奈良のむし探検

奈良に引っ越しました。これまでの「廊下のむし探検」に倣って「奈良のむし探検」としましたが、動物・植物なんでも調べます。

虫を調べる クサイチゴトビハムシ

2021-09-06 17:51:25 | 虫を調べる
この間からシロバナサクラタデの葉に止まっている小さなハムシが気になっていました。それで、採集して今回調べてみました。



対象とするのはこんなハムシです。





写真の個体は8月23日に採集して冷凍庫に入れておきました。解凍して、実体顕微鏡で撮影したのがこの写真です。体長は2.0 mm。かなり小さなハムシです。後腿節が太いので、ノミハムシ亜科(現在はヒゲナガハムシ亜科)であることは確かです。そこで、木元新作、滝沢春雄、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」、東海大学出版会 (1994)に載っているノミハムシ亜科の検索表を使って属を調べてみました。

①触角は10節、または11節
②触角は11節
③前肢基節窩は後方に閉じる
④中・後肢脛節末端は深くえぐられる ヒサゴトビハムシ属 Chaetocnema

属の検索は比較的に簡単で、この4項目により、ヒサゴトビハムシ属になることが分かりました。その検索過程を写真で見ていこうと思います。



①と②はこの写真で確かめられます。確かに触角は11節です。



③は前肢基節窩に関するものですが、黄矢印で示すように後方は閉じています。ハムシによってはこの矢印の部分がないものがあって、それが「後方が開いている」ということになります。





④はこの2枚の写真で見てみます。中・後肢の脛節末端部分は深くえぐられています。これでヒサゴトビハムシ属 Chaetocnemaになりました。

次は種の検索です。種の検索には次の論文に載っている検索表を用いました。実は、ここでだいぶ迷ってしまい、一時は迷宮入りになりそうでした。

S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. VIII Subfamily Alticinae I", J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 401 (1965).

翻訳があっているかどうか分かりませんが、書いてみると次のようになります。

⑤頭頂は点刻されないか、数個の点刻があるのみ;触角間はなめらかで明瞭に隆起するか、縦隆起線を装う Subgenus Tlanoma
⑥前胸背板には基縁に平行で横向きの深い点刻列はない
⑦背面は完全に銅色か黒青色
 ⑧a 翅鞘の点刻列の間の間室には丸い点刻を装う;背面は銅色
 ⑧b 翅鞘の点刻列の間の間室にはハート形の影を伴う点刻がある;背面は黒青色;触角は赤茶色で、先端の5~6節は暗褐色;脚は赤褐色で、前側2対の腿節は暗褐色で、後1対の腿節は黒味がかる;体長1.8~2.0 mm   granulosa

⑤~⑦は良かったのですが、⑧で迷ってしまいました。いろいろと調べた挙句、⑧bを選ぶことになり、結局、granulosaになりました。この種は「原色日本甲虫図鑑IV」によるとクサイチゴトビハムシになっています。ただ、「新訂原色昆虫大図鑑II」によると、タデヒサゴトビハムシになっています。この辺のことはまた後で書きます。とりあえず、⑤~⑧bを調べていきます。



⑤の頭頂に点刻のないことと、触角間に縦隆起があることはこの写真で分かります。



この写真から⑥の前胸背板基縁近くに横の点刻列がないことが分かります。



ここからは種の特定です。背面の色は黒青色でOKです。体長も範囲に入っています。



触角の色もその通りだと思われます。



さらに、肢の腿節の色もたぶん、この通りなのでしょう。



そして、問題は「翅鞘の点刻列の間の間室にはハート形の影を伴う点刻がある」という一項目です。どう見ても点刻列の間には点刻がありません。



さらに拡大してみたのですが、やはり間室にはハート形の点刻などありません。ここで躓いてしまいました。さらに、追い打ちをかけるように、上記の論文には食草がクサイチゴとなっています。また、A. S. Konstantinov, "Revision of the Palearctic Chaetocnema species (Coleoptera: Chrysomelidae: Galerucinae: Alticini)", Pensoft, Sofia-Moscow (2011)にはこの種が載っているのですが、食草についてはクサイチゴとカジイチゴになっていて、タデ類についてはまったく書かれていません。ところが、「原色日本甲虫図鑑IV」には、この種の図版は出ていないのですが、食草はイヌタデなどとなっています。まったくよく分かりません。

