☆シンマンGP Season2 エントリー作品⑥ Drive/中野ユウスケ

周りには幸せそうな人がいっぱいいて、
満たされてない自分だけが独りぼっちに思える
知れば知るほど惨めになる現実が広がっていて、
成す術もなく、
どう仕様も無い。
美しく拡がっていく青空の分だけ、
そこから切り離された自分の「無価値さ」に言葉を失う―――――。
俺なりの言葉で飾れば、こういう感じですね。この「Drive」という作品は。
まず、異常に暗いですね
シンマンGPの作品とは思えないくらいダークで、陰鬱で、救いすらない物語が展開されています
こういう絶望的な話の場合、最後に少しは救いの一つでも寄越すのが普通なんですけど
この漫画に関しては、絶望から始まって、絶望に終わる・・・という。
何も解決してないし、
何も報われてない
何も終わってないし、
何も始まってない・・・
そういう状態で物語が締められてるんですよね
今週のアンケートはがきにも「この終わり方は~」と書かれてましたが
それくらいある種の覚悟と意志を以ってこの「何も救われてない」「何も終わっていない」結末を選択したのだと思います
他力本願じゃ何も解決しないし、頑張っても無理なものは無理だし、諦めたってこの日常は続いていくし――――。
という、漫画漫画させる事を回避して、ただただ「暗い」お話として仕上げたこのお話は
物凄く個性的である、、、と同時に物凄く挑戦的、かつ不敵だと思いました
思えば、デビュー作「縹色の街」も明確に“何か”が解決したお話ではなかったので
これがある意味中野ユウスケさんの「味」なのかもしれません。
個人的な想いだけで言えば、正直面白かったですし、単独感想を書くぐらい大好きな新作でした
想像以上にダークで、思春期を飛び越えて陰鬱な作品になっちゃってますけど
この方向性でどこまで完成度を上げる事が出来るのか、
どこまで突き進むのか、、、に単純に興味があります
出来れば、よりダークに、より深淵に研ぎ澄まされた中野さんの新作も読んでみたいですね
前作から確かに進化が感じられた作品に仕上がっており、個人的に大満足でした。

