りん日記

ラーとか本とか映画とか。最近はJ-ROCKも。北海道の夏フェスふたつ、参加を絶賛迷い中。

HAD A NICE FLIGHT, but…―モヤモヤ篇

2007-11-20 23:42:01 | ラーメンズ - 舞台レビュー
KKP#5『TAKEOFF』の感想です。
ネタバレというほどではありませんが、一部内容に触れている部分があります。

また、当記事『モヤモヤ篇』内では、不満に思ったこと、気になったこと等、
マイナスの感想だけにしぼって書いております。

ファンの方は読んで気分を害されるかもしれません、
どうぞご承知おき下さいませ。









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ラーメンズの本公演に比べて、
KKPへの評価はいまひとつ低いことはなんとなく知っていた。

理由はいろいろあるんだろうけど、
結局は片桐くん以外の役者に対する小林くんの経験値が
低いことに所以するんだろうと、想像していた。

片桐くんに対しては脚本の段階でのアテ書きも稽古の段階での演出も、
小林くんは完璧にできる。
誰の追随も許さない。
だけど、他の役者さんに対してはそうはいかない。
片桐くんほどは、まだ相手を把握してないから。

KKPの評価や人気が本公演よりも劣るのは、そういう、
ある意味物理的な理由によるものなんだろう、と思っていた。


でも、今回初めてKKPを見て、どうもそればかりじゃないな、と感じた。


見てすぐはわからなかった。
「喜悦篇」に書いたように、見てるとき、見た直後、見て2、3日は、
小林くんを初めてナマで見た感激に、
小林くんの舞台に観客として初めて参加できた嬉しさに、
ボーッとしてて、他のことを考える余裕があんまりなかった。


だけどそのうち、なんかこう、モヤモヤした……不満……?
みたいなものが自分の胸の内にあることに気がついた。


何だろう、この不満。
面白くなかったわけじゃない。
それどころかめいっぱい笑って、楽しませてもらった。
劇場まで足を運んで良かった!と心底思った。
いまも思ってる。


だけど……


小林くんは、笑わせるだけじゃなく、感動もさせたかったんだろうと思う。

一人が裏切って、でも二人の説得で思い直し、
それぞれがそれぞれの飛びたい理由にもう一度立ち返り、思いを新たにする。
夜が明け、三人はHAE機とともに――TAKEOFF!! わー

みたいな。

でも私、あんまりそうならなかったんだ。

ま、ライブでの臨場感もあるし、離陸の瞬間はやっぱりキャーと気分は高揚したよ、確かに。

だけど、例えば『TEXT』の最後のコントを見たときの気持ちの動かされ度合いとは
比べるべくもなかった。


なんでだろう……


私が悪いのかな。
『喜悦篇』にも書いたように、ラスト近くに至ってもまだセリフのやりとりよりも
小林くんの表情に意識が行ったりしてましたからね。

でも……


ええい言っちゃえ、やっぱり脚本が、ストーリーが弱いんじゃないか

ちょっとあの辺のまとめ方は、凡庸にすぎるんじゃないか

小林賢太郎はあんな脚本で満足するような男か



ハァハァハァ、ああ、言った……



イヤ、あのね。
小林くんにうっとりしすぎて、ストーリー自体にすっぽり入り込むところまでは
結局最後まで行かなかったってのはね、
やっぱりストーリー自体にそれほどの魅力がなかったからなんじゃないかと思うんだ。


あの手だよーたまんない!とか、いい靴、いい鞄、どこのだろポーターかなとか、
いやーん唇かみしめてるよ、それに握りしめたあの拳とか、

そういう余計なこと考えさせないくらい、三人に、特にシノダに感情移入させてほしかった。

登場人物に同化して、本気で悔い、自己嫌悪に苛まれ、あるいは腹を立て、
許し、最後には心を一つにして、飛ばせてほしかった。

小林くんの方だって、観客にそういうふうになってほしかったはずだ。


にしては……弱い。

シノダの裏切りが発覚してからのあのくだりが、弱い。

もっというならば、3人がそれぞれHAE機の製作に参加する理由の提示が弱い。
特にシノダの飛びたい理由がわかりにくい。


パンフレットに、去年の公演が終わってから脚本を読み直したらアラがけっこうあったので今回直した、
どこから見ても揺るぎない構成の本にしたかった、
との小林くんの話が載っていたけど……