悶々としていたら、ネットで今坂正一氏のHPにこの種について載っているのを見つけました。それによると、タデ類に普遍的で、本州〜九州の本属で最も普通の種類と思われると書かれていました。これで意を強くしました。さらに、「新訂原色昆虫大図鑑II」には、タデヒサゴトビハムシという和名になっていて、「上翅は強い点刻列を具え、間室に点刻を認めがたい。」となっていて、さらに、食草はタデ類になっていました。これでたぶん、決まりです。今回、シロバナサクラタデでたくさん見られた小型のハムシはたぶん、このタデヒサゴトビハムシ(クサイチゴトビハムシ)でよいのでしょう。タデという名がついている和名の方がよいなと思います。たぶん、食草がクサイチゴで、間室にハート形の点刻のある種は別にいるのかもしれません。

ついでに撮った写真も載せておきます。





共に頭部の写真です。
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虫を調べる アミメアリ

2021-07-14 10:15:30 | 虫を調べる
この間からアミメアリという小さなアリをよく見かけます。今年の1月末に大和郡山市に引っ越ししてから、この付近にいるアリを調べてやろうと思い立ち、1種類ずつ詳しく調べています。これまでに、ルリアリトビイロケアリトビイロシワアリハリナガムネボソアリヒメアリクロヤマアリの6種類を調べてきました。今回はアミメアリです。



アミメアリは大きさが2~3mmのこんな小さなアリです。これは6月30日に撮った写真です。これが本当にアミメアリなのかどうかを検索により調べていこうと思います。アリの検索にはいつものように、朝倉書店の「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いました。アミメアリはフタフシアリ亜科のアミメアリ属に属するのですが、検索表を使って、まず亜科の検索をしてみます。

①腹柄は2節(腹柄節と後腹柄節)からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な鋸歯の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②触角の挿入部は額葉によって多少なりとも覆われている;前伸腹節刺をもつものと持たないものがあるが、触角挿入部が裸出している種の場合は顕著な前伸腹節刺ある;複眼がある
③跗節末端の爪は単純;複眼の長径は大腮を除いた頭長の1/4以下;額葉は互いに離れる フタフシアリ亜科

検索表ではこの3つの項目を調べることで、フタフシアリ亜科であることが確かめられます。これを顕微鏡写真で確かめていきたいと思います。いつものように、検索の順ではなくて、写真別に各項目を調べていくことにします。



最初は全体像です。まず、アリと一緒にスケールを写して体長を測りました。腹部末端から腹部と腹柄節の境、腹柄節から頭部と胸部の境、それから頭盾の先端まで線を引き、ImageJの折れ線近似で測ったところ、2.9 mmになりました。図鑑では2.5 mmとなっていたのですが、まあ近い値になりました。この写真からは腹柄は腹柄節と後腹柄節の2節からなることが分かります。



この写真では複眼があることを見ます。実は②の対抗する項目にはヒメサスライアリ亜科という複眼を欠くアリがあるようです。それから複眼の長さを図りました。頭盾の先端まで測った頭部の長さの1/4.4になりました。1/4よりは小さいのでこの項目もOKでしょう。



それから、いつも写し忘れる腹部末端も写しておきました。特に異常はないので、①はOKと思われます。



これは顔面の拡大ですが、頭盾の前縁側方に特に突起は見られません。これはクビレハリアリ亜科を除外する項目です。また、触角挿入口はほんのわずかですが、額葉により覆われています。その額葉は互いに離れています。これで①と②はOKです。