ただ、「シンマンGP」という視点から考えると、
こういう明らかに万人に好かれそうもない作品を持って来るのは物凄くチャレンジング、もしくは別の言い方をすれば無謀なんですよね(笑
こんな賛否両論不可避な作品がシンマンGP取れるのかなあ?って思いはありますけど、
ただ個人的に思うのは・・・
今の時代あまりに皆がポジティブになり過ぎているきらいが確かにあるんですよね
蓋を開ければ「頑張れ」「諦めるな」「君は大丈夫」「毎日の積み重ね」「お前はそんなものか?」「ここでやらなきゃ~」「だからやるんだ!」とかのオンパレードで
実直に悲しみに浸らせてくれる作品は昔と比べて明らかに減っている、と俺的には感じています
そして、もっとそういうどうしようもない現実を描いて、哀愁に酔わせてくれる作品があっていい。とも
シリアスでダークな表現が軒並み削られていった結果、残ったのは「頑張れ頑張れ」尽くしというのはそっちの方がある意味悲しい
泣きたい時は泣いても良いし、ぶつかる時はぶつかっても良い、自暴自棄な時は自暴自棄になっても良い
そんな風に語ってくれる作品が年々少なくなっていってる(気がする)ので
そういう意味でも中野ユウスケさんのような作家さんは貴重だと思います
切なさを飛び越えて、
どう仕様も無い地平まで辿り着いてしまった二人の物語
車を盗んで、金を盗んで、親を殺して、それでもどこにも辿り着けずに
虚しさを抱えたままただひたすら走り続ける最果てへの「Drive」
そんな二人の不安定な相様“だけ”を切り取ったこの作品は
まだ新人作家ならではの青さも存分に感じさせつつ、
それでも、
中々記憶から消す事が出来ない「物語」として読み手に残って行く、はず
そう個人的には信じたい傑作に仕上がっている、、、と思います
誰かを憎み、
誰かから逃れて、
誰かを殺(あや)め、
誰からも救いは無く
誰にも頼る事も出来ず
誰かに成る事も出来ない
誰の目にも映らない
誰からも気にされ(なかった)ない
そんな、誰からも見放された兄と妹の虚無感だけが拡がり続けるストーリー
「この先」なんてない、有り体な救いなど用意はしない――――
という、中野ユウスケさんの美意識も往々にして感じられた新作
普通に憧れて、
普通を信じて、
普通を追い駆けて
普通に成りたくて、
普通に近づいて、
普通から見放され
普通にも成れずに
普通に焦がれ続けて
普通を夢見ながら涙を流す
そんな二人の物語を、どうか受け入れてやって欲しい。
そして、いつか、この二人が「誰か」に成れる事、「普通」に成れる事を祈っています。
フィクション・・・という事を忘れ去ってしまう程、初見時にはかなり落ち込みました。
それくらい憂鬱度の高いお話になっている(と、思う)ので色々と注意が必要です
幸せすぎる家族、青すぎる空、、、と
ペーソスの演出に関しても優れている漫画だったと思います
正直めちゃくちゃに好き嫌いも分かれるだろうし、クオリティよりもやりたい事を優先している感は否めませんが
それでも、個人的には、大好きですし、大手を振って支持したい、今週のアンケ1位で入れよう。って思えた漫画でした
その気持ちが少しでも伝わりますように、と願いを込めて。
妹をずっと守れなかった兄は、
最後の最後で自分の身を投げ出して妹を守った
妹よりも先に死ぬ覚悟で殴られにいったんだ
そんな兄の為に、
兄を守る為に、
妹は拳銃で親を殺した。
それは、
ある意味最初で最後の家族らしい行為だったのかもしれない。
その先はないけれど、
人殺しになってしまったけれど、
それでも、
そこには、
「確かなもの」があって―――――。
読切専用のお話かもしれませんが、
機会があったらこの続きも読んでみたい、です。
アンケは勿論、先述の通り1位で、裏面は「支持」に丸をつけます
余談ですがタイトルのロゴも凄く好きです。青年誌だからこそ、こういう報われない物語があっていい。そう思います。

ありがとうございました。

周りには幸せそうな人がいっぱいいて、
満たされてない自分だけが独りぼっちに思える
知れば知るほど惨めになる現実が広がっていて、
成す術もなく、
どう仕様も無い。
美しく拡がっていく青空の分だけ、
そこから切り離された自分の「無価値さ」に言葉を失う―――――。
俺なりの言葉で飾れば、こういう感じですね。この「Drive」という作品は。
まず、異常に暗いですね
シンマンGPの作品とは思えないくらいダークで、陰鬱で、救いすらない物語が展開されています
こういう絶望的な話の場合、最後に少しは救いの一つでも寄越すのが普通なんですけど
この漫画に関しては、絶望から始まって、絶望に終わる・・・という。
何も解決してないし、
何も報われてない
何も終わってないし、
何も始まってない・・・
そういう状態で物語が締められてるんですよね
今週のアンケートはがきにも「この終わり方は~」と書かれてましたが
それくらいある種の覚悟と意志を以ってこの「何も救われてない」「何も終わっていない」結末を選択したのだと思います
他力本願じゃ何も解決しないし、頑張っても無理なものは無理だし、諦めたってこの日常は続いていくし――――。
という、漫画漫画させる事を回避して、ただただ「暗い」お話として仕上げたこのお話は
物凄く個性的である、、、と同時に物凄く挑戦的、かつ不敵だと思いました
思えば、デビュー作「縹色の街」も明確に“何か”が解決したお話ではなかったので
これがある意味中野ユウスケさんの「味」なのかもしれません。
個人的な想いだけで言えば、正直面白かったですし、単独感想を書くぐらい大好きな新作でした
想像以上にダークで、思春期を飛び越えて陰鬱な作品になっちゃってますけど
この方向性でどこまで完成度を上げる事が出来るのか、
どこまで突き進むのか、、、に単純に興味があります
出来れば、よりダークに、より深淵に研ぎ澄まされた中野さんの新作も読んでみたいですね
前作から確かに進化が感じられた作品に仕上がっており、個人的に大満足でした。

