社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「終末期医療における在宅療養の課題」杉琴さやこ、古賀友之、西垣千春

2010-05-28 10:03:24 | その他
「社会医学研究」第27巻1号(2009)

在宅療養(介護)の後に、在宅もしくは病院で看取りを経験した家族に対する、アンケート及びインタビュー調査。
在宅療養における課題、ソーシャルワーカーの役割が報告されている。

引用
・在宅での看取りを経験した家族⇒病院での看取りを経験した家族よりも、主介護者以外にも介護の担い手(ヘルパー、他の家族等)が存在していた割合が高かった。
・在宅介護中の主介護者の精神的な支え⇒在宅、病院での看取りともに、「家族」が高値であった。
・「緩和医療」についての理解が、医療者が想像してるよりも浸透していない状況が浮かび上がった
・患者死後の家族の精神状態について⇒病院での看取りを経験した家族のほうが、安定している様子が浮かび上がった。


どの報告もうなづける調査結果であり、考察であった。
なかでも、在宅での看取りを経験した家族のケアについては、ソーシャルワーカーが継続してその役割を果すべきだという指摘があり、共感を覚えた。
しかしその役割は、どのように、いつまで、どのような形で・・という具体的な指摘がなかったのが少し残念であった。
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「Grief Counseling&Grief Therapy 」 その②

2010-05-26 10:49:54 | 洋書
ビリーブメントケアをグループで行うためのガイダンスについても書かれている。
何を目的とするか、どのように構成し、運営していくかなど、グループワーク全般に適応できる内容であった。

グループカウンセリングのガイダンス
1.グループの形態を選ぶ
 ①目的…感情のサポートか、教育を主目的にするかなど
 ②構成…オープンかクローズドか(誰でもいつでも参加OKとするか否か)、期間をどのように設定するか
 ③計画…ミーティングの回数、時間、グループの規模、場所の設定や掛かる費用のについての検討など
2.参加者をあらかじめ選別しておく…どのような状態で愛する人を亡くしたかについて、類似した経験を持つ者同士のほうが効果が得やすい。
3.グループに参加することで、期待できる効果を明らかにする
4.ルールを設定する…守秘義務など
5.どのようなリーダーシップを取るのかをきめる…参加者が主体となるか、専門家がある程度誘導するのか…など
6.人間の内面のダイナミクスを理解する(Understand Interpersonal Dynamics)
 …多くの人は、自分はこのグループに適しているのか、必要とされているのかと不安になる。人間はそういった要素を持っているということを理解する。
7.崩壊的な参加者を有効に扱う(Handle Disruptive Behaviors Effectivety)
 …「私の喪失は他の誰のものよりも大きい」と発言する参加者に対して(もしくはそういう発言をする参加者がいるグループに対して)は、「どの人の喪失も、このグループには大切」「比較する喪失は存在しない(どれも一番大切で大きい)」と対応する。


人間の内面についての理解が必要…これはもっともであるが、一番難しいと感じた。
「理解すること=スムーズに運営すること」の並走には、専門家としての高いスキルが求められるだろう。
ビリーブメントケアを定期的に運営し、そこにソーシャルワーカーが関わっている組織もある。
いわゆる「兼務」が多いが、それは「看取り」から継続しての「ビリーブメントケア」が望ましいからかもしれない。
人数の問題以上に、ソーシャルワーカーに求められるスキルの高さを感じる。



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『米国ミシガン大学メディカルセンターを拠点とした在宅認知症高齢者の緩和ケアに関する研修報告』

2010-05-21 06:43:22 | 看護学
安藤千晶・亀井智子 「聖路加看護大学紀要」No.32 2006.3

筆者らが参加した、米国医療機関での研修報告。
米国の医療制度についても簡単な説明があり、読みやすい。
患者参加の医療体制の在り方や、学際的なチームアプローチの現状等、わかりやすくまとめられている。

新規受診患者アセスメント
…医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー等の各職種が、アセスメント前後にカンファレンスルームに集まり、情報の共有化を図る。その後、各々がケアプラン作成を患者の同意を得ながら行う。
利点→①患者中心であるため、患者も積極的に治療に参加できる ②各専門職の時間の節約になる

看護職が介護職に指示を出し、スーパーバイザー役となる
…米国におけるケアの概念は、医療的ケアとともに食事や入浴なども含んだ、全てのケアを包括するもの。それゆえに、この形態が成り立っているのではないか(筆者見解)。
…一方日本においては、介護職は入浴・排泄・食事等を行う独立した専門職として存在しているため、看護職とは「協働関係」という立ち位置の方が強い。少なくとも「指示関係」ではない。