去年のを見てないので何とも言えないけど……

今回の脚本も、「揺るぎない」域まで達してるとは言えないと思う。


ここで、具体的に内容に踏み込んでどこの何が弱いのか指摘しないと卑怯かと思うんだけど、
ごめん、そこまでもう内容覚えてないの
一つ一つのセリフも細かい展開も、もう覚えてない
それに覚えてたとしても、そんな論評できれば自分で脚本書いとるわ!
という話かもしれない。

DVDが出たらね、また何か書けることがあるかも。

というか、ゴメン、ここに書いたの全部ウソ!ナシ!
素晴らしい舞台でした、ボーッとしてた私が悪いんです、
小林くん、こんな駄文をうっかり読んでしまったみなさん、本当にごめんなさい!!
ということになるかもしれないしね




といいつつ、性懲りもなくもう一つ、気になったことを書いてしまいます。
今回の芝居、「笑い」担当部分と「感動」担当部分が分離しちゃってる気がした。

ふざけにふざけて楽しくおかしく盛り上げた序盤・中盤と、
ストーリーの方が大きく動き出して大団円に持っていく終盤が、
うまくつながってない。

前半はコントコーナー、後半が感動コーナー、
でも前半のコントで、演ってる方も楽しくてついつい時間おしちゃって、
後半の感動ストーリーは急ぎ足になっちゃっていまいち説得力に欠けちゃったね、
みたいな印象だ。


大学時代に学生演劇をやっていた、という友人が、
KKP#2の『Sweet7』を見た感想を話してくれたとき(私は未見)、
「あれは芝居じゃなくて、コントだね。長いコント。
コントの頭のままで脚本書いたんじゃないかな、小林くん。
だから笑えはするけど、喜劇というのとはちがう気がした」
というようなことを言っていた。


『TAKEOFF』を見ても、彼女はたぶん同じ感想を持つんじゃないか、という気がする。

で、どうして『TAKEOFF』が喜劇じゃないのか、ということを最近ずっと考えてるんだけど、
わからない。

だって、喜劇って見たことないんだもん。

と彼女に言うと、じゃあこれ見てみて、と、三谷幸喜の『笑いの大学』を貸してくれました。
役所広司と稲垣吾郎の映画版ではなく、舞台の『笑いの大学』です。
まだ見れてないけど、見たらレビュー書きます。




あとねー、もう一つあったんだ、気になったこと。

観客のみなさん、小林くんに甘くないですか?
甘い客は芸人を殺すんですよ?
小林くんを殺したいか??
まぁ、カンタンに殺されるような人じゃないとは思うけど。

地方公演ならまだしも、東京のみなさんはもっと厳しいんだと思ってた。
どんな雰囲気なんだろ?と楽しみだった。
でも、少なくとも私の見た回の客席は、最初から
「笑おう! 賢太郎様が笑わそうとしてくださってるところは一つも見逃さず、
すかさず大声上げて笑わなければ!」
と思っているかのよう。

お約束のベタなくすぐりにも、一つ一つ律儀に爆笑が上がってた。

あのね、そこまでしてほしいと思ってない気がするよ、小林くんは。
ちょっとしたくすぐり程度の仕掛けでは「ニヤッ」としたり「クスッ」と笑ったりする程度、
ここだ!ここで笑え!という肝心の所だけで「大爆笑!」な方が、
演ってる方としては嬉しいと思うなー。

別に、MacのCMのセリフをちょっと言ったからって、拍手までして喜ばなくてもいいじゃん。
(あれ、でも私も手を叩いてたような気もする……)


勝手を承知で言わせていただくと、

田舎から出てきて賢太郎さん賢太郎さん言ってるようなミーハーファンは私だけ、
他はみなさん舞台を見慣れて目が肥えてる観客で、ちょっとやそっとじゃ笑わない、
だけどさすがに小林賢太郎、そんな厳しい観客も、いつのまにか涙を流して笑わせて、
最後にはその涙を感動の涙に変えちゃった! すっげー!!

そんな舞台が良かったなー。

(なぜだか最後は微妙に七五調。意味はない。)

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