最後は脚の先端の拡大ですが、爪に特に異常は見られません。これで、すべての項目を確かめたので、フタフシアリ亜科であることは確かだと思われます。

④触角は11~12節;触角棍棒部は2節以上からなる、あるいは不明瞭
⑤後腹柄節は腹部基部端に接続する;前伸腹節気門は前伸腹節後面にまでかかることはない
⑥前伸腹節刺は前方に向かって反り返らないか、あるいは前伸腹節に刺がない
⑦腹柄節の丘部が山型に隆起し、柄部と区別される;前伸腹節背側縁の前方に小突起はない;腹部腹面側方には隆起縁による輪郭はない
⑧触角棍棒部は3節以上からなる、あるいは不明瞭;触角は12節からなる(一部の種では11節)
⑨頭盾前縁に複数の小突起をもつ;額隆起縁がほとんど張り出さず、そのため触角挿入部が裸出する;触角は11節からなる アミメアリ属

次は属の検索です。赤字は確かめることを忘れた事項です。でも、1項目に複数の事項が含まれているのでたぶん大丈夫でしょう。これも写真で確かめていきます。



触角は11節で、棍棒部は先端3節でした。⑧がちょっとややこしいのですが、一部の例外を除いて12節と書かれていますが、アミメアリはその例外に含まれます。



⑤は腹部の背面寄りに接続するシリアゲアリ属を除く項目です。このアリでは特にそのように見えません。また、⑥は前伸腹節刺が前方に向かって反りかえるカクバラアリ属を除外する項目です。



これは前伸腹節を後方から見た写真ですが、前伸腹節気門は前伸腹節後面にかかっていません。また、前伸腹節背側の縁に突起はありません。これで⑤と⑦はOKです。



腹柄節は丘部が山型に隆起しています。これは腹柄節が筒状のカドフシアリ属を除外する項目です。



これは頭盾を拡大した写真です。この写真だけ、生物顕微鏡の20倍の対物レンズを用いました。頭盾前縁には矢印で示したような小突起があります。これはアミメアリの特徴ですが、写真には写しずらかったです。



これは額隆起線を撮ったものです。あまり隆起していませんが、はっきりと見てとれます。この隆起線が張り出していないため、触角挿入部がよく見えています。



この写真は触角挿入部を写したのものですが、非常によく見えています。アリの種類によっては額隆起線が張り出し、額葉となるため、触角挿入部が見えにくい種があります。これでほとんどすべて項目を確かめたので、アミメアリ属であることが確かめられました。

最後は種の検索です。日本産アミメアリ属にはアミメアリとトゲムネアミメアリという2種が記録されています。ただし、後者は八重山諸島と西表島で見られるアリなので、属が決まった時点でほとんどアミメアリとなるのですが、一応、調べておきます。

⑩前胸側縁部に突起はない;前伸腹節刺は長く、側方から見て先端は前伸腹節後端を越える;頭部と胸部は褐色から赤褐色、腹部は黒 アミメアリ

種の検索はこの1項目です。これも写真で見ていきます。



前胸側縁部には特に突起はありません。また、前伸腹節刺は長く、前伸腹節後端を越えています。色は書いてある通りです。ということで、無事にアミメアリになりました。生態写真を撮ると、頭部の網目模様と黒くて丸い腹部を持っているので比較的に分かりやすいアリです。
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ヤブガラシの花に来ていた虫

2021-07-05 20:00:52 | 虫を調べる
6月14日にヤブガラシの花に来ていたアリを捕まえようと花ごと採集してきたら、いろいろな虫がくっついていました。名前の分からないものも多いのですが、アリを調べるついでに顕微鏡写真を撮ったので、載せておきます。



最初はカメムシの幼虫のようですが、体長は1.1mmしかありません。どうやって調べたらよいのかも分からないので、あちこち撮影しておきました。



これは腹側からです。



そして、横からです。



複眼が変わっているので、拡大して写しておきました。



これはアザミウマです。後で撮影しようと思って置いていたら、ちょっと乾燥してしまいました。大きさは測らなかったのですが、たぶん、1 mm内外だと思います。「農作物のアザミウマ」の図版を見ると、キイロハナアザミウマ Thrips flavus辺りに似ていますが、黄色のアザミウマは多いので、よく分かりません。



