うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
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世界水泳は競泳&シンクロだけじゃないですよ

2009年08月05日 | 水泳
競泳を振り返る

今週の2日(日本時間3日)に閉幕した世界水泳。競泳の日本は新鋭・古賀淳也の100m背泳ぎの金1を含め、銀2、銅1の計4個のメダルを獲得し、日本新記録は前大会の10個の2倍である22個を更新しました。前回のメルボルン大会は金1、銀2、銅4の計7個でした。また、前々回の4年前のモントリオール大会は銀3、銅6の計9個だったので、五輪翌年の大会としては今大会は少し寂しい限りです。世界大会で過去5大会連続でメダルを獲得した男子400mメドレーリレーは、今大会では不振だった平泳ぎの実力がそのまま反映された形となりました。北島康介の存在の大きさをあらためて感じます。ただ、自由形200mで4位入賞した内田翔の成長は大きな収穫です。だが、女子はメダル数が前回の4から0と厳しい結果となりました。前回銅メダルを2個ずつメダルを獲った柴田亜衣と中村礼子の2大エースの引退が結果的に大きく響きました。いち早く新戦力の台頭が待たれます。

ただ、今大会は例のハイテク素材を使った高速水着の問題で振り回された大会でした。世界新記録は、前回のメルボルン大会は14個、「レーザーレーサー騒動」で揺れた北京五輪は25個だったので、種目数が異なるとはいえ今大会はかなり異常です。今大会で好成績を挙げた無名選手は、はたして水着のルールが改正される来年以降もこの調子を維持できるのか疑問です。なので、今大会の結果だけでは真の実力を反映しているとは言い難いです。来年からの水着の新規定では、男子は腰から膝まで、女子は肩から膝までとなる為、体格や筋肉量で劣る日本勢はルール改正が追い風になると指摘されてます。それだけに、来年夏に開催される米豪が参加するパンパシフィック選手権(米国・アーバイン)と日中対決が予想される11月の広州アジア大会はルール改正後に行われる大きな国際大会なので、再来年の世界水泳(上海)やロンドン五輪を占う試金石となりますからとても注目です。

また、水泳界はよくも悪しくも先日急逝された古橋広之進さんが背負っていましたので、ある意味「古橋商店」のような趣があります。古橋さん亡き今後は、水連はスポンサーの獲得やメーカーから選手へ支給される物品提供の契約といった、代表チーム対するサポート体制の充実は本当に重要だと思います。来年は水着のルール改正もありますので、世界の動向も注視する必要があります。水連は北京五輪の時のようなメーカーとの契約問題を起こさない事を望みます。


水中の格闘技

ところで、世界水泳というと競泳とシンクロナイズド・スイミングだけ行われているイメージがありますが、水泳競技はこれだけではありません。他に飛び込み、オープンウォータスイミング、水球があります。中でも私がいつも注目しているのは水球です。正直言って世間的には殆ど注目されていないマイナー扱いされている競技です。せいぜいミュージシャンの吉川晃司さんがやっていたスポーツとしか認識されていないと思います(苦笑)。昨年はワールドリーグアジア予選をBS朝日で中継してましたけど、基本的にテレビで水球の中継を見られるのは、たぶん五輪の決勝戦ぐらいだけだと思います。なので、今回の世界水泳をBS朝日で中継してくれたのは嬉しかったです(だけど、1時間半も放送枠があったのにもかかわらず、かなり編集して端折ってましたが・・・)。水球は体がぶつかり合ってとても激しく、パスワークも含めて見ていてとても面白いです。プールで行われるハンドボールといった感じです(ハンドも水球と同じく人数が7人です)。

日本は男女とも残念ながら今大会は出場できませんでしたが、今回の世界選手権決勝のセルビアvsスペイン戦は手に汗握る展開で本当に好試合でした。試合展開は追いつ追われつの一進一退の展開でしたが、基本的にセルビアペース。だが、セルビアが6-5と1点リードした最終ピリオド。残り31秒でセルビアが反則で1人退水。そして、残り11秒でパワープレーを仕掛けたスペインが、起死回生のシュートで奇跡の同点弾。延長戦ではスペインが7-6と遂に逆転。だが、今度は残り1分38秒でスペインが反則で1人退水。そして、残り1分でパワープレーを仕掛けたセルビアがシュートし、またも7-7の同点となって第2延長へ。その第2延長は双方とも決め手に欠いて、ペナルティーショット戦(PS戦)に縺れ込みました。