ただ、「シンマンGP」という視点から考えると、
こういう明らかに万人に好かれそうもない作品を持って来るのは物凄くチャレンジング、もしくは別の言い方をすれば無謀なんですよね(笑
こんな賛否両論不可避な作品がシンマンGP取れるのかなあ?って思いはありますけど、
ただ個人的に思うのは・・・
今の時代あまりに皆がポジティブになり過ぎているきらいが確かにあるんですよね
蓋を開ければ「頑張れ」「諦めるな」「君は大丈夫」「毎日の積み重ね」「お前はそんなものか?」「ここでやらなきゃ~」「だからやるんだ!」とかのオンパレードで
実直に悲しみに浸らせてくれる作品は昔と比べて明らかに減っている、と俺的には感じています
そして、もっとそういうどうしようもない現実を描いて、哀愁に酔わせてくれる作品があっていい。とも
シリアスでダークな表現が軒並み削られていった結果、残ったのは「頑張れ頑張れ」尽くしというのはそっちの方がある意味悲しい
泣きたい時は泣いても良いし、ぶつかる時はぶつかっても良い、自暴自棄な時は自暴自棄になっても良い
そんな風に語ってくれる作品が年々少なくなっていってる(気がする)ので
そういう意味でも中野ユウスケさんのような作家さんは貴重だと思います
切なさを飛び越えて、
どう仕様も無い地平まで辿り着いてしまった二人の物語
車を盗んで、金を盗んで、親を殺して、それでもどこにも辿り着けずに
虚しさを抱えたままただひたすら走り続ける最果てへの「Drive」
そんな二人の不安定な相様“だけ”を切り取ったこの作品は
まだ新人作家ならではの青さも存分に感じさせつつ、
それでも、
中々記憶から消す事が出来ない「物語」として読み手に残って行く、はず
そう個人的には信じたい傑作に仕上がっている、、、と思います
誰かを憎み、
誰かから逃れて、
誰かを殺(あや)め、
誰からも救いは無く
誰にも頼る事も出来ず
誰かに成る事も出来ない
誰の目にも映らない
誰からも気にされ(なかった)ない
そんな、誰からも見放された兄と妹の虚無感だけが拡がり続けるストーリー
「この先」なんてない、有り体な救いなど用意はしない――――
という、中野ユウスケさんの美意識も往々にして感じられた新作
普通に憧れて、
普通を信じて、
普通を追い駆けて
普通に成りたくて、
普通に近づいて、
普通から見放され
普通にも成れずに
普通に焦がれ続けて
普通を夢見ながら涙を流す
そんな二人の物語を、どうか受け入れてやって欲しい。
そして、いつか、この二人が「誰か」に成れる事、「普通」に成れる事を祈っています。
フィクション・・・という事を忘れ去ってしまう程、初見時にはかなり落ち込みました。
それくらい憂鬱度の高いお話になっている(と、思う)ので色々と注意が必要です
幸せすぎる家族、青すぎる空、、、と
ペーソスの演出に関しても優れている漫画だったと思います
正直めちゃくちゃに好き嫌いも分かれるだろうし、クオリティよりもやりたい事を優先している感は否めませんが
それでも、個人的には、大好きですし、大手を振って支持したい、今週のアンケ1位で入れよう。って思えた漫画でした
その気持ちが少しでも伝わりますように、と願いを込めて。
妹をずっと守れなかった兄は、
最後の最後で自分の身を投げ出して妹を守った
妹よりも先に死ぬ覚悟で殴られにいったんだ
そんな兄の為に、
兄を守る為に、
妹は拳銃で親を殺した。
それは、
ある意味最初で最後の家族らしい行為だったのかもしれない。
その先はないけれど、
人殺しになってしまったけれど、
それでも、
そこには、
「確かなもの」があって―――――。
読切専用のお話かもしれませんが、
機会があったらこの続きも読んでみたい、です。
アンケは勿論、先述の通り1位で、裏面は「支持」に丸をつけます
余談ですがタイトルのロゴも凄く好きです。青年誌だからこそ、こういう報われない物語があっていい。そう思います。

ありがとうございました。