『ソーシャルワーク学会誌』第49号
中国におけるソーシャルワーク実践について、文献レビューを通して整理している。ソーシャルワーク実践は、その国における文化的背景を重んじて活動されているが、中国にルーツをもつ方がどのような感情、価値を持っているかを知るためも、とても有益な論文である。
引用
・中国人の生き方や日常生活の特徴に配慮した「中国型ソーシャルワークモデル」は確立されていない。
・中国では「助人自助」がソーシャルワークの理念として広く品式されている。(中略)その人が自力で問題解決できるように支援をするということを指す。
・ソーシャルワークの中国における定着を研究する際には、そこで生活をしている人々の生き方や日常活動に関わる実践現場で生じている葛藤や悩みと向き合い、それを吟味することが求められる。なぜなら、ソーシャルワークは人々の生活を支援することを目的としているが、人々の生活や生き方は、必ずしも理論やモデル通りにはならないからである。
・(文献レビューより)「クライエントはワーカーに依存し、ワーカーと友人になったと感じているため、援助関係を終わらせたくないと思うことがある」「中国人は家庭内の事情や問題を外部の人に見せることを嫌がっている」「家族、家庭の範囲を超えることにはあまり関心がなく、関りもしたくない。公共活動の参加意欲が低い」「多くの若い人たちも親を老人ホームに送ることを無能で不孝な行為とみなしているため、抵抗がある」
私が仕事で関わっている地域は、朝鮮半島にルーツを持つ方が多く住んでいる。また近年では、他の外国籍の方も多く移住してきている。その国によって、「文化的でその人らしい生活」の基準は異なっており、日本(人)のものさしで図ることの限界や恐ろしさを感じることもある。また一方では、日本の感覚では明らかに「ネグレクト」「経済的虐待」という行為であっても、それを理解してもらえないことの難しさも感じている。
多民族化していくであろう今後の日本社会で、偏った価値観で実践を進めないよう、本論文は貴重な文献レビューをまとめて、そして指摘していると感じた。
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