社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

対人援助の実践、人材育成、図書館学を中心に気まぐれに書物をあさり、覚え書きをかねて投稿中~

「ホスピス及び緩和ケアにおけるソーシャルワークガイドライン(試案)」 正司明美(2005)

2009-07-29 08:47:24 | 社会福祉学
『山口県立大学社会福祉学部紀要 第11号』

わが国のホスピス・緩和ケアにおけるソーシャルワークの調査研究等をベースとして、「ホスピス・緩和ケアにおけるソーシャルワークガイドライン」を作成し、報告している。
以前、本ブログでもご紹介させていただいた研究論文の、その後の報告である。

SWの価値・倫理を始め、どの場面でどのように業務を遂行し、どのような方法を用いるか…を具体的に提示している。
緩和ケア病棟等で業務開発を検討するうえでは、非常に参考になる論文だと考える。

引用「ホスピス・緩和ケアは、医療現場において最も生活モデルの視点が求められる領域である。言い換えれば、ソーシャルワークが最もその力を発揮できる領域なのである」


ホスピス・緩和ケア領域のみならず、SWとしての姿勢や役割…それをあらためて感じさせられた論文である。
「そうだよな」と納得させられる反面、ここまでの援助を担うには、かなりの経験とスキルが求められると考えさせられた。
正司氏も指摘していたが、職能レベルでの継続的な教育(サポート)の充実が求められるであろう。


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「緩和ケアにおける社会的痛みへのまなざし」 正司明美(2009) 『緩和ケア』Vol.19 No.4

2009-07-24 21:12:48 | 社会福祉学
雑誌の特集テーマに即した「ショートレビュー」。これまでの「社会的痛み」に関する論文等を踏まえ(紹介しつつ)、概念の説明や今後の展望を述べている。

本論文ではいくつかの先行研究が紹介されているが、「身体的な痛みを訴える患者に対し、薬による疼痛コントロールを試みたものの、改善が見えず。家庭や職場に不安要素があるのでは?ということでアプローチをしたところ、身体的痛みの改善があった」というような報告がいくつかあった。

他、気になる報告をいくつか引用
Saundersによると…「社会的な痛みとして、患者と家族の関係の問題を指摘している。…別離の準備や、過去の失敗の償い、仕事の完成、経済的問題、予期悲嘆、死後の悲嘆など」
田村里子によると…「社会的痛みとは、自己と社会との関係性に苦悩する痛みである。職業上の責任や役割喪失、家族における役割や経済的問題などの社会的役割が遂行されない苦悩」



本論文でも指摘されていたが、「社会的痛み」は目に見えにくく、言葉としても表現されにくいものである。だからこそ、「何がその人にとっての苦痛なのか」に常にアンテナを張り、表情やちょっとした言い回しを気にかけていく必要があるだろう。
これはソーシャルワーカーのみならず、すべての援助者に共通に求められる姿勢であると考える。

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「スピリチュアルケアへのガイド いのちを見まもる支援の実践」 窪寺俊之・井上ウィマラ

2009-07-21 21:04:56 | その他
出版社:青海社 2009

宗教家のお2人が、スピリチュアルの概論と実践方法をまとめている。
スピリチュアルの「目的」や「方法」が随所に、微妙なニュアンスの違いで登場しているので、少し読み進みにくい感もある。
「心理的痛み」との違いやスピリチュアルペインが発生?する要因等、具体的に提示されている点は分かりやすい。

引用
スピリチュアルケアとは?⇒
①「人生の危機に直面して、心の平静を乱し、生きる意味を失い、自分を支えるものが見つからない状態にある人に寄り添って、その人らしく生きられるように援助すること」
②「危機にある人が落ち着いて日常生活ができ、物事の判断ができ、希望をもって生きるための援助」
③「古い自己を手放して、新しい自己の枠組みが生まれ出てくる際の不安に寄り添い、見守る」