これはカラフルなアザミウマです。体長は1.1 mmほど。翅がないので、幼虫のようです。腹端に管のようなものが付いているので、クダアザミウマの仲間です。これはネットで調べてみると、似たような写真が何枚も出ていました。アカメガシワクダアザミウマ Haplothrips brevitubusです。これかもしれません。アザミウマはハダニやアブラムシ類を食するので、生物農薬として用いられているようです。ついでなので、いろいろな写真を撮っておきました。



これは腹側からです。





頭部と腹端を生物顕微鏡に10倍の対物鏡を取り付けて撮りました。





これは透過照明を少し増やして撮ったものです。





さらに、対物鏡20倍で撮ってみました。触角がよく見えるようになりました。



最後は甲虫です。これは体長3.9 mmほど。たぶん、ドウガネサルハムシだと思います。これもいろいろと撮っておきました。



これは背側から。



これは顔面。何だかよく分かりませんが、「原色日本甲虫図鑑IV」のドウガネサルハムシの説明欄にある、「頭部は複眼上部に深く幅広い溝、頭頂中央部に浅い縦溝を有し・・・」という特徴などはよく分かります。



そして、これは触角と脚の跗節の写真です。サルハムシの仲間は跗節第3節が深くえぐれているので、それを撮っておきました。

いつも葉の上にいる虫を探しては写しているのですが、こんな昆虫採集も面白いですね。
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虫を調べる ハリナガムネボソアリ

2021-06-30 17:58:59 | 虫を調べる
6月14日に、咲き始めたばかりのヤブガラシの花に来ていたアリを調べてみました。



見つけたのはこんなアリです。残念ながら、ピントが合っていません。花ごと、チャック付きポリ袋に入れ、そのまま冷凍庫に入れていました。先日、冷凍庫から出してきて検索をしてみました。検索はいつもの「日本産アリ類図鑑」(朝倉書店、2014)に載っている検索表を用いました。検索の結果、フタフシアリ亜科のハリナガムネボソアリになりました。検索の過程を記録のために載せておこうと思います。

まずは、亜科の検索です。

①腹柄は2節(腹柄節と後腹柄節)からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な鋸歯の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②触角の挿入部は額葉によって多少なりとも覆われている;前伸腹節刺をもつものと持たないものがあるが、触角挿入部が裸出している種の場合は顕著な前伸腹節刺ある;複眼がある
跗節末端の爪は単純;複眼の長径は大腮を除いた頭長の1/4以下;額葉は互いに離れる フタフシアリ亜科

検索の結果、フタフシアリ亜科になったのですが、それには上の3つの項目を確かめる必要があります。これを写真で確かめていこうと思います。赤字で書いた項目は特に確かめなかったのですが、検索にはいくつかの項目があるのでたぶん、大丈夫だと思います。



最初は全体像です。この写真からは腹柄節が2節あり、複眼があることを見ます。体長は折れ線で近似して2.3 mmになりました。



これは顔面の写真ですが、これからは頭盾前縁側方に小突起がないことを見ます。この項目は小突起のあるクビレハリアリ亜科を除外する項目です。



この写真では触角挿入部が額葉に少し覆われているのがよく分かります。これは挿入部が露出しているヒメサスライ亜科、ムカシアリ亜科を除外する項目です。複眼の長径は測らなかったのですが、まぁ、1/4以下でしょう。ということで、フタフシアリ亜科に至る項目はほとんどすべてクリアしました。

