【三つの銅貨・その三枚目】
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猫と船を交換した商人は、船に積んできた品物を売り、
その国の珍しいものをまた船イッパイに仕入れると、また次の国を目指して港を出ます。
その商人は、そう云う風にしていくつもの国を回り、
港、港で商売して、莫大なお金をもうけると、やがてもとの国の港へ戻って来ました。
商人が船を下りて、なつかしい港の市場へ行って見ると、
大勢の人々の中に、自分に銅貨を渡した男を見つけだしました。
商人は男の袖を捕まえて、
「あなたに頼まれた買い物は港につないでありますよ」と言って、船の所まで案内しました。
商人が船の中を案内しながら、
猫が船になった話や、色々と面白い話、めずらしい話をすると、
聞いていた男は、
「自分も外国へ行ってみよう」と言い出しました。
商人は「それはいい」と賛成すると、
外国で熟れそうな品物や腕のいい船員をそろえて、銅貨の男をh船に乗せて送り出しました。
船は大洋を航海するうち、海の真ん中の島に着きました。
その島に上陸すると、
大きな樫の木が一本そびえ立っていて、
とても気持ちが良さそうだったので、
銅貨の男は、その木の上で、夜風に吹かれながら一夜を過ごすことにしました。
やがて陽も落ちて暗くなり
涼しい風がそよそよと吹き出したころ、下のほうで何やら声がします。
木の下には海賊らしい男たちが集まって、
酒盛りをしながら、
「この島の王様の一人娘をさらってしまおう」と云う相談をしているのです。
海賊の親分は酔っ払ったのか、
子分たちに、
「うまくさらって来ないとテメエたちをぶん殴るぞ!」と言っているようです。
間もなく男たちは酔いつぶれて寝てしまいました。
銅貨の男は、急いで木から降りると、
海賊船の所へ行き、銅貨を石に打ちつけて燃やすと、
燃えている銅貨を海賊船に投げ込み
とうとう海賊たちが寝て入間に船を燃やして沈めてしまいました。
そうしておいて、銅貨の男は、島の王様の所へ行って、
海賊たちの悪だくみを告げて、
今の内に島の兵隊を出して海賊たちを退治するように説得しました。
王様も海賊には困っていた処だったので、
早速、兵隊を出し、海賊を攻撃して退治してしまいました。
海賊の親分は、島の兵隊から、
散々に「ぶん殴られて」死んでしまったと、
私はその話を、銅貨の男から聞いたのですが、
私はその時、その男と散々に飲んで酔っ払いながら聞いていたので、
その話がほんとうかどうかまでは、知りません。
================= 〔終り〕