スピリチュアルケアの目的⇒『危機で見失った「人間らしさ」「自分らしさ」を患者や家族が再び獲得すること。

心理的・精神的ペインとは?⇒「人間関係を中心に起きるペイン」


まずは本書の前半部分のみ
「スピリチュアルケアとは?」というと、「霊的な痛み」とか「精神的な苦しみ」とか…文献によってその定義は様々であろう。わが国では注目され始め、現場にどう取り入れていくか…という試行錯誤の段階であるがゆえに、それがクリアにされていないのが現状であろう(その担い手は?専門職とするのか?なども含めて)。
その定義を私なりに解釈してみると、本書での定義…前述③を踏まえて以下のように落ち着いた(クライエントサイドの書き方になってしまいました

「病気、死など、これまでの自分では扱いきれない物事に対応するために、新しい立場の自分を作りあげるプロセスを支えてもらう。そして新しい立場の自分に心地よく感じた時に、スピリチュアルな痛みは軽快したと解釈できる」



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「社会的痛みとは何か」 細田満和子(2009) 『緩和ケア』Vol.19 No.4

2009-07-20 21:48:50 | その他
『緩和ケア』では、本号で「社会的痛み」の特集を組んでいる。
医学雑誌において「社会的」という言葉が取り上げられるようになったことに、流れの変化を感じる。

本論は、その特集のトップバッター。「社会的痛み」についての概論である。

引用
・「社会的痛み」とは?⇒(いくつかの資料を基に整理すれば)①療養環境、②家族との関係、③仕事など社会的役割、④経済的問題など

②…家族との関係において、疎外感や寂しさ、怒りや絶望といった気持ちから「痛み」が引き起こされる

・社会的痛みへの対処⇒ソーシャルワーカーは、人々の話を聴いて(counseling)、当事者の代弁(advocacy)を行うことを専門とする職業である。



「全人的ケア」を提供するためには、「社会的痛み」へのケアも必要である…という文句はよく耳にするようになったが、ふと「では社会的痛みとは?」と立ち止まった時に、「なんとなくは分かるが、うまく説明ができない」ということがあった。
終末期、緩和ケア、全人的医療、チーム医療、そして全人的ケア…様々な言葉が「当たり前のように」使われ、実践されている。今一度その意味を確認するために、大変役に立った。
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「在宅での看取りの質が遺族の悲嘆プロセスに及ぼす影響の社会心理学的研究」

2009-07-14 15:08:42 | その他
副題:-在宅で看取った遺族たちのUnfinished Taskへの取り組みと悲嘆の継続的変化に焦点をあてて-

佐藤貴之、木修(2007)『在宅医療助成 勇美記念財団 報告書』

在宅での看取りを経験した遺族に対して、副題を検証するために、セルフヘルプグループへの参与観察と、アンケート調査を実施している。
結果や考察が丁寧にまとめられているが、調査対象となったセルフヘルプグループから、看取りを支援した診療所への意見や、グループ活動への感想などが中心となっている印象を受ける。

筆者は別の研究において、『"見放され”感を抱きつつ「在宅療養」に移行した遺族が、長期にわたる医療従事者への怒りの感情や医療不信感を抱いている』ことを明らかにしたとのこと。それを踏まえて本研究では、「医療従事者との相互作用に対する評価が看取り中の心的プロセスに与える影響を検討する」としていたが、そこは読み取れなかった(私の理解力の問題かもしれない…



・bereavement=愛する人との死別
・死に臨む人の人生の質=Quality of death (死にゆく人の「死にがい」だけではなく、その死を看取る人の「死なれがい」も含む)


遺族ケアというと、箱モノとしての「ホスピス」で看取りを経験した人…を対象としたものが多く、本研究のように、「在宅」限定というのはとても画期的!と感じた。
遺族になる前の段階で、医療者と家族にどういった相互作用があり、それは遺族となった時の悲嘆にどういう影響を及ぼすのか?という点は、一番興味深いのだが、そこまでの言及は十分にはなかったと感じた。
援助する側に遺族(家族)は何を求めるのか…これからもっともっと掘り下げられていく(べき)テーマだろう。
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「在宅医療専門機関を利用した末期がん患者の在宅終末期医療の特徴と介護者(遺族)による評価

