無題そのじゅうきゅう

先週の月曜にやった、悪夢の血液検査の結果を聞きに病院へ。診療開始時間すぐに受付したものの、予約を入れられなかったため、二時間近く待ってからの診察となった。

正直なところ、朝晩の咳がおさまらないのは気にかかるとして、減った体重も元に戻ったし、熱もだるさもない。あと一歩で健康体のはずだから、さっさと結果を聞いて、休日を満喫しようと思っていた。血液検査で引っかかったこともなかったし。

名前を呼ばれ、診察室へ。人の良さそうな先生が、うっすら笑みを浮かべながら、開口一番、
『いくつか引っ掛かりました』
そんなに楽しそうに言わなくても、とは思うが、患者に不安感を与えないための対応なのだろう。
『まずは肝臓…これは脂肪肝かな』
二十代のときも同じことを言われたな。
『あと、コレステロール。動脈硬化が心配ですねー。中性脂肪もね』
腹回りがマズい事態になっているのは自覚してる。
『血が濃いなー。水分補給マメにしないと』
確かに血の気は多い。
『糖尿の値がね。これは詳しく検査しましょう』
検査？
糖尿の検査はやったことがないが、親父が糖尿で検査入院したことがある。退院後、毎日、自分で採血していた。採血…まさか。
まさか。
『じゃあ、説明しますので奥へ』
不安と焦りを胸中に抱え、奥へ向かう。神様、この嫌な予感を止めてください。お願い。今度はお賽銭弾むから。どこの神社ならご利益あるか知らないけど。

『まず、来院していただいたら採血と採尿です。それから…この時間で採血…三十分たったら採血…二時間したら採血と…』
説明はほとんど右から左に抜けていく。採血、採血、採血…との言葉だけがこだまする。神も仏もありゃしない。来週の土曜に俺は一日四回も採血することとなった。これは何かの陰謀か、あるいは神の与えた試練なのか。どちらにしても、来週は今年上半期最大の山場になりそうなのは確かなようである。