハーブの曲っていうのは正直盛り上がりとか度外視で作られている
以前ライブを観た時に「演劇に近いな。」とかそんな感想を書いた気がするんですけど、
完全にリスナーと対になって直接心に訴えかける音楽というか、かなり求道者じみた音楽に聴こえます
かといって決して"語り”ではなくきっちりヒップホップらしいのがまた更にオリジナリティが高いというか、
身も蓋もない事を言えばポエトリーリーディングとヒップホップの中間を往ってるように聴こえます
個人的にブルーハーブのような音楽性はブルーハーブでしか聴いたことがないので、
そういう意味では正しい意味で「唯一無二」の音楽性だと感じる次第ですね。




はっきり言って同業者が造った曲はつまらん
さあこれでまた敵さんが増えてくれるかな (STILL STANDING IN THE BOG)




ブルーハーブの特徴として、
トラックは必要最低限のクールでシックなものが殆ど
サビもはっきりとしたサビはない
唯一、
どの曲にも共通してるのがBOSSの聴き手の真に迫るラップ及び言葉の力強さ・・・なんですよね
無機質だけどしっかりと格好良いトラックも終始秀逸なアルバムだとちゃんと感じますけど、
やはりBOSSが紡ぎ出す言葉の力と説得力、流れるようなリズムが芯だと思いますね
聴き手が向き合わざるを得ないシリアスで誤魔化しの効かない言葉の数々、
その言葉の渦と不敵さに浸ってるだけで気持ちが良い・・・という
実力とセンスが兼ね合わさってる紛う事なき傑作です。

序盤の曲は威勢の良い曲が多く、
リアルに聴き手に切り込むような攻めた曲が多いです
その辺の自信満々な格好良さのアピールは非常にヒップホップっぽくて聴いてて気持ちが良い
タイトなライムでガンガンBOSS節を刺しまくる「ウルトラC」なんかは相当の格好良さ
ヒップホップの良いトコは日本人が抱きがちな自虐性がほぼゼロなこと
自分なんかは常に自分に対する評価がマイナスなので、
こういう作品を聴いてると逆に気持ちが前のめりになりますし、
自分のやってる事にちゃんと自信や誇りを持つ事の大切さも教えられる気がするんですよね。

超長い曲「路上」のブルージーなテイストを挟んで、
このアルバムはアルバム自体の長さが67分とかなり長いんですけどレコード的にB面みたいな流れになっていきます
実際「路上」を挟んでまた攻め込むような鋭いライムを売りにしたタイトな楽曲が連発されるんですよね
そう考えると、
今振り返ると凄くアルバムらしいアルバムというか、
今の一曲一曲バラバラに聴いてます~みたいなものとは真逆の性質な気がしますね
最後までじっくり聴き込んでこそ真価が分かるというか、満足感が得られるというか、
一つの作品をしっかりと聴き込む~という文化が間違いなく根付いているアルバムだと思います
それは別に批判的な意味ではなく、
こういう楽しみもありますよ。って提示ですね


後半の3曲、
赤字にさせてもらってますけど、
お尻の3曲は結構聴き手の懐にまで潜り込んでくるような、
どちらかといえばプライヴェートな内容の曲を連発して今作は終わります
その流れもまた秀逸というか、ちゃんとアルバムにストーリー性があって好きなんですよね
散々オリジナリティ、トップランカーとしての誇示を聴き手にアピールしつつ、
最後はそんな修羅の道を延々と歩んでいく~という「覚悟」を見せて終わる
その流れが最高に格好良いですし、
"孤独なまんま進め”というメッセージが痺れるくらいに胸を打つ、
自分の本音と正しさの為に独りで戦ってみろ!という非常に聴き手に寄り添った内容になってるんですよ
だから、序盤の格好良さとはまた別の格好良さを感じてこの後ろの3曲が凄く大好きなんです
でもそれも序盤で散々自分らのスタイルのカッコよさを聴かせたお陰かな、とも
そう考えるとやはりとてもアルバムらしいアルバムだな、って感想ですね

感慨深さをトラックとラップに乗せてストレートに表現している「BROTHER」、
聴き手の心理を揺さぶるような誠実なメッセージソング「SMILE WITH TEARS」、
孤独をしっかりと認めて歩み続ける様を描く「サイの角のようにただ独り歩め」、
この3曲の流れはいつ聴いても神懸ってるというか、
今作がマスターピースである所以のような3曲で是非この3曲に辿り着いた時の快感を味わって欲しい
勿論、それには独特の音像をまず気に入るところから始めなきゃいけないんですけど(笑
でもブルーハーブの音楽って響く人の心に思い切りズブズブ響きまくる類の音楽だから。
そういう意味では圧倒的な勝利を収めたグループと言っても過言ではない
そんなブルーハーブの中でも個人的に最も好きなアルバム
最もアルバムとして完成度の高い作品だと思ってます。







なにせ少数派から始めなかったら
勝ち上がりのやりがいがなくなるからな (天下二分の計)



「SELL OUR SOUL」は、
BOSSの声とONOのトラックの時点で格好良いのに、
リリックに息づく価値観や人生観自体もことごとく格好良くて、
聴いてる自分まで格好良くなってしまったようなありがちな錯覚を受ける(笑
所謂心酔出来る類の強い影響を及ぼす強烈なドープ・ミュージックに仕上がってると思います
どこまでもクールで痺れる、そして温かい。自分にとっては人生のアルバムの一つ、です。