社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「病院の図書室‐病院図書室と患者図書室、そしてその先へ」山口直比古(2016)

2022-09-29 14:56:10 | 図書館学

『情報の科学と技術』66巻9号

病院に配置されている図書室の役割について、対象者別ある2種類に概説している。地域にある「公共図書館」とは異なる図書館の、その役割を知ることができる。

 

引用

・病院には医学情報を提供する図書室が二種類ある。一つは医学図書室とでもいうべき性格のもので、医師や看護師などの医療関係者や病院職員のための、医学・医療情報を提供する図書室である。もう一つは患者図書室と呼ばれるもので、病院内の外来受付などの近くにあり、患者やその家族、一般市民向けに医療・健康情報を提供する図書室である。

・患者図書室の役割は、患者の知る権利を保障し、情報の面から患者の自己決定を支援することである。

・病院や図書館には様々な人々が集まるが、病院(病気)と図書館という二つのキーワードの交わるところに、司書という仕事の新しい姿が見えてくる。

 

 私は産前に長期間入院をしていたが、そこでは隔週でワゴンを本に入れ、病室を訪問してくれる「図書貸し出しサービス」があった。おそらくボランティアさんが担っていたと思われるが、本を探している時間、担当の人と話している時間は、「患者」ではない日常を感じられるとても大切な時間であった。とても退屈で不安な入院生活を支えてくれた、欠かせないサービスであった。本はいわゆる「学習」のためのツールにとどまらず、「娯楽」をもたらしてくれるツールでもある。まちの中にある「公共図書館」のみならず、病院内にある図書室(もしくは移動図書サービス)にも、もっともっと期待できることがあると感じている。

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「高齢者介護施設におけるケアの質の認識と職員間の情報共有との因果関係」山口生史(2018)

2022-09-13 14:29:02 | その他

『日本コミュニケーション学会』Vol.46 No.2,2018

 仕事の質と組織内職員間の情報共有との関係について、質問紙調査を通して探っている。特に、「情報共有の正確性」と「情報共有のタイミング」に焦点を当てている。

 

引用

・(先行研究より引用)自己効力感が向上した従業員は、その認識が低下した従業員よりパフォーマンスが上がっていた。

・仕事の質は、組織全体のあらゆる職員の連携と協働で維持され、向上するものである。

・情報を得ていないとか、伝達されるべく情報に気づいていないという状態は、情報の循環、すなわち情報共有が十分になされていないということである。

・情報共有とは、組織内の各グループ(部署やチーム)間や職員間で隠ぺいすることなく交換し、情報を組織内でとどこおりなく循環させることといえるだろう。

・(調査結果からの考察)高齢者介護施設内全体の職員間で、施設内で起こった感染症などの緊急事態、事故、ヒヤリ・ハットの情報が正確に共有されていると施設の職員が認識しているほど、彼らは自分の施設のケアの質が良好であると認識していた。

 

職員間のコミュニケーションが円滑に行われていると、ケアの提供も円滑に行われ、そしてさらに複雑な(難しい)ケアの実現にも前向きに取り組める。これは、私が介護施設に勤務しているなかで、痛感していることである。しかし残念ながら、今はそれが「できていない」という状況からの逆説的な痛感である。

私は以前、医療機関に勤務していたが、それはたまたまであったのか、多職種で構成されているにも関わらず、コミュニケーションがとても上手に取れていて、「初めてのケース」で「大丈夫かな。対応できるかな」と不安があっても、少しづつではあったが支援がうまく続いていた。しかし介護施設では、同じ職種が多いチームであるにも関わらず、「理解」「共感」「納得」がどうも円滑にはいっていない。同じ職種がゆえに、「言わなくても分かるだろうから、いちいち言わない」ということなのか、「そこまで言わないと分からないの?」ということなのか。はっきりとは見えてこないが、どうやら「暗黙の了解の域」が各々違うのに、同じ職種であるがゆえに、「わかっているはず」というフィルターは、各々持ってしまっているからではないか?と本論文を通して、気づいた。

コミュニケーションの在り方で、仕事の捉え方、仕事の質向上との関連性などに気づくことができ、今の私には新鮮な論文であった。

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「ケアラー専門職の心のありよう‐仕事の介護と親の介護の両立について‐」岩井佑佳音、秋山恵美子(2022)

2022-09-08 08:22:30 | 社会福祉学

『介護福祉士』2022.3 No.27 

職業として介護に従事している人が、身内の介護も両立する必要になったとき、その心の在り方はどのようなものか。そして必要な支援は何か。

これらを明確にするために、質問紙調査を通してまとめている。

 

引用

・(調査結果より)「仕事の介護と親の介護は違う」「親には感情的になってしまう」

・ケアラー専門職が親の介護への責任感から解放されることの重要性、親の介護で追い詰められないようにするための精神的支援及び仕事と介護の両立支援研修の場の必要性が示唆された。

 

労働人口が減少する中、介護離職をいかに減らしていくのかが、現在のそしてこの先何十年も続く我が国の課題であろう。そのために入所施設を増やしていくことが政府主導で進められているが、そもそも介護従事者が少ないことが無視されていると、福祉現場で働く知人らと怒りやら飽きれるやらで、その政策を見ている。そのすっぽりと抜けている部分に焦点をあて、そして声を出していこうとしているのが本論文である。

調査結果には自由回答もあり、そのコメントは全く当然の主張であり、もっともっとフォーカスされるべきものであると強く思った。

保育士をしている友人が、自分の子育てと保育士という仕事のバランスにとても苦労しているが、介護職は終わりが見えにくい介護との両立であるため、もっと苦しいものかもしれない。多くの人の声が、きちんと届くことを切に願う。

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