次は属の検索です。これはなかなか大変です。

④触角は11~12節;触角棍棒部は2節以上からなる、あるいは不明瞭
⑤後腹柄節は腹部基部端に接続する;前伸腹節気門は前伸腹節後面にまでかかることはない
⑥前伸腹節刺は前方に向かって反り返らないか、あるいは前伸腹節に刺がない
⑦腹柄節の丘部が山型に隆起し、柄部と区別される;前伸腹節背側縁の前方に小突起はない;腹部腹面側方には隆起縁による輪郭はない
⑧触角棍棒部は3節以上からなる、あるいは不明瞭;触角は12節からなる(一部の種では11節)
⑨頭盾前縁に複数の小突起はない;額隆起縁は張り出し、触角挿入部は少なくとも部分的に隠される;触角は12節からなる
⑩頭盾前縁は大腮にかかるまで伸張することはない;触角収容溝はないか、あっても頭部後方角まで伸張しない
⑪大腮は通常の三角状
⑫触角棍棒部は3節からなる
⑬腹柄節後縁は側方から見てほぼ直線状;腹柄節後縁背部は突出しない
⑭頭部や胸部背面に体毛をもつ;後腹柄節は背面から見て幅は長さの1.5倍以下
⑮前伸腹節の後背部に1対の刺もしくは小歯状の突起を形成する;頭盾前縁中央の剛毛は対になる
⑯胸部を側方から見たとき、背方の輪郭は全体的に平らか、緩やかに弧を描くが、前中胸のみが明瞭に隆起することはない;働きアリは顕著な2型を示さない(通常単型、一部の種で多型のものがある)
⑰頭盾両側部は隆起線を形成しない;前伸腹節の気門は前伸腹節刺の先端から基部まえ引き延ばした線の前方に位置する;大腮は5~6歯をそなえ、歯は基部に向かうほど小さくなる
⑱頭盾中央に縦走する隆起線をもつ;触角は12節からなる(一種を除く) ムネボソアリ属

検索の結果、ムネボソアリ属になったのですが、それにはこの15項目を調べないといけません。先ほどと同様、赤字は確かめなかった項目。一方、青字はよく分からなかった項目で、後で触れます。これらも写真で確かめていこうと思います。



最初は触角についてで、触角は全部で12節。先端3節は太くなり、棍棒部を形成しています。



⑤の後腹柄節が腹部基部端に接続しているのは写真で分かりますが、これはシリアゲアリ属を除く項目です。腹柄節刺については後方にやや曲がった刺が明瞭にあります。これで⑥と⑮が確かめられました。⑭は写真を見るとすぐに分かります。最後の⑯はオオズアリ属を除く項目でこれも確かです。



前伸腹節気門の位置に関してですが、前伸腹節後面や刺付近にはなくて、それより前方にあります。これで、⑤と⑰はOKです。



⑦の腹柄節が丘部と柄部に分かれるかどうかは微妙です。実は、後で出てくる種の検索では分かれないという方になっています。でも、まぁ、いいでしょう。腹柄節後縁が直線状になっているかどうかはウメマツアリ属かどうかを調べる項目です。これは矢印で示すように特に問題ありません。



頭盾前縁に異常がないかどうかですが、特に異常はありません。それで⑨と⑩はOKです。また、大腮は三角状です。⑮の頭盾前縁中央の剛毛と大腮の歯については、この写真ではちょっとはっきりしないので、後で拡大して見てみます。頭盾中央の隆起線は矢印で示すように確かにあります。⑯の頭盾両側部は隆起線はシワアリ属の特徴ですが、これは写真のようにありません。



先ほどの写真で頭盾と大腮を拡大してみました。頭盾前縁中央の剛毛ですが、白矢印で示したように両側に対になってあるようですが、片方は毛穴だけが開いています。代わりに中央に1本剛毛(黄矢印)があります。このままだと前縁中央に3本あることになります。この辺はよく分かりませんでした。また、大腮の歯数はこの写真では分かりませんでした。



額隆起縁は矢印のように明確にあり、触角挿入部を覆っています。



後腹柄節の長さと幅の比はこの写真では測れませんが、たぶん、大丈夫でしょう。ということで、怪しいところも若干あるのですが、一応、ムネボソアリ属になりました。

最後は種の検索です。

⑲触角は12節からなる;背方から見て前胸前側縁は角張らず、丸みを帯びる
⑳前伸腹節刺は刺状、短い針状、または長い針状であるが、基部は広がらず通常の形態
㉑前伸腹節刺は非常に長く針状で、長さは基部の幅の2.5倍以上
㉒頭部と胸部は褐色から黒色
㉓腹柄節の前縁は側方から見てほぼ直線状で、柄部と丘部の区分は不明瞭 ハリナガムネボソアリ

