社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「納得の老後 日欧在宅ケア探訪」村上紀美子(2014)岩波新書

2014-10-09 05:21:10 | その他
 諸外国の在宅ケアの概要、日本の最近の動向をまとめている。

引用
・オランダの新しい在宅ケアのビジネスモデル「ビュートゾロフ」⇒十分な教育を受けた看護師、介護士、リハビリ職による独立したチームが、自律的なマネジメントで柔軟にトータルケアを提供する。
・栃木県のNPO法人なじみ庵の方の言葉⇒会員のみなさんは、「年をとると、きょういくときょうようが大事」と言います。教育、教養ではなく、「今日、行くところがある」のきょういくと、「今日、用事がある」のきょうよう、です。
・年齢を重ねるとともに心と身体の動きがゆっくり穏やかになり、外出がおっくうになる分、住まいが重要となります。「自宅でも、誰かと同居でも、施設などでも、いま住んでいるところがベスト」と心得て、好きな家具や思い出の品や写真などを身近に負いておくと、心が活性化して活きいきと暮らせそうです。


「自宅=長く住み続けている家屋」とはなかなかいかない時代になっている。自分が生まれ、育ち、次世代を産み、育てた場所が自宅ではなく、いま居る場所を自宅と認識していくことは、相当に年数と勇気がいると考える。
仕事で知り合った80代の方は、70代に差し掛かり、長年住み慣れた「自宅」を売却し、高齢者向けのマンションに移り住んだ。「これまでのことはスッキリさせてここにきた。そうでもしないと、踏ん切りがつかない」と話された。それでも尚、昔の家や友人を思い出し、「あの頃は本当に良かった」としみじみ話される。今いるところが自宅で、ここがベストと心得ることは、当事者はもちろんのこと、周りの支援者にとっても難しいことかもしれない。

納得の老後――日欧在宅ケア探訪 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「グリーフを生きる人々へのケアのありかたー看護の立場からー」山智子、浅野美知恵

2014-10-03 14:13:43 | 看護学
『上智大学紀要』(2014)

グリーフとは、グリーフケアとは、その対象者は?等、基本に部分を整理し、それを踏まえて現代のグリーフケアの現状と課題を提示している。
多くの論文を紹介しているため、グリーフをめぐる各研究者の立ち位置を確認することができる。

引用
・グリーフを生きる人々へのケアは、レジリエンスを感化してしなやかに生きることを支援することである。
・レジリエンスは元々ストレスとともに物理学の用語であった。(中略)精神医学では、Bonannoが2004年に「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」と定義した。
・(エンゼルケアは)生から死に移行した瞬間、そこに立ち会う人々の心に寄り添う大事な時である。遺族が死を受け入れていくには長い年月を要するが、死別直後の時間もまた死の受容へのよりどころをつくる重要なときであり、まだ温もりののこる体にその人の存在を見て、触れて感じることのできる貴重な時である。


以前読んだ、死産を経験した母親を対象とした研究で、亡くなった我が子と対面した人、しなかった人を比較すると、対面をしなかった人のほうが悲嘆が複雑になったり、強く出ることが多いといったものがあった。
死をリアルなものとして受け止めるためには、その姿/存在を確認する時が必要ということであろう。

ケアの入り口はひとつではなく、皆同じものとは限らない。むしろ、全員が異なる入り口をもつであろう。
その入口が、生から死への移行の瞬間である人、亡くなった姿を見た時の人さまざまであろう。
人が持つ力を信じて、支援する側は、寄り添い、見守り、時には働きかけ…。
そういった時間を費やせるケア提供者側の環境もまた、重要と考える。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする