漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

【三つの銅貨・その二枚目】

2012年06月20日 | ものがたり

 【三つの銅貨・その二枚目】
   
銅貨を持った男が故郷へ向かって歩いていると、
ある港で、市場へ行こうとしている商人に出会いました。

男は財布から銅貨を一枚出して、
「あなたの行く市場でこの銅貨で変える物を買ってください」と頼みました。

市場で商人は自分の買い物をすまして帰ろうとして、
「ハテ、まだ何やら買うものがあったな」と首をひねり、

「そうそうあの銅貨」と思い出して、

預かった銅貨を取り出しましたが、
これっぱかりの銅貨で何を買っていいか思いつかないので、

ウロウロしていると、
元気そうな男の子が猫のツガイを銅貨一枚の値段で売っているのを見つけました。

商人はほかに思いつく物も無かったので、
「これでもいいだろう」と、猫のツガイを買うことにしました。

さて、その商人は、冒険的な商売をするやり方だったので、
持っている船に、仕入れた品物を山のように積み、猫のツガイも積んで、

遠い外国を目指し、
張り裂けるほどの夢と希望を胸に、いよいよ外洋へ乗り出しました。

やがて船はある国の港へ着きました。

ところがその国は、鼠が増えすぎている国だったので、
積荷の猫は港に着くと船から飛び出して、手当たり次第に鼠を取りまわりました。

その国の人々は、食料や家具など、
手当たり次第に鼠にかじられて困っている処だったので、

猫が鼠を追い回すと、
鼠が隠れて出てこなくなったのを喜んで、盛んに猫のことを噂するようになりました。

やがてその評判は、その国の王様にも届いて、
王様から「その猫を買うように」と大臣に命令が出ました。

大臣から、「その猫は高いのか」と訊かれた商人は、
「これは実は私のものではございません、
 ある男から買ってくれと頼まれたものでございます」と返事をして、

少し考えてから、
「大きな船となら交換しても良うございます」と返事しました。

大臣がそのことを王様に報告すると、
王様は、
「船を渡し、猫のツガイを引き取るように」と申されました。

商人は、積んできた品物を売り、
打ったカネでその国の珍しい物を船イッパイに仕入れると港を出ました。


  ================ 〔続く〕









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