2009-07-12 14:38:44 | 医学
秋山明子、沼田久美子、三上洋 (2009)『緩和ケア』Vol.19 No.3

在宅医療専門機関を利用した介護者(遺族)の評価に対する調査報告(調査は無記名自計式)。
介護者(遺族)の評価による在宅療養のニーズ検討を行っている。

引用
調査結果:「家族はできるかぎりの介護ができた」「他の医療機関と連携できていた」の項目に関する在宅療養の評価が高いほど、看取り時の後悔が少ない。

・「これでよかった」という選択ができれば、介護者(遺族)の満足は高い⇒納得ができるだけの情報提供と、納得ができる決断をサポートすることが必要。


調査結果(=論文としての結論」は、「そうだろう」と思った。が、それ以上の「何か」が読み取れなかった。調査が量的なものであるがゆえに、「生の声」が拾いにくかったせいもあるのかもしれない。
調査そのものは、「がん」「非がん」の両者を対象としているものの、論文テーマが「がん」に限定されているせいもあり、「非がん」はその「対照」としての分析にとどまっている。
がん・終末期・在宅というテーマは多くあるが、がん以外の「非がん」を焦点としたものは少ない印象を受ける。それゆえに、是非とも、両者の「独自」のより詳しい結論が見たかった。




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「なぜ精神症状への対応が必要なのか」 大西秀樹 (2009)

2009-07-10 08:07:49 | 医学
『緩和ケア』Vol.19 No.3

がんを患う患者が、なぜ精神症状を併発させるのか?そしてどのような症状がおこり、どういった治療が望ましいのか…についての概要を述べている。
見開き1ページの論文なので、広く浅く…という感じで述べられている。

引用
・ある研究(アメリカ?)結果によると、がん患者の47%が精神医学的な診断基準を満たし、そのうち、68%が適応障害、13%がうつ病、8%がせん妄であるとのこと。
 ⇒「適応障害」と「うつ病」は何が違う?と今更ながら思ったので、おまけの情報として…適応障害=「明らかなストレス要因があり、それに対する直接的な反応として、精神的に具合が悪くなっている状態」、うつ病=「特にはっきりした体の病気もないのに、体も心も調子が悪く、日常生活に支障をきたす病気」

・「精神医学的な介入は患者の苦痛を軽減し、QOLを高め、がん治療における適切な意思決定を遂行し、介護する家族の負担を軽減するためにも必要である」
抗うつ薬の投薬状況が少ないという調査結果を踏まえて「医師・看護師の両者ともに見逃す可能性が高い」


「がんの告知」は「初期に見つかれば治る可能性が高い病気」と言われていても、やはりツラい知らせである。
本論文では、抗うつ薬の投薬状況について、終末期患者を対象としたものが紹介されていた。再発の可能性におびえながら、そして「告知」の場面を引きづりながらもなお、「生き続けている人」こそ、精神的ケアの対象者であろう。
親族で初期のがんを発症し、摘出手術を受けた人がいる。全国から患者が集まるほどの「有名な病院」で手術を受け、今も半年ごとに定期健診を受けている。少なからず精神的なダメージを受け、退院後の初診でその旨を主治医に伝えたところ、「精神科はあるけれども、うちのはおすすめできない。ご近所で探してみてはどうか?」というコメントだったとのこと。
大きな病院は、入院期間も短く、患者数が多いために継続的なケアは難しいだろう。退院後の外来患者に対しては尚更のことだ。
しかし、ガンを撃退してもなお、「晴れ晴れとして生活」が送れていない人のケアはどこが行うのだろうか?
医療技術が発達し、がんを撃退し生存する人も増えていくだろう。大病院と家庭医との連携、もしくは病院内での医療連携(ケアの連携)…様々な課題があると痛感した。



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NASW standards for Social Work Practice…

