社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「大切な人を亡くした子どもたちを支える 35の方法」 ダギーセンター (日本語版)2005

2010-12-22 11:05:12 | その他
言わずと知れた、全米遺児遺族のためのグリーフサポートセンターからの出版物。
その取り組みの中で得られた、子どもの悲嘆作業を支援する方法について紹介されている。
ちょっとした事例も提示されており、どういう状況で、どのような反応が出るのか。そしてその時に、大人(専門家も含む)はどのように対応すべきかについて述べられている。
グリーフケアを実践する方にとっては、必須の書物であろう。

引用
「正直でいよう。子どもに決してうそをつかないで」…おとなは子どもを守りたいと思うので、つらいことを話すのは大変難しいことです。しかし理解しにくい話を子どもに話すことはおとなとしての「責任」のひとつです。

「亡くなった人について話す機会を積極的につくろう」…亡くなった人を思い出すことは傷ついた心を癒すために大切な過程です。思い出す、ということは単純になくなった人についての話をすることです。(中略)亡くなった人の名前を口にすることは、その人に対する感情を分かちあってもらってもいいのだと子どもたちに伝えるひとつの方法です。亡くなった人について話すことはタブーではないと子どもたちに伝えることになります。

「健康に注意し、規則正しく食事をし、水を充分飲むように促そう」…深く悲しむことは、精神的に参ってしまうだけではなく、体力をも消耗してしまいます子どももおとなも深く悲しむグリーフの過程で体力的にも精神的にもエネルギーを出し切って、脱水状態になります。

「子どもに必要な助けを積極的に探そう」…軽いうつ状態、不安、行動上の問題といったことは、身近な人の死を経験したあとの子どもにはよくあることです。(中略)以下のようなサインが続き、日常生活に影響があれば、医療機関やカウンセラーに見てもらうべきでしょう。
・健康的な生活の妨げになるほど、ひどく落ち込みいらいらする
・何事にも興味や喜びがなくなる
・悲しみで眠れない
・食欲が増す、あるいは減退する
・頭痛、胃痛、その他の身体的症状
・倦怠感やエネルギーがなくなる
・死についてばかり考えたり、誰かの死を望んだり、自殺についての話をする
・集中できない
・社会からの引きこもり
とくに死を経験したあと6カ月くらいの深い悲しみのなかにある間は、一見うつのように周囲から見えたり感じられたりするのだ、ということを覚えておいてください。

「限度やルールを定め、子どもたちに守らせよう」…深く悲しんでいる子どもにとっては日常生活において、限度やルールを決めることは助けになります。(中略)不安定な時期に安定感をもたらすことが大切だ、ということです。



大きくうなずく部分や、「そういう弊害もあるのだ」と考えさせられる部分など、大切なエッセンスを知ることができた。
問題は、これをいかに業務に組み込んでいくかだ。
遺族ケアが未だに一般的ではない日本では、医療機関や社会福祉施設(機関)において、患者/利用者が生存している間からの延長として、家族支援のひとつとして、遺族へのグリーフケアは十分に行われていない。

多くのひとが適切な時期に、適切なケアを受けれるためには、受け皿を広げるしかないのだが…。


大切な人を亡くした子どもたちを支える35の方法
ダギーセンター
梨の木舎




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