社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「10%科学者や20%実践家がいてもよい-協働的科学者-実践家モデル」平井啓(2009)

2016-04-27 13:28:14 | 心理学
『Communication-design 2 2009年3月』大阪大学コミュニケーションデザイン・センター

臨床と研究と。各々を得意とするメンバーがチームで研究活動をすることの可能性について、自身の研究活動形態を事例に紹介している。

引用
・異なる職種がそれぞれの専門性を発揮し、うまくコミュニケーションをとることによって、(中略)患者や家族と学問の世界をつなぐネットーワークのノードになる可能性があると考えられる。

・負担をかけすぎないネットワーク作り
 ⇒・日常的に情報交換をするだけではなく、意思決定が生じる場合にはミーティングを開催し、できるだけ多くのメンバーのコンセンサスを得るようにしている。
   同時にそれぞれのメンバーの役割分担を明確にして、必要な意思決定にのみ参加できるようにしてできるだけ負担が生じないようにしている。
  ・「メンバーはお互い全てを理解し合わないといけない」といったチームの凝縮性を高めるようなことは時にメンバーに対して多くの負担を強いることになり、チームの機能的側
   面を制限してしまうことがある。そこで、連携のためのネットワークやチームでは、お互いが全てをわかりあう必要もないことを念頭に置いて置かなければならない。
   つまり、ネットワーク全体の機能をどのように「デザイン」していくかが重要である。



 一人ひとりが有している知識や経験には限界がある。
 一人ひとりが物事に取り組める時間にも限界がある。
 
 実践家であり研究者。研究者であり実践家。
 いろんなスタイルがあっていい。そう実感した。
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「悲嘆は病気か?DSM-5と悲嘆の医学化への懸念」坂口幸弘(2013)

2016-04-09 10:42:51 | 心理学
『老年社会科学』35(3)2013

 米国精神医学会が定める精神疾患に関するガイドライン(DMS)の改訂内容と、それに起因する悲嘆の医学化への懸念、悲嘆を抱える人達への支援について論じている。

引用
・DMS-Ⅳ-TRでは、大うつ病のエピソード(MDE)の診断基準において、「死別除外基準」とよばれる項目が設定されていた。(中略)今回改訂されたDSM-5では、この「死別除外基準」が削除された。米国精神医学界によると、「死別除外基準」が削除されることで、MDEが見落とされることを防ぎ、適切な治療を受けられる機会を患者に提供することができるという。
 *「死別除外基準」→死別から2ヶ月未満の人は原則としてMDEの診断が下されない。

・死別からの期間に関係なく、医師は悲嘆反応とMDEの症状を慎重に見極める必要があり、その技量がいままで以上に求められることになる。
・そもそも死別に対する悲嘆は一般的には正常反応であり、ビリーブメントケア自体は過度に医学化されるべきではない。(中略)あえてケアという言葉を使わずとも、悲しみにくれる人の気持ちに寄り添い、支えるという機能を、われわれの社会は有してきたし、いまも失われたわけではない。しかし、その機能が低下しつつあるなか、外部の第三者に委ねたいというニーズが顕在化しているようにも思われる。


 医学が発達し、これまで見落とされていた様々な事柄に「診断」がつき、適切な治療が施され、多くの恩恵を受けてきている。
しかし一方で、その診断基準が医療者と患者のコミュニケーションの阻害要因になりうることもある。安易に頼らず、向き合う姿勢が必要なんだと考えさせられた。
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