昨日の夜に、アレが出た。
アレとはアレである。茶色かったり、時に黒かったりして素早くカサカサと動き、たまに飛んだりもするアレのことだ。これでも分からなければ、Gと言えば分かってもらえるだろうか。人間より大量に地球上に住み着いているアレである。
気づいたのは妻だった。いつもなら九時過ぎには眠りにつく彼女が、昨日は外食で予定がずれ込んだこともあって、俺と一緒に十時過ぎまで起きていた。テレビでバラエティ番組を観ながら、さて、そろそろ寝ようか、などと思っていたまさにその時に、妻が声にならない悲鳴をあげた。見てはならないものを見てしまった時に出す、ソレだった。
『!△!!◯!』
そして、次の瞬間、俺もソレを見た。そして心のなかで悲鳴をあげた。
『!!!▲▲】◯△#&!!!』
こう言っては何だが、俺は妻に輪をかけて虫嫌いである。男の子なら誰でも好きな、カブトムシやクワガタだって嫌いなのだから、ましてやアレなど、許容できるわけもない。
といって、叩き潰してしまえ、みたいな度胸もないから(だって、叩き潰したらアレの気持ち悪いアレが床にべっとり……うわああああああ、想像するだけで身の毛もよだつ)、妻と二人で、どうにか部屋の外に追い出そうと奮闘することに。
ところが、アレはなかなか思い通りに動いてくれない。どうにか窓へ追い詰めて、スパーンと吹っ飛ばしたつもりでも、本棚の陰に入り込もうとしたり、網戸のさんにへばりついていたりして、どうにも外へ出ていってくれない。もう妻も俺も半ばパニックである。とにかく出ていってくれ。それだけを願いながら戦うこと五分あまり、ようやくアレを部屋から追い出すことに成功した。アレは夜の闇に消えていき、放心してへたりこむ、四十男と三十路女が残った。
アレはまたいつ現れるか分からない。今日かもしれないし、明日かもしれない。また忘れた頃にやってくるかもしれない。ひとつだけ分かっていることは、ふたたび現れた時、俺も妻も大騒ぎして、挙げ句くたくたに疲れ果ててしまうだろうということだ。もう死ぬまで現れなくてもいいぞ。
アレとはアレである。茶色かったり、時に黒かったりして素早くカサカサと動き、たまに飛んだりもするアレのことだ。これでも分からなければ、Gと言えば分かってもらえるだろうか。人間より大量に地球上に住み着いているアレである。
気づいたのは妻だった。いつもなら九時過ぎには眠りにつく彼女が、昨日は外食で予定がずれ込んだこともあって、俺と一緒に十時過ぎまで起きていた。テレビでバラエティ番組を観ながら、さて、そろそろ寝ようか、などと思っていたまさにその時に、妻が声にならない悲鳴をあげた。見てはならないものを見てしまった時に出す、ソレだった。
『!△!!◯!』
そして、次の瞬間、俺もソレを見た。そして心のなかで悲鳴をあげた。
『!!!▲▲】◯△#&!!!』
こう言っては何だが、俺は妻に輪をかけて虫嫌いである。男の子なら誰でも好きな、カブトムシやクワガタだって嫌いなのだから、ましてやアレなど、許容できるわけもない。
といって、叩き潰してしまえ、みたいな度胸もないから(だって、叩き潰したらアレの気持ち悪いアレが床にべっとり……うわああああああ、想像するだけで身の毛もよだつ)、妻と二人で、どうにか部屋の外に追い出そうと奮闘することに。
ところが、アレはなかなか思い通りに動いてくれない。どうにか窓へ追い詰めて、スパーンと吹っ飛ばしたつもりでも、本棚の陰に入り込もうとしたり、網戸のさんにへばりついていたりして、どうにも外へ出ていってくれない。もう妻も俺も半ばパニックである。とにかく出ていってくれ。それだけを願いながら戦うこと五分あまり、ようやくアレを部屋から追い出すことに成功した。アレは夜の闇に消えていき、放心してへたりこむ、四十男と三十路女が残った。
アレはまたいつ現れるか分からない。今日かもしれないし、明日かもしれない。また忘れた頃にやってくるかもしれない。ひとつだけ分かっていることは、ふたたび現れた時、俺も妻も大騒ぎして、挙げ句くたくたに疲れ果ててしまうだろうということだ。もう死ぬまで現れなくてもいいぞ。