読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

釜ケ崎その2

2007-11-15 12:03:17 | テレビ番組
 今朝のスーパーモーニングで、まさに昨日書いた簡易ホテルが出てきた。「超激セマ物件に住む人たち」だ。大学卒業後就職せずに世界を旅してまわっていた現在28歳の男性。正社員の仕事が見つからないので押入れを改造したような一畳のスペースに住んでいる。(「1畳のドラえもん生活」)この人は上の段で、下の段にはアメリカから来たビジネスマンが住んでいる。シャワーとトイレ、食堂は共有で家賃は月1万5千円だそうだ。高~!これ都市部の標準か?ネットカフェにずっといるよりは安上がりなのだそうだ。この人は派遣の仕事を見つけたから、このまま順調にいけば1年くらいで4畳半のアパートくらいには入れるんじゃないかと思う。だけど、ネットカフェ生活から抜け出せない人もいる。(「超激セマ物件に住む女 我が家はロフト付ネットカフェ」)この人の場合上がロフトになってるから占有スペースは2畳だけど、要するにロフトベッドってことだ。この人は体を壊して仕事をやめてしまっていて、この生活から抜け出せる見込みは今のところない。このまま貯金がなくなったら即路上生活ですよ。
 生活保護を受けたくても、住所不定では受けられない。アパートを借りるにしても、敷金、礼金、保証人がいるのでとてもハードルが高い。この記事のような状況はそういう現実があって起こったことなのだ。昨日書いた日雇い労働者の組合の人は、身元引受人になったり、事務所を住所登録して生活保護が受けられるようにしたりということもやっていたようだ。そりゃあ、ヤクザの生活保護不正請求や、こんな不祥事もありはするだろうけど。(ブログ「悪徳公務員の鏡を破壊せよ!」から)

 それで、昨日言いたかったことは、かつての土建国家で3Kの仕事をしていた人たちのかわりに現在景気の調節弁になっているのがフリーターや派遣の若者たちなんだってことだ。私たちが「釜ケ崎?何それ?関係ないじゃん。」って言っている間に、ふと気付くと同じ状況が自分の足もとに迫って来ていたってわけだ。それからひとつ書き漏らしたことは、釜ケ崎の労働者たちが高齢化し働けなくなったあとに来たのが外国人労働者だってこと。以前、大手電気製品や半導体、自動車部品の工場などが立ち並ぶ工業団地のすぐそばに住んでいたことがあったが、スーパーやコンビニで外国人労働者をよく見かけた。南米系の人たちみたいだった。また、最近中国系の若い女の子たちと近所のスーパーでよく出会う。日本語は片言しかしゃべれないようで、この人たちは誰なんだろうと思っていたが、明日放送予定のNHK「ふるさと発スペシャル」の予告を見てやっとわかった。外国人研修生だ。研修っていっても要するに使い捨ての低賃金労働者だ。一瞬給料明細が映っていてびっくりした。時給300円ですよ。このあたりには繊維関係の会社が多い。備後絣の伝統があって、戦後はデニム製品の製造が盛んになった。生地の製造から染色、縫製、加工、いろんな小規模工場が集積している。ところが、最近は中国製製品が大量に輸入されるようになってきたため、価格競争に勝てなくて廃業する会社が多くなった。ジーンズ一本作るのにどんなに努力しても原価500円から600円はかかるのだが、中国製ジーンズは一本60円くらいで入ってくるというのだ。いくら素材やデザインを工夫しても限りがあって、とうてい勝てない。そのような現状から苦肉の策として低賃金の外国人研修生を受け入れたのだろうと思う。ちょっと大きな会社はすでに15、6年前から中国に工場を移転しているし。
 
 よく、「移民の受け入れには反対だ。治安が悪化する」とか「彼らが高齢化して生活保護を受けるようになったら社会的に大きな負担だ」とかいう議論があるけども、現実にはすでに実質、受け入れているのも同然だ。そして、将来それが大きな社会問題になると言う人は、その火種を作っているのが日本の企業であって、本来社会保障費を折半するはずの企業がその費用を削って生き残ろうとしているのだということを忘れてはいけない。今の節約と、将来予想される負担増と、どちらが大きいかは考えるまでもない。

 それから、今年「論座」で議論になっていた「『丸山眞男』をひっぱたきたい」ね。なんで丸山眞男が関係あるのか私には全然わからなかった。悪いのは「失われた10年」の間、なりふり構わず人件費を削ってきた企業じゃないか?偽装請負を集中的に報じた朝日新聞に腹を立てたせいか、一切朝日に広告を出さなくなったキャノンとか。あー、正社員にすると言っておいて取り消したんだっけ?そいで意趣返しに朝日新聞に一切広告を載せなくなったんだっけ?私はいつかEOS Kissとかキャノンのデジタル一眼レフカメラを買おうと思っていたけどやめた。ひどいじゃないですか!日経新聞にも中国新聞にも一面全部の広告が載ってるのに、朝日だけには載っていない。朝日の読者は貧乏だからキャノンのカメラ買わなくていいってことか?そーだよねー、偽装請負で生活ギリギリの人を応援するような新聞の読者層はキャノンの製品は高級過ぎて買えやしないもんねー。もう一生買わねーよ!
 品格がないというのはああいうことを言うんじゃないか?CANONは創業当時は「観音カメラ」だったそうだ。創業者が観音様を信仰していたからだ。観音→CANNON→CANONと進化したのだ。若者の未来を奪って、世界に羽ばたく観音カメラ!
 そうそう、「丸山眞男をひっぱたきたい」の人。いっそのこと戦争になればいいと言っていた。そうしたら現在の格差社会がシャッフルされて、また逆転のチャンスが巡ってくるって。そして、
 右派の思想では、「国」や「民族」「性差」「生まれ」といった、決して「カネ」の有無によって変化することのない固有の「しるし」によって、人が社会の中に位置づけられる。経済格差によって社会の外に放り出された貧困労働者層を、別の評価軸で再び社会の中に規定してくれる。
 たとえば私であれば「日本人の31歳の男性」として、在日の人や女性、そして景気回復下の就職市場でラクラクと職にありつけるような年下の連中よりも敬われる立場に立てる。フリーターであっても、無力な貧困労働者層であっても、社会が右傾化すれば、人としての尊厳を回復することができるのだ。(続「『丸山眞男』をひっぱたきたい」 「論座2007.6」

とおっしゃっている。私が思うに、「ババア」が年食ってるっていうだけで尊敬されるようなことが二度とないのと同様、いくら戦争になったとしても、「無力な貧困労働者層」の男性が「日本人」で「男性」であるということだけで尊厳を回復できるような社会は二度と来はしないよ。貧乏で仕事がなくてコネも経験もない人は、右傾化した社会でも使い捨ての鉄砲玉くらいの扱いしか受けはしない。よけい悪くなる。だから結局今の社会をなんとか修正していくしかないのだと思うよ。

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