都市と楽しみ

都市計画と経済学を京都で考えています。論文や講演も。楽しみは食べ歩き、テニス、庭園、絵画作成・鑑賞、オーディオと自転車

都市計画(学会誌)359号 都市計画古典再論:後藤晴彦の投稿

2022-12-25 02:18:18 | 都市計画

 後藤は「まちづくりオーラル・ヒストリー」を提唱している。やはり、人と街と産業(自然条件もからむ)の歴史から「その土地」を分析するのは必須だ。

 その中で紹介された訳著の「場所の力」(ドロレス・ハイデン https://en.wikipedia.org/wiki/Dolores_Hayden 2002年和訳)を読み返した。原著はMIT Press(1995年)のため、2000年あたりの出張の時に買った覚えがあるが、今は手元にない。内容は、場所の美学的(人文、建築、地理、環境心理)対政治学的(社会科学と経済地理学)アプローチの対比、場所の記憶、都市のパブリック・ヒストリーと産業従事者のオーラル・ヒストリー、建築保存と活用の運動だ。特に、産業史とそれにかかわった団体、人種などの観点はアメリカ独自と言える。ニュー・ヨークは映画産業に絡む衣装の縫製が産業の興りだ。いまや、金融とハイテク誘致になっているが。

最近、都市計画学会での学生のワークショップなどを見ていると、歴史や産業、街区の変遷をもっと探るのが良いのではと感じた。

さらに、歴史保存や文化財活用などの動きもあるが、都市の闇である色街や闇市などの歴史も学ぶ必要も感じる。キレイになりすぎる街、大型箱ものとデザインの「抗菌都市」になりつつある。

 日経夕刊の米澤穂信のエッセイに( https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66647270Y2A201C2KNTP00/ )「私が好きなのは、街であり、人の思いだったのです。数多の人間がそれぞれの良き思い、良からぬ思いを持って集っているのが街であり、その思いの集積点、結節点の一つとして、~寺や社が好き~」とあり、「結局のところ好きなのは、人間が息づき、降り積もらせてきた時間そのもの~」とある。これこそ、街のヒストリーだろう。米澤の感受性にはいつも感心する。

 都市においては、陽の当たる側、影、陰の側も歴史としてとらえてはどうか。古代・中世・近世・近代ともどろどろとした争い・殺戮・疫病・飢饉など不安があり、対比する宗教、色街の発展があった。1940年以降は平和と安寧というのはゴードンの指摘( https://blog.goo.ne.jp/n7yohshima/e/d407f650d35bd5bfeffa1c2d54a53cb4 )もある。

 幸せとは何かを考える時代に成熟した段階の今、街の歴史を振り返るべきと思う


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 台湾料理 味仙 大阪マルビル... | トップ | 円屋 錦・高倉(京都):魚の... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

都市計画」カテゴリの最新記事