種の検索はこの5項目なのですが、それほど難しい項目はなくてたぶん、大丈夫でしょう。



最初は触角です。これについては上に述べました。



前胸前側縁は角張っていないので、これも大丈夫でしょう。



前伸腹節刺は基部が太くなくて長いので、⑳と㉑は大丈夫でしょう。また、腹柄節の前縁も直線的というのもおおよそ分かります。



最後は体色に関するもので、全体に黒色なので、これもOKでしょう。ということで、検索の結果、ハリナガムネボソアリになりました。「日本産アリ類図鑑」によると、体長は2 mmで、「裸地や草地、河川敷などの乾燥した場所に生息し、地表活動を行う。」とのことです。また、全国的に分布しているようです。

検索に使わなかった写真もついでに載せておきます。





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虫を調べる ヒメアリ

2021-06-28 17:32:49 | 虫を調べる
6月14日に咲き始めたヤブガラシの花を撮影していたら、小さなアリが来ているのに気が付きました。



こんなアリです。花ごと採集してきて、ずっと冷凍庫にしまっていました。先日、その花を出してきて解凍すると、小さなアリが3匹ほど採集できていました。早速、いつもの「日本産アリ類図鑑」(朝倉書店)に載っている検索表を用いて調べてみました。とにかく、小さいので検索も大変だったのですが、撮影の方もなかなか大変でした。何とか検索ができて、フタフシアリ亜科のヒメアリらしいことが分かりました。一応、記録として残しておこうと思います。

①腹柄は2節(腹柄節と後腹柄節)からなる;腹部末端の背板は単純で、微小な鋸歯の列はない;頭盾前縁側方に小突起はない
②触角の挿入部は額葉によって多少なりとも覆われている;前伸腹節刺をもつものと持たないものがあるが、触角挿入部が裸出している種の場合は顕著な前伸腹節刺ある;複眼がある
跗節末端の爪は単純;複眼の長径は大腮を除いた頭長の1/4以下;額葉は互いに離れる  フタフシアリ亜科

まずは亜科の検索です。検索の結果、フタフシアリ亜科になったので、その検索過程を写真で確かめていこうと思います。ただし、赤字は確かめなかったり、写真を撮らなかった項目です。1つの検索項目にいくつかの項目が入っているので、たぶん、それらがなくても大丈夫だと思っています。



最初は腹柄が腹柄節と後腹柄節の2節からなるというので、これは分かりやすいです。体長は折れ線で近似して、全体で1.7 mmになりました。



矢印で示したのが頭盾なのですが、その前縁側方に突起はないのは確かです。これはクビレハリアリ亜科を除外する項目です。



次は触角の基部が額葉に覆われていて、それが離れていること。さらに、複眼があって、その長径が頭長の1/4以下であるという点です。額葉は矢印で示した部分で、確かに僅かですが、触角基部がその下にあります。複眼も書いてある通りなので、これで、フタフシアリ亜科になりました。

次は属の検索です。これはなかなか大変でした。

④触角は11~12節;触角棍棒部は2節以上からなる、あるいは不明瞭
⑤後腹柄節は腹部基部端に接続する;前伸腹節気門は前伸腹節後面にまでかかることはない
⑥前伸腹節刺は前方に向かって反り返らないか、あるいは前伸腹節に刺がない
⑦腹柄節の丘部が山型に隆起し、柄部と区別される;前伸腹節背側縁の前方に小突起はない;腹部腹面側方には隆起縁による輪郭はない
⑧触角棍棒部は3節以上からなる、あるいは不明瞭;触角は12節からなる(一部の種では11節)
⑨頭盾前縁に複数の小突起はない;額隆起縁は張り出し、触角挿入部は少なくとも部分的に隠される;触角は12節からなる
⑩頭盾前縁は大腮にかかるまで伸張することはない;触角収容溝はないか、あっても頭部後方角まで伸張しない
⑪大腮は通常の三角状
⑫触角棍棒部は3節からなる
⑬腹柄節後縁は側方から見てほぼ直線状;腹柄節後縁背部は突出しない
⑭頭部や胸部背面に体毛をもつ;後腹柄節は背面から見て幅は長さの1.5倍以下
⑮前伸腹節の後背部は角張ることはあっても、棘もしくは小歯状の突起を形成することはない;頭盾前縁中央に1本の剛毛をもつ ヒメアリ属

