りん日記

ラーとか本とか映画とか。最近はJ-ROCKも。北海道の夏フェスふたつ、参加を絶賛迷い中。

『ポツネン氏の庭』 ネタバレレポ その3

2010-01-11 23:57:30 | ラーメンズ - 舞台レビュー
箱庭レポの続きです。第3回になります。
第1回はこちら、第2回はそちら
どちらもネタバレです、ご注意くださいね。

それでは第3回始まります。
もちろんネタバレ注意です。



































****************************************************************************

その2の補足から。
レポその2の最後に、2日目に演目の順番がちがっちゃった話をしましたが、
そのとき、彼は幕間でこんなことも言ってました。
具体的な言葉は忘れたけど、こんな意味のこと。
「ボクはふだん、わりとこう、
各コントにつながりがあったり、一つのテーマでくくってたりっていう
緻密な構成のものが好きなんですけど、
今回はそういうの全然なしで、思いついたものを思いついた順番でやっちゃおう、
という、そういうライブです」
(だから演目の順番まちがえても問題ないんだよーという話。)

ということは、もしかしたら、中にはずいぶん前に思いついたのもあるのかもね。
思いついたけど、どの公演にも入れられなかったコントが。
だから今回のはコントの「蔵出し」みたいな意味合いもあるのかもしれないなぁと思いました。


さて、グルメ詩人から今度は何になるのか。
胸の豆しぼり、箸、メニューを引き出しにしまい、ワゴンを下手奧へ移動。
上手へ戻り、座っていた椅子を持ち上げ、下手へ持っていきながら
「パシン!」とかっこよくたたみ(楽日では楽しそうに「トランスフォーム!♪」なんて言いつつ。
こんなにゴキゲンのいいポツネンさんには初めてお目にかかりますよ)、
ワゴンへ収納。
次にワゴンから取り出したのは浅いキャップ。色はグレー。
ガスや水道の検針員さんがかぶってるみたいな。
『天空の城ラピュタ』のパズーやポムじいさんがかぶってるみたいな。(ちょっとちがうか?)
イメージできますか?
そして、黒い革の、横長のがま口ポーチみたいなのをたすきがけ。
新聞の集金の人が持ってるみたいな。
イメージできる?
「できない」という声があればプー子さんがイラストにしてくれますからね、
遠慮なく叫んでね。
本人、いまはDSにはまっててレポどころじゃないなんて言ってますけど、
みなさんが叫べば大丈夫です、ちゃんとイラスト描いてくれますから。

準備が終わると上手手前でピシッとキヲツケをして暗転。


7.魂師 (※最初にアップしたとき、表記を「魂士」としてたのですが、「魂師」に直しました。)

これねー、私は今回、すごーく気に入った作品です。
小林賢太郎の真骨頂、「非日常の中の日常」が存分に堪能できる。
コント台本としての完成度も高いし、演技的にもよく練られてると思う。
これは、延べ600人程度の人間が見ただけではもったいない。
もちