社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

『「制度の狭間」を支援するシステムとコミュニティソーシャルワーカーの機能-西東京市における実践の分析を通して-」熊田博喜

2016-12-14 22:19:02 | 社会福祉学
『ソーシャルワーク研究』Vol.41 No.1 2015

「制度の狭間」を支援するシステムと、その中で中心的な役割を果たしているコミュニティソーシャルワーカーの機能について、西東京市での取り組みを取り上げ、分析をしている。

引用
・「制度の狭間」とは、複合的な不利を抱えているがゆえに、制度や空間、家族・地域・職域等のさまざまな「つながり」から排除された人々の抱えるニーズの総称と規定することができる。
・地域福祉コーディネーターが受けた相談内容について、実績集計をみると、①地域活動への参加といった活動の接点を求めるもの、②当事者本人から現状の生活改善に関わるもの、③近隣トラブルや近隣住民への配慮・心配に関わるもの、といった3つの傾向をみて取ることができる。
・地域福祉コーディネーターの活動状況について、アセスメントは非常に重要な要素として挙げられている。


 「制度の狭間」と聞いて、近隣トラブルへの支援が中心と思っていたが、個人対個人への働きかけだけではなく、地域が抱える課題に焦点をあてながら、その構成員としての個人にアプローチをしているのだと読み取った。
 地域包括ケアに関する論文が、再び増えているように感じる。時代によって変わりゆく地域に合う支援のあり方を、再び模索している証なのだと思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「高齢者デイサービスにおける相談援助業務の特徴-既存臨床情報の質的分析を通して-」口村淳(2013)

2016-12-12 10:40:35 | 社会福祉学
『ソーシャルワーク研究』Vol.39 No.3

デイサービスにおける生活相談員の業務の特徴について、臨床情報を分析、整理し、検討をしている。

引用
・(本事例において分析対象とした)臨床情報一覧…①ケース記録②業務日誌③申し送りノート④フェースシート⑤通所介護計画⑥個別機能訓練計画⑦月例会議議事録
・デイサービスにおける生活相談員業務の特徴として、①利用者に関する情報の「中継役」になっている点、②在宅と施設の「橋渡し役」を担っている点、③安心・安全に過ごせる環境作りに関与している点、を見出すことができた。


 現場でうやむやになっている事柄について、その事柄を整理し、みんなに知ってもらいたいという姿勢で研究をされているんだろうな、と個人的に勝手な解釈をしている。この「現場第一」視点が個人的には好きで、この論文も一気に読みきった。
 介護職との兼任が多いとされるデイサービスの現場では、生活相談員は「新規依頼の窓口」「問い合わせの窓口」という業務に手一杯で、それのみが業務だと認識されがちであろう。しかしもう一歩踏む込んで考えていくと、それは施設と本人や家族、施設と在宅の大切なパイプ役であり、そのことによって、ニーズに合ったケアの維持、さらに向上がはかられることもある。
 認識されにくい立場にある相談援助職は他の領域にもあるだろう。頭の整理、気持ちの整理に一役買いそうな論文だと思った。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「特定妊婦に対するチーム・アプローチとソーシャルワーカーによる援助」井上健朗、藤井しのぶ(2015)

2016-12-11 11:20:53 | 社会福祉学
『ソーシャルワーク研究』Vol.40 No.4

 特定妊婦への関わりについて、多職種連携、チーム・アプローチの視点からの事例検討、ソーシャルワーカーへのインタビュー調査を通して考察している。
 妊娠後期、出産後の入院中、退院後といった時間の経過とともに、構成されるチームは異なる。それを丁寧に掘り下げているところが読み応えがあった。

引用
・特定妊婦とは…若年妊婦、経済的問題、妊娠葛藤(望まない妊娠など)、母子健康手帳未発行・遅れ、妊婦健康診査未受診、多胎、妊婦の心身の不調、その他
・インタビュー調査結果より…「出産が無事に終わったならば、かなり早期に医療機関を退院することになる。充分な支援機関を確保できない」「未受診妊婦は周囲との関係性が希薄な印象がある。インフォーマルなサポート体制が少ない」「病院に来るまでの経過で、いろいろと悩んでくると思うんです。あっけらかんとしている人は少ない」



 ハイリスク妊婦を受け入れるという役割を持つ総合周産期母子医療センター。ハイリスクは、母子の身体面は当然のこと、いわゆる飛び込み受診といった社会的な側面も指すという。高度な医療の提供をしながらも、母子を取り巻く社会環境の整備も求められる。場合によっては、3泊4日という超短期の入院期間中に介入をはじめ、地域に送り出さなければならないという。だからこそ、病院と地域の濃密な連携が必要であり、円滑な多職種協働が必須である。妊娠、出産、育児には、本当に多くの職種が関わっている/関わることができるのだと思った。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「精神科未受診者への地域生活支援-リスクと自由のはざまからー」芦沢茂喜(2013)

2016-12-10 10:44:14 | 社会福祉学
『ソーシャルワーク研究』Vol.38 No.4

 保健所に所属している精神保健福祉相談員さんによる論文。
精神科未受診者が「支援困難事例」とあがってしまい、その支援内容が「受診させるか/させないか」の二択になってしまうことへの疑問について、先行研究、事例研究を通して、支援のあり方を検討している。

引用
・(幻聴があるなど精神疾患が疑われ受診援助になりそうであったが、そうではない選択肢として)保健所の医師相談の利用を提案すると共に、問題行動ではなく、自覚している身体の不調、困りごとに焦点を当てることにした。(中略)精神科医の相談は、地域で対応に困っているAさんをどうにかするための相談ではなく、Aさんが困っていることを関係者と一緒に考えるための相談に繋がった。


 問題行動ではなく、その人が抱えている「困り事」に焦点を当てた関わり。これが本論文内での事例のキーポイントであろう。
精神障害者支援のみならず、多くの場合、支援者はわかりやすい答え、説明しやすい答えを求めたがるように思う。支援をするなかで、目的(ゴール)を持つことは当然のことであるが、それが誰のためのものなのか?を今一度考える必要があると感じた。
 「説明を理解できない」「病識がない」「家族理解力がない」「制度が不足している」などなど、支援をしにくい状況はどんな事例でもある。それを支援困難事例をしているのは支援者の方であり、支援を必要としている人に非はない(自傷他害がある場合は、そう悠長に言えないこともあるが)。
 
 ここまで時間を掛けて向きあってもらえた事例のAさんはラッキーだなと思う反面、どんな人も等しく、Aさんのような血の通った支援が受けられればと願う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『保健医療福祉チームにおける「看護師の役割」とは-臨床看護師が自覚する役割の内容分析』原本久美子(2016)

2016-12-03 21:43:45 | 看護学
『関西国際大学研究紀要 第17号』

 保健医療福祉チームにおいて、看護師が「看護師の役割が発揮できた」と実感した事柄について、質問紙調査を実施。看護師自身が専門性を持って果たす役割をどのように捉えているのかについて、確認している。

引用
・保健医療福祉チームにおける「看護師の役割」…調査結果から
 ⇒5つのカテゴリーが確認された
  Ⅰ.患者・家族の思いを、医療チームへ繋げる役割
  Ⅱ.侵襲性の強い治療や処置に対応し、患者のこころとからだを支える役割
  Ⅲ.看護師の見解を伝え、患者に適正な指示がでるよう図る役割
  Ⅳ.入院から退院に向け、医療の場から生活の場へ向かわしめる要の役割
  Ⅴ.その人らしい人生を全うできるよう患者と家族を支援する役割


 上記、看護師の役割は、表現こそ違いはあるものの、ソーシャルワーカーが果たしている役割に置き換えることができると思った。
その役割のなかで、どの側面を重点的に担当するのかによって、各々の持つ専門性の違いを知ることができるのだろう。
 
 多職種連携は、各々の役割の住み分けが難しいけれど、適切に理解し合うことができれば、相互理解が進み、自身の専門性をより深く知ることができる。互いに気づき合い、気づかせ合えることにつながるのだと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「チーム医療を実践している看護師が感じる連携・協働」吾妻知美・神谷美紀子・岡崎美晴・遠藤圭子(2013)

2016-12-02 22:25:17 | 看護学
『甲南女子大学紀要第7号 看護学・リハビリテーション学編』

チーム医療を実践している看護師が困難と感じている事柄:連携・協働:について、質問紙調査を通して確認をしている。
チーム医療に関する先行研究を丁寧に取り上げており、知識の整理にも活用できる。

引用
・調査結果より…【職種を越えて連携・協働する】が困難。具体的には「目標や価値観の一致が困難」「専門職間の壁を取り払うことが困難」など。
・チームの連携・協働とは、チームとして意思決定を行い、責任は全員で負い、情報がチームの中で共有され、仕事の重なりをもちながらも専門性を発揮することである。


 職種の違いから、目標や価値観の一致が困難という回答があったという。
 それが困難であることは至極当然のこと。でもそのすり合わせそのものに、手間暇を掛けられる職種がいたら?
 私はそれがソーシャルワーカーの専門性だろうと考えている。
 支援者そのものを社会資源と捉え、客観的に理解し、支援者が構成する集団を少し離れた場所から確認できる。
 
 連携や協働は、支援者であれば誰でも遂行している。質や量に差はあるだろうが…。
 そのちょっとしたズレや行き違いのような部分に気づき、切り込んでいけるのは、ソーシャルワーカーだと思っている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする