うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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シンクロの井村雅代氏が再び中国のコーチに就任

2010年09月07日 | 水泳
シンクロナイズド・スイミングの元日本代表監督で、2008年北京五輪で中国代表監督を務めた井村雅代氏(60)が、中国代表コーチに復帰していたことが7日、わかった。

 井村氏は04年アテネ五輪後まで日本代表で指揮を執り、07年から中国代表監督に就任。北京五輪ではチーム種目で3位となり、中国にシンクロ初の五輪メダルをもたらした。五輪後は監督を退任し、井村シンクロクラブの指導を行っていた。

 日本水泳連盟幹部によると、8月15日付で水連あてに「5か国からナショナルコーチ就任の打診があったが、8月中旬から中国で指導することを決意した」という報告書が届いたという。水連幹部は「日本水連のシンクロ委員でもない方なので、他国で教えるのは自由だが、日本代表への支援も再三お願いしていただけに、残念」と語った。

〔読売新聞 2010年9月7日の記事より〕


                           *  *  *  *  *


まさに自業自得だね

このニュースを読んだ時は、強烈な違和感を覚えましたね。それは、日本のシンクロナイズド・スイミングのトップ指導者である井村雅代氏が再び中国のコーチに就任することではなく、日本水連の幹部のコメントにです。「日本水連のシンクロ委員でもない方なので、他国で教えるのは自由だが、日本代表への支援も再三お願いしていただけに、残念」と水連幹部の方は仰ってますが、随分と虫が良すぎる考え方ですね。日本は、一昨年8月の北京五輪ではチームで初めてメダルを逃し、昨年7月の世界選手権ローマ大会で史上最悪の全種目メダルゼロに終わったのに、危機感が微塵も無いですね。

近年の日本の不振の背景は、指導者がコロコロ変わって継続性のある強化が出来ていない事です。水連は、井村氏が指揮したアテネ五輪で2位に終わって低い評価を下したそうですが、指導者が変わってから順位を落としたのでは面目が丸潰れでしょう。しかも、以前は日本より格下だった中国に完全に追い抜かれましたが、この中国を北京五輪で率いたのが井村氏です(ちなみに、同じく日本を追い抜いたスペインを指揮するのは藤木麻祐子氏です)。更に、昨年の世界選手権ではイタリアとカナダにも抜かれました。海外勢を招待した開催した今年5月の日本選手権でも、日本勢が全4種目で優勝を逃すなど、日本は出口の見えない迷路を彷徨ってます。

シンクロは昨年の世界選手権でメダルゼロに終わる大惨敗を喫して、審判員に対して十分なアピール出来なかったこともあり、その悪い印象を拭い去るのは決して容易ではありません。審判員の先入観で勝敗が左右するのは、採点競技の宿命です。なので、「中堅国」にまで転落した日本が、ロンドン五輪でメダルを獲得するのは相当厳しいと思われます。それどころか、現在の日本は、チームの五輪出場が危ぶまれている状況です。

前回北京五輪のチームの予選システムを踏襲した場合、開催国の英国、欧州以外の4大陸の代表国、世界最終予選の上位3ヶ国を加えた、合計8ヶ国が本大会に参加します(なお、開催国の英国が欧州代表となる為、欧州は大陸予選を実施せずに最終予選から参加)。もし、アジア予選で中国に負けて世界最終予選に回った場合、世界女王のロシア、世界2位のスペインの他に、イタリアや米国などを相手に、3枚の切符を巡って熾烈な戦いに挑まなければなりません。なので、アジアのライバルである中国に井村氏が就任したのは、五輪出場権争いを考えると極めて痛恨です。おそらく、前哨戦となる11月の広州アジア大会では、敵地ということもあり厳しい戦いが待ち受けるのは必至です。

実は、井村氏は、日本代表のスタッフ復帰には当初は意欲的だったのに、水連は閑職に追いやろうとした経緯があります。現場復帰に拘る井村氏を高く評価する国が5つもあるのならば、条件が良く、尚且つ以前に指導して実績を挙げた国からオファーが再び来たのですから、指導者としてはそれを受けるのはむしろ当然のことでしょう。これを「売国奴」とか「守銭奴」とか罵るのは、極めて偏狭で思慮の浅い考え方だと思います。低迷著しいシンクロ日本を本気で再建したいのであれば、水連はなぜ井村氏に然るべきポストを用意して繋ぎ止めなかったのか、強い疑問を感じます。本当に非難すべき相手は、国内のトップ指導者を正当に評価せずに流出を許した無能な水連幹部です。

たしかに、長い目で見れば、日本人指導者が海外で指導して実績を挙げるのは、指導者本人にとっては間違いなくプラスになりますし、送り出す国にとっても最終的に還元されるでしょう。ただ、肝心の指導者を送り出す国がこのような体たらくだと、あまり悠長にものを考えることが出来ないのが悩ましいところです。今回の井村氏の中国のコーチ就任が、日本にとって良い意味で刺激なればよいのですが・・・。


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シンクロ日本、ついに世界水泳でメダルゼロ


〔追記〕
日本水泳連盟は10月13日に、来年7月に中国の上海で開催される世界水泳選手権のアジア最上位国に、ロンドの五輪のアジア代表権を与えると発表しました。最大のライバルの中国での開催なので、日本は間違いなく厳しい戦いを強いられることが予想されます。最悪、世界最終予選に回ることも想定して、日本は強化を進めるべきでしょうね。

http://sankei.jp.msn.com/sports/other/101013/oth1010131218001-n1.htm

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2 コメント

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間違いは誰にでもあるが・・・・ (こーじ)
2010-09-08 23:47:38
 考えてみるとシンクロも当初はアメリカとカナダが2強を形成し日本が追うという形でしたけど、両国が低迷し代りにロシアがレベルアップしてきたという事でしたね。
 
 しかもロシアに肉薄している時のHCが井村さんだったので、2位を正当に評価できずに違うHC
なら優勝できるかもと思っても08北京の頃なら
間違いではないでしょう。

 ただし北京で失敗という結果が出たので井村さんに三顧の礼を尽くしてでも復帰してもらうのが筋だと思いましたよ。

 閑職に追いやろうとしたというのは中国のHC
で日本のメダルを阻んだからという穿った見方もできるのですけどね。

 人間だから間違いはありますけど、後のフォローが役人的というか 血が通ってないというかですよ。

 
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コメントありがとうございます (猫なべ)
2010-09-09 22:05:06
こんばんは、こーじさん

アテネまで万年2位だった日本が、世界の頂点を真剣に狙う為に、
心機一転を図って井村氏を交代させたのなら、まだ理解はできます。

だけど、この数年間は、若手コーチが就任しては短期間で辞任の繰り返しです。
北京の時なんて、大会2ヶ月前にヘッドコーチが自信喪失に陥って辞任しましたから。

なのに、水連は「若いコーチに経験を積ませる」という理由で、
チームには経験不足のコーチをつけて史上初めてメダルを逃した経緯があります。
つまり、現在の日本は、代表チームを「指導者の育成の場」にしているのです。
ハッキリ言って、本末転倒だと思います。

結局、あまりにも井村氏に頼り過ぎて、水連が若手指導者の育成を怠ってきたツケを、
今になって払わされているような気がしますね。
また、東京と関西の派閥争いの影響も、井村氏が復帰できなかった背景だとも言われてます。

低迷の真っ只中にいる現在の日本のシンクロは、
まるでバレーボールが辿った没落の道に似ているような気がしてならないです。

今月16日から中国でW杯がありますが、現時点での世界における序列が分かると思いますので、注目したいです。
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