そのPS戦では、セルビアが3-2とリードして最後の5人目へ。徳俵に足がかかったスペインが冷静に決めて同点にしますが、なんと後攻めのセルビアのシュートをスペインGKがシュートコースをしっかり読んで阻止。PS戦でも延長に縺れ込みます。双方3人ずつが決めますが、9人目のスペインのシュートをキーパーの右手で弾き、セルビアが落ち着いてシュートを決めて遂に決着。PS戦では7-6で、最終スコアが14-13。延長含めて38分間の戦いもさることながら、PS戦でも非常に素晴らしい内容でした。同じく延長にまで縺れ込んだ死闘だった、バルセロナ五輪決勝のイタリアvsスペイン戦(イタリアが再延長戦の末に地元のスペインを9-8で下して優勝)を思い出しました。



なお、日本の水球は世界的に見れば残念ながら男女とも弱小国です。体格や身体能力の差がハッキリ出る競技ですので、日本(というよりアジア勢)にとっては、かなり不利なのは否めません。シドニー五輪から正式に採用された女子に至っては、まだ1度も五輪に出場した事はありません。おそらく日本の女子の団体球技の中では最低の競技レベルだと思います。男子は五輪に7回出場の経験があります。1960年ローマ五輪から1972年ミュンヘン五輪までは4大会連続で本大会に出場を果たし、アジア大会でも1958年東京大会から1970年バンコク大会まで4連覇を飾るなど、1970年代前半までの日本はアジア最強国に君臨してました。

だが、1974年のテヘランアジア大会では、日本はイランと中国(この当時はまだIOC復帰以前)と4勝2分で成績が並ぶものの、得失点差で地元イランに惜しくも敗れて3位に終わり、優勝国のみに与えられる1976年モントリオール五輪の出場権を逃してしまい、連続出場が途切れます。中国が国際舞台に復帰した1970年代半ば頃からはアジアでも凋落し始め、アジア大会では1970年バンコク大会を最後に優勝から遠ざかってます。東側諸国がボイコットしてタナボタ出場した1984年ロサンゼルス五輪を最後に、日本は6大会連続で五輪出場を逃してます。旧ソ連が崩壊してカザフスタンがアジアに参戦してからは更に状況が悪化し、近年の日本はアジア3位が指定席となりつつあります。過去には、実力や資金難を考慮して、五輪予選への参加を見送ったこともあります(1996年アトランタ五輪と2008年北京五輪)。

ちなみに、近年で男子が五輪出場に最も近づいたのが2004年アテネ五輪です。2002年釜山アジア大会ではカザフとPS戦まで縺れ込む死闘の末に敗れますが、準優勝を果たして史上初めて自力で世界水泳の切符を獲得(なお、本大会は16チーム中15位)。翌年の2003年9月に敵地アルマトイで行われたアテネ五輪アジア予選では、日本は中国との初戦で第3ピリオドまで6-8とリードされるも、終盤に4連続得点を奪って10-8で逆転勝利。続く2戦目のウズベキスタンは27-2で大勝。日本が得失点差で上回っていたので、カザフとの最終戦は引き分けでも20年ぶりに五輪出場を果たせる有利な状況でした。だが、5-7と逆転負けを喰らい、アテネ行きを逃した悔しい経緯があります。今回の世界水泳の解説者の方も仰ってましたが、日本は2年後に中国の上海で開催される次回の世界水泳や2012年ロンドン五輪といった世界の大舞台に、是非とも自力で復帰したいところです。



☆セルビアvsスペインのダイジェスト(2009年8月1日)



☆壮絶な戦いとなったバルセロナ五輪決勝のイタリアvsスペイン戦(1992年8月9日)

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