社会福祉士×ちょっと図書館司書の関心ごと~参考文献覚え書き

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「オーストラリアの高齢者緩和ケアの現状と課題」福田裕子 『海外社会保障研究』Autumn 2009 No.168

2011-08-01 10:28:36 | その他
 オーストラリアにおける緩和ケアの現状について、社会情勢等を踏まえて分かりやすく報告している。
日本と同様、高齢社会が深刻化しているが、その取組の充実さは、日本も学ぶべき点が多い。

引用
・オーストラリアの緩和ケアは、1980年代より地域中心型のサービスとして発展した。
 1987年には医療サービス(国民皆保険:Medicare)として緩和ケアが提供できるようになった。
・死亡場所に関して、一般病院54%、緩和ケア病棟20%、自宅16%、介護施設10%。
・連邦政府と各州政府が2000年にNational Palliative Care Strategyを掲げ、政府としての緩和ケアの方針を専門家との協議のもと策定した。これには3つの大きな柱がある。①認識と理解 ②質と効果 ③ケアのパートナーシッップ
・都市部では、在宅緩和ケアチーム、入院緩和ケア施設、急性期ケアと急性期病院における緩和ケアコンサルタントチームが連携をとり合い、適切な療養環境へのスムーズな移行を支援するためのシステムが構築されている。
・2004年に高齢者介護施設における緩和ケアアプローチのガイドラインが作成され、緩和ケアに必要な79項目の要素が含まれている。
・Tel Health…遠隔地で直接コンサルテーションが難しい患者をビデオや電話を使用して都市部のコンサルテーションチームに依頼したり、家族ミーティングなどに電話で参加してもらうなど、距離があっても専門のコンサルテーションを受けることができるシステムを取っている。



 地域によって、受けられるケアの格差が生じることは、日本と同様オーストラリアにとっても課題のひとつのようだ。日本と違うのは、それを問題として国で取り組んでいること。予算を組み、専門の検討チームを構成し、取り組んでいる様子が伺える。
 さらに援助者側の教育に関しても、無料でプログラムを受けられるようにしたり、実践に即したプログラムを提供したりと、これも国をあげて取り組んでいる。援助者が育たなければ、よいケアは提供できない。それはケアを受ける場所の選択肢を狭めていることにつながる。

 私は広島県の都市部とは少し離れたところに住んでいる。この町では、がんの専門的は治療は受けられないし、情報を得る場所もない。また、以前関わっていたグループホームでは、介護職に「ここで看取りをしていく」という意識はなかった。嘱託医は在宅療養支援診療所を標榜している開業医であったが、排便コントロールですら、適切に指導をしていなかった。これを「地方」が解決すべき問題ととるか否か。この意識の違いが、オーストラリアとの違いであると考える。
 


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