「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

カルボウ(水牛)

2006-08-04 18:50:14 | Weblog
 水牛と言えば元の兵舎にいた頃、中西か小川が外出先で
 「乗せて見せてくれ」と現地人に頼んで乗ってみた。帰ってから、
 「尻のところが変にかゆい」と言い出した。
 「お前、それはきっとダニがついたんだ。衣類全部洗濯してしまえ」と、大騒ぎした。水牛の皮膚をよく見ると、何かダニみたいなのがブツブツついていたが、現地人は平気で乗っていた。
 これも元の兵舎の時だが、庭の何かの木に水牛が一頭、繋いであった。聞くと、殺して肉にするというのだが、工兵隊の中の誰もがその殺し役をする者がいない。仕方がないので囚人を連れてきてやらせた。ハンマーで額を一撃したらドサッと倒れたが、死んだら早いもので、解体作業がドンドンはかどり、忽ち肉と骨になった。しかし、頭の部分は切り離された侭(まま)だったが、現地人の子供が「これはバグス(上等)だ」と喜んでもらっていった。
 角にロープを付けて棒を通し、二人で嬉しそうに笑いながら、の方に担いで行ったが、水牛の目玉がギョロリとしていて、私達には気味が悪かった。
 水牛とはよく言ったもので、水が本当に好きだった。現地人は牛の様子から分かるのだろうか、自分の帽子に水を汲んで頭にかけてやっていた。一度、薪運びに行ったとき、田んぼの水溜りに転がられて困ったことがあった。