碧田直の いいじゃないか。

演劇ユニット、ミルクディッパー主宰の碧田直が、日々を過ごして、あれこれ思ったことを、自由気ままに綴ります。

無題そのにじゅうご

2016-05-13 07:10:31 | 日々
蜷川幸雄さんが亡くなった。
一面識もなく、名前を挙げることさえも不遜で、はばかられる方とは承知しているが、演劇の末端にいる者として、やはり今日はこの方の訃報に際して、思うところを書かねば。

演劇に関わり出したのが二十代後半で、初めて舞台演出をしたのが三十代に入ってからだった俺にとって、蜷川幸雄という人は、最初から仰ぎ見るような巨星であり、手を届かせようとか、横に並ぼうとか発想することすらしない、そんな存在だった。加えて、やたら怒鳴りまくるだの、灰皿を投げつけるだのといったエピソードを見聞きするにつけ、演出家とはまず厳しさありきなのか、と思い、真似はしないまでも、多少役者さんたちにキツくあたった時期もあった。今にして思えば、蜷川さんの表面ばかりをなぞっていたなと猛省するほかない。

このたびの訃報に際して、数多くのコメントが寄せられている。それらを読むと、蜷川さんがいかに役者たちに愛されていたかが伝わってくる。それはすなわち、蜷川さんが役者を愛していたことの証左であるだろう。

ビートルズの『THE END』という曲に、こんな一節がある。

結局
きみが受けとる愛は
きみが差し出した愛に
等しいのさ

この歌詞の通りに考えれば、蜷川幸雄さんは愛情を持って役者に接し、舞台に取り組み、演出家として生きてきたのだと思う。
センスも、経験も、蜷川さんにはるか及ばない自分ではあるが、愛情と情熱は負けずに持っていたい。せめて後につき従っていく気持ちくらいは、忘れずに生きていこう。

ご冥福をお祈りします。
コメント
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