読書と追憶

主に読んだ本の備忘録です。

たかじん

2008-05-05 22:44:19 | テレビ番組
 昨日の「たかじん」で、チベット問題について少し掘り下げた話が出てきた。ゲストがペマ・ギャルポ氏(ブログ)であった。

 中国がチベットを併合した理由の第一は、やはり豊富な水資源と多種多様な鉱物資源、及びメタンハイドレードなどのエネルギーの埋蔵量が中国一多い地域であるということらしい。次に人口増加に悩む本土から周辺に移住させるべき土地がほしかったということで、ペマさんによると中国国内の犯罪者2000万人がチベットに移住するという条件で恩赦を受けたという情報があるらしい。青蔵鉄道が開通し、人と物の行き来が盛んになって豊かになったかといえば全くそうではなく、中国側から人がどんどん入ってきて、チベットからは物資を収奪していくだけだ。また、未成年のチベット女性を中国側に就職させるという名目で連れてゆき、向こうで結婚させるという動きもある。つまり他民族との混血を進めてチベット民族を根絶やしにしてしまおうと目論んでいる。チベット語も学校で使えないし大学に行こうと思ったら北京語をマスターして中国本土に行くしかない。仮に中国で大学を出てチベットに帰って来たとしても、チベット人は公務員にはなれない。高い地位にもつけない。など、いろいろとひどい現状を解説された。

 中国共産党の支配下に入ってチベットの封建的農奴制度が廃止され、多くの農民が救われたとか、識字率が非常に低かったが近代的教育制度によって庶民の識字率が向上したなどどいう共産党のプロパガンダは嘘っぱちだ。都市部を除いてチベットの農民はもともと自給自足の半騎馬民族で、定期的に移住生活を送っていた。農奴制など存在しなかった。また、学校のかわりに寺院が教育機関として機能しており僧侶たちは皆読み書きができた。僧侶の数も非常に多かった。識字率などは誰がどうやって調べたのか、そのような報告書そのものが嘘っぱちだ。中国側のチベットに対する認識は1940年代のままだ。ということであった。

 なんだか、昔から続いてきた民族紛争の典型みたいな話だ。
 
 アイドル席のケイコ先生が「じゃあ、もし日本が中国に併合されたら、日本人も中国の一民族ってことになるんですか」と聞くとペマさんが「かつて、中国残留孤児のことを『ヤマト民族』と呼ぼうということになったのですが、私が『日本人のみなさん、おめでとうございます。日本人はついに中国の一民族になったのです』と書いたら、中国当局はすぐに撤回しました。」と言われた。私は、中国のやってることは確かにひどいし、ペマさんが「中国は毛沢東の亡霊に支配されている。もはや存在しない共産主義思想に操られている。」というのも、まあわかるんだけども、日本人が「きゃー、中国は怖い、危険だ、日本もいつか侵略されるに違いない」なんて恐怖に駆られてヒステリックに騒ぐのも危ないなあと思う。チベット問題について騒いでいるのが特定の政治傾向のある人たちばかりというのも嫌だな。とても同調できない。そういう人たちが騒げば騒ぐほど、政府は中国に対して強硬な意見を言いにくくなるだろう。また、「中国に侵略される危険性があるんだからアメリカとの同盟関係を強化するしかない」という人も多くなるだろう。なにより、大国中国が生き延びるために食糧やエネルギーなどの資源を、形振りかまわず獲得しようとしているのを「人権問題」で説得できるとは思えない。やはり、国際社会で協調して説得したり圧力をかけたりするしかない。すると中国がアフリカ諸国に経済援助を増やしているのは国連での味方を増やすためなのだろうな。なんと戦略的な国だ。日本もそれに対抗できるように賢くならなければならない。聖火リレーの応援をしていた中国人留学生たちも、ただ当局の支持に従ったってだけではなくて、自分の国がボロカスに言われて悲しいから出てきたと言ってたじゃないか。むやみと非難してナショナリズムを煽りたててもよい結果は生まないと思う。

 子供の頃に読んだ「クオレ物語」の中に愛国少年のエピソードが出てくる。(今思うと、あれはただの子どもの学校物語ではなくて、戦前のナショナリズムに基づいた問題ボロボロの小説だが。)船で外国に行くことになった身寄りのない少年が、母国イタリアの悪口を言った紳士たちにせっかくもらったお金をつっ返す話だ。「イタリア人は貧乏だ」「イタリアには泥棒が多い」「乞食も多い」「最低の国だ」全部本当じゃないか。本当だということは少年もわかっているが、自分の国の悪口を言われると我慢ができない。「そんな奴らにお金を恵んでもらったりするものか!」と金貨を投げ返すのだ。愛国心とはそういうものだ。たとえ自分の国が間違っていて、最低であっても、それでも愛する。悪口を言われると激昂してしまう。それは、どこの国でも同じだ。「ダーウィンの悪夢」で印象的だったのは、売春婦が「タンザニア、タンザニア、麗しの国よ」という歌をうれしそうに歌っていたことだ。

 「中国は帝国主義の危険な国」みたいに非難してもだめだ。脊髄反射的に同じような反応が返ってくるだけだ。とにかく、ダライ・ラマ師と中国当局が話し合いのテーブルにつくよう勧めて、粘り強い交渉をするのを国際社会が援護するしかないと思う。ペマ・ギャルポ氏もそのようにおっしゃっていた。


 全然関係ないんだけど、三宅先生は以前「秘書のお嬢さんがみんな調べてくれるからパソコンなんか触ったこともない」とおっしゃっていたのに、最近はどうもネットのブログなどを読んでいらっしゃるように思えるのは、まさかウェブページをそのまんま印刷してもらって読んでるのか?と思っていたら、昨日番組の中で「最近パソコンの使い方を教えてもらってハマっている」とおっしゃった。なるほど。宮台ブログなどもお読みになるとよいと思います(解説は宮崎哲弥さん)。字が細かいから一旦印刷して拡大コピーして寝る前に読むと2、3日してからじわっとわかってきます。

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