奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

虫を調べる ヤゴの抜け殻

2021-06-11 17:26:53 | 虫を調べる
この間、写真に写っていたヤゴの抜け殻を調べ、ウチワヤンマやコフキトンボだろうと推測しました。この際、もう少しちゃんと調べてみようと思って、先日、コフキトンボらしいヤゴを採集してきました。



採集してきたヤゴの抜け殻はこんな格好のものです。全長は23.1mm。普通の大きさです。ヤゴの検索表は東海大学出版会の「日本産トンボ幼虫・成虫検索図説」(1993)に載っています。これはヤゴの検索表で、抜け殻ではないのですが、これを流用することにします。今回はコフキトンボだろうという結果が半ば分かっているのですが、練習のつもりでやってみました。

①体は太く、尾端に尾毛を含む尾部付属器がある 不均翅亜目
②触角は6~7節でひも状;前肢と中肢の跗節は3節
③下唇腮はサジ形で頭部腹面を仮面状におおう
④腮は歯が小さい;体は幅が広い
⑤後肢の腿節は頭幅より短いか、ほぼ同じ長さ;腮の歯は不明瞭なものが多い トンボ科
⑥腹部に背刺がある
⑦腹部の背刺は第8節より後の節にもある
⑧腹部の背刺は第9節より後の節にもある
⑨腹部の背刺は第9節にはあるが、第10節にはない
⑩a 背刺は第3~9節にある
 ⑪第6~9節の背刺は稜状 コフキトンボ
⑩b 背刺は第4~9節にある(コフキトンボには第3節の背刺がこんせき的で、第4~9節にあるようにみえる個体がある) 
 ⑫a 体表はほとんど無毛 キトンボなど
 ⑫b 体表に毛が多い ハラビロトンボなど

コフキトンボはこのような項目を調べることで確かめることができます。最後の⑩だけ二つの可能性があります。詳細は⑩bのカッコ内に書かれていますが、背刺の数が少なく見えることがあるとのことです。今回の抜け殻も、実は、⑩bの方に該当するのですが、コフキトンボは背刺の形が特徴的なので、迷わずにすみました。でも、まったく種類が推測できない抜け殻では迷うかもしれません。この項目を順に調べていきたいのですが、③の下唇腮については抜け殻では大腮に隠れていて見えないので、省略しました。これらの項目を写真で調べていきますが、項目別にすると同じ写真を何度も出さないといけなくなるので、写真別に載せることにします。



最初は上から撮った写真です。体が全体として太いことを見ます。



これは尾部を背側から撮ったものです。尾毛、肛側片、肛上片などの尾部付属器があります。これが①の項目です。



続いて、肢の先端にある跗節の写真です。これは中肢跗節ですが、確かに3節あります。



これは頭部を前から写した写真です。②の触角は大腮の中に隠れていて全体は見えませんが、ひも状であることは確かです。腮の歯はオニヤンマ科とエゾトンボ科など歯が大きかったり明瞭だったりする科を除外する項目です。



そして、背刺についての項目です。第10節を基準として逆向きに番号を付けていきました。⑥~⑨の項目は書かれている通りです。





問題はこの2枚の写真です。背刺は第4節~第9節まであって、第3節には見当たりません。それで、⑩bを選ばなければならないのですが、そうなるとキトンボとか、ハラビロトンボになってしまいます。ただ、⑪に書かれているように、背刺の第6~9節の形が特徴的な稜状であるので、コフキトンボであることは確かそうです。この検索表では、この辺りが問題ですね。



ついでに撮った写真で、大腮の部分を撮ったものです。

今回、ヤゴの抜け殻の検索を初めてやってみました。少し慣れたので、これからも別の抜け殻を調べてみたいと思います。


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