この12項目を調べた結果、ヒメアリ属になりました。これも写真で確かめていきたいと思います。ただ、検索の順ではなくて、写真ごとに関連する項目をまとめていきます。なお、これも写真を撮らなかった項目は赤字で示してあります。



最初は触角についてです。この写真では触角が全部で12節あり、先端3節は太くなって棍棒部を形成していることを見ます。



これは前伸腹節と腹柄節あたりを拡大したものですが、後腹柄節が腹部の基部端についていること、前伸腹節後面に刺や小突起などがないことを見ます。



この写真は前伸腹節を後方から見たところですが、前伸腹節気門が後面にかかっていないことを確かめます。



これは腹柄をさらに拡大したものですが、腹柄節が丘部と柄部に分けることができ、さらに、矢印で示した腹柄節後縁はほぼ直線状になることを確かめます。後者は腹柄節後縁の先端が突き出て、中間が凹むウメマツアリ属を除外する項目です。



この項目は額葉があるという亜科の検索の②と同様の内容です。これは触角基部が露出するアミメアリ属を除外する項目です。実は②ではアミメアリ属を除くという注釈が載っていました。



これは頭盾に関する検索です。頭盾前縁に複数の小突起を持つのはアミメアリ属で、前縁が大腮にかかるほど伸長するのはミソガシラアリ属で、いずれも該当しません。



これは頭盾前縁中央から一本の剛毛が出るという項目です。アリ自体が小さいので、写真になかなか撮れなかった項目です。矢印の部分がその剛毛だと思います。これが1本のものと2本が対になって出る属があります。ヒメアリ属は1本なのですが、オオズアリ属やシワアリ属など、多くの属では2本出ています。



これは大腮を写したもので、確かに三角状です。これは大腮がサーベル状のイバリアリ属を除く項目です。大腮の歯は4個までは数えられます。



最後は頭部や胸部背面に毛が生えていることですが、これはハダカアリ属という毛のない属を除外する項目です。ということで、順不同にはなってしまいましたが、ヒメアリ属までたどり着きました。検索をしていて、前伸腹節後面に刺や突起がなく、滑らかになっている点が特徴ではないかと思いました。

最後は種の検索です。

⑯複眼はより大きく、5個以上の個眼からなる;前伸腹節を側方から見たとき、後背縁は丸く、明瞭に角張らない
⑰頭部と胸部の表面に彫刻はなく、滑らかで光沢がある
⑱前伸腹節にしわはない
⑲頭部、胸部は黄色から黄褐色
⑳腹部は胸部より明らかに暗色で褐色から黒褐色;腹部第1節の側方に紋はない ヒメアリ

この5項目を確かめることでヒメアリであることが確かめられます。



これは色に関する⑲と⑳の項目で、書いてある通りだと思いました。色違いのクロヒメアリやフタイロヒメアリ、キイロヒメアリ、それに斑紋を持つフタモンヒメアリなどがいるようです。



これは前伸腹節の形状に関するもので、後面が丸く角張らず、また、しわがないことを見ます。これは後面が角張るカドヒメアリ、しわのあるミゾヒメアリ、シワヒメアリを除外する項目です。



そして、最後は複眼が大きくて個眼が5つ以上あり、さらに、全体に光沢があるというものです。これは先ほど出たカドヒメアリの複眼が小さく個眼が1~2個しかないこと、また、細かい点刻があって光沢のないイエヒメアリを除外する項目です。

ということで、大変ややこしかったのですが、とりあえず、ヒメアリに到達しました。図鑑によると、ヒメアリは体長1.5 mm、頭部と胸部は黄色から黄褐色、腹部は褐色から黒褐色、林縁から草地にかけて生息し、西南日本では最普通種の一つだそうです。
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