2009-07-08 08:05:47 | その他



全米SW協会が発行している、緩和ケア・終末期ケアにおけるSW実践についての手引き?を読んでいます

ネット検索の限りではまだ訳書は出版されていないようですが、何か情報をお持ちの方は是非教えてください。

語学力が不十分なので、手間取っています
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「より良い緩和ケア環境の確立のために何が必要か-オーストラリア・ビクトリア州の例から考える」

2009-07-08 07:56:37 | 社会福祉学
 岩本喜久子『緩和ケア』Vol.19 No.3 MAY 2009

オーストラリアにおける緩和ケアの提供について、金銭的な資源や構成職員、これまでの歴史や今後の課題を報告している。

引用
オーストラリアの緩和ケア団体は、公的援助80%+独自の資金20%で運営されており、20%の部分を賄えている団体は、いわゆる治療以外の援助も充実している。
団体のコメディカルの構成職員は特に定められておらず、管理者に一任されている。そこがアメリカとは違う点である。


・「医師・看護師では賄えないサービス」について、「家族のカウンセリング、死の前後のグリーフケア、子どもの心のケア、介護者のストレスなど」と記述あり。看護師では賄えないという認識があることに驚いた。
・「ホスピス・緩和ケアに関わった人たち(家族など)がサービス提供者たちから離れた時に紹介できる団体、サービスが存在すれば、continuum of care(継続的なケア)として社会にホスピス・緩和ケアの厚いサービスを伝えられるはず」という看護師のコメントあり。
⇒これこそが、わが国における「地域における切れ目のないケアの実現」であろう。わが国の緩和ケアの推進は、「治療の場」を拡大させる段階でとどまっており、諸外国と比べ、まだまだ遅れていると痛感した。


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「ホスピスにおける遺族ケア」 松島たつ子(2006)

2009-07-06 14:23:54 | 看護学
『家族看護』Vol.04 No.02

神奈川県にあるホスピスで実践をされた看護師による論文。
その理念、筆者が勤務しているホスピスの実践内容、わが国における今後の課題…を概観している。
遺族からの意見を取り入れつつ、様々な試みを思考錯誤で行っている様子が分かり、遺族ケアの奥深さ…難しさを痛感した。

引用
・ホスピス緩和ケア病棟における遺族ケアには標準化された方法はなく、各施設において独自の判断と工夫によって実施されているのが現状である(筆者も参考文献から引用している)
・今後の課題→ホスピス緩和ケア病棟における遺族ケアプログラムについては、時間や費用の問題、担当者の不足とともに、病棟でどこまで遺族ケアを行うのが適切かなど…
・入院中の家族の様子などからフォローが必要と思われる場合にはソーシャルワーカーが電話をする場合もあるが、1~2回で終了となっている。
・(遺族は「よい治療を受けさせてあげた」と思えれば、悲しみがいくらかは和らぐ…という前述の後)よいケアを受けられたと思えるように、療養生活への配慮や苦痛の緩和など、患者のケアをしっかりと行うことが基本となる。


 遺族ケアの期間の設定、役割分担、費用…現場スタッフがやりがいを感じ、必要性を感じていても、それを持続させるには、「思い」だけでは限界がある。
研究助成のなかで、患者会の運営や一般向けの講習会(緩和ケア/ホスピスケア普及のためのもの)等を推奨するものはあるが、それは一定期間のもののみで、以降は組織の持ち出しになる。
診療報酬に載せると、かえって対象者が限定されてしまったり、「加算を取ろう」と躍起にあり、「望まない人への押し売りの支援」も生まれてしまうかもしれない。どうすれば遺族ケアを推進し、定着させることができるのか…とても難しい

筆者は「家族の悲嘆のケアにおいて死別前から予防的にかかわる…」と表現している。悲嘆は「家族の死」から始まるものではないと後述しているところをみると、この「予防」の表現に違和感を感じる。
「継続的に」「持続的に」というほうが、私には理解しやすい。
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