カンファレンスの有効性は、多くの研究者が提案し、そして多くの実践者もまた、その必要性を痛感しているであろう。それでもなお、定期的に実施できない、負担に感じてしまうという問題は消えない。
人員を豊かにすれば、スタッフひとりひとりの時間も豊かになるだろう。
もしくは意識の問題か?情報の共有化と専門職間の「分かり合い」は、決して時間の無駄ではなく、より良いケアへの近道になるかもしれないということを、うまく浸透させていければいいのだけれど…。

看護職と介護職。日本では「嫁、娘」が担ってきた「介護労働」を社会化させ、質の向上を図るために専門化に努めてきた。
私は社会福祉の出身であるため、看護職の指示の下で介護職が業務を遂行する、ということに抵抗を感じる。それよりも、学際的なアプローチを行うために、介護職ならではのアプローチを今以上に提唱し、そのチカラをアピールして欲しいと思う。



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「Grief Counseling&Grief Therapy 」

2010-05-17 10:22:43 | 洋書
副題:A Handbook for the Mental Health Practitioner」 J.William Worden(1992)*心理学博士

和訳も出ているが、あえて原著にチャレンジ。
本書は第2版だが、現在は第4版まで刊行されている。
グリーフケアを行う実践者向けのハンドブック。
<目次>
1章:愛着、喪失、そして喪失を受け入れること
 愛着については、ボウルヴィの理論を紹介
2章:正常なグリーフの反応
3章:グリーフカウンセリング
 目標、グリーフカウンセリングを行う時期や場所、テクニックについて紹介
4章:異常なグリーフの反応

引用(英語は不得手のため、要所要所、並列にて…)
*喪失を受け入れるための4つの課題(P.10)
①喪失の事実を受け入れる
②To work Through To the Pain of Grief
③大切な人がいなくなった環境に慣れていくことに寂しさを覚える
④故人への感情の再構築と生きていくこと

*役に立つテクニック(P.52)
a) (故人を)思い出す言葉を使う
b) シンボルの活用…故人の写真や故人が生前に書いた手紙、衣服などを用いる。そのことで、故人について漠然と話をするのではなく、焦点を絞って話をすることができる
c)書く…遺族が故人に対して、考えや感情を表現するために手紙を書く
d)江を描く
e)ロールプレイ
f)認識の再構築
g)メモリーブックの作成
h)Directed imagery…目を閉じたり、空の椅子に故人の存在を思い浮かべたり、故人の存在を思い起こす

Bereavement…死別 grief…深い悲しみ、悲嘆
grief counseling…カウンセリング→個人の持つ悩みや不安など心理的な問題について話し合い、解決のために援助・助言を与えること
grief therapy…セラピー→治療、治療法


グリーフケアについてのテキストとしては、基本中の基本として扱われている書物と予想される。
それゆえに、見聞きしたことが多くあり、それらの再確認のために大いに役に立つ。
特に、カウンセリングとセラピーは、本書では別に扱われている箇所があり、自分の頭の整理には役にたった。
日本では同一視されがちなのは、担当する職種が決定的ではないからかもしれない。
ソーシャルワーカーが担い手として期待されるのであれば、カウンセリングのもつ意味合いに注意を払い、関心を深めていく必要があると感じた。

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「自死という生き方 覚悟して逝った哲学者」 須原一秀(2009)双葉新書

2010-05-04 03:50:06 | 哲学
「平常心で死を受け入れるということは本当に可能か?-それはどのようにして可能か?」ということを身を持って研究し、その結果として残された書物である。

一時期ブームを巻き起こした「完全自殺マニュアル」とは異なり、常に冷静にそして客観的に、自身の死を迎える日々までを綴り、その心境(心構え?)を報告している。

「自死」は良いことは悪いことか?という二者択一の視点ではなく、「死を受け入れるということは、どういうことか?」という視点から読むと、理解しやすい点が多い。

キューブラー・ロスの死の受容は、ガンなどの告知を受けて、その後に経過する受容的な精神の展開過程であると位置づけ、自身については「死の能動的・積極的受容」と位置づけている。

引用「死の能動的ないし積極的受容の理論を5段階説で提案する」
①「人生の全体の高」と「自分自身の高」についてのおおよその納得
②死についての体感としての知識
③「自分の死」に対しての主体性の確立
④キッカケ待ちとその意味づけ
⑤能動的行動


まず思ったのは、残された家族の感情について。生もしくは死は、果たして自身一人のものなのか?という疑問が終始あった。
最後の章に、息子さんが書かれた「思い」がある。戸惑い、悲しむことにはかわりないが、「父らしい生き方」であったと、綴っている。
きっと「普通の」もしかしたら「普通以上に」、家族としての対話や各々の価値観に深い理解を示しあっていた家族であったのだろうと思う。

自死の賛否にとどまらず、「死」を捉える「珍しい視点」と私は受け取った。

自死という生き方―覚悟して逝った哲学者
須原 一秀
双葉社

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