社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

『死者の力 津波被災地「霊的体験」の死生学』高橋原、堀江宗正(2021)岩波書店

2023-03-05 10:47:29 | その他

被災地住民と宗教者への聞き取りに基づいた、調査研究をまとめている。

宗教者が真摯に住民に寄り添う姿が読み取れる。

引用

・「悲しみや苦しみを一皮ずつ剥いていく」のが宗教者の役割であり、葬式の機能なのではないか。

・霊にまつわる相談に対する宮城県の宗教者たちの対応

 →宗教者の多くが「心霊現象」に対して合理的、あるいは心理学的に理解しているにもかかわらず、

 「幽霊を見た」「霊に取り憑かれている」といった相談者の主張を頭ごなしに否定せず、受容するというのが基本姿勢である。

・宗教者たちの傾聴活動は、生きている被災者への傾聴だけではなく、縁ある死者への傾聴でもある。

 

 調査に協力された宗教者の方々は、「霊は存在しない」という解釈をもちながらも、それを訴える相談者を丸ごと受け止める。

そしてそこから、ただひたすらに話を聞く。筆者も指摘しているように、医療者(心理職を含む)では決して提供できない、

「答えを出さない(何らかの診断や処方等を出さない)支援」は、宗教者の唯一無二の役割なのだと思う。

死者の存在によって生かされている、そのように感じる遺されたひとも多くいるであろう。そのことをそのままで良しとする、

そんな空気感?土壌?雰囲気?空間?…それが本当に大切なのだと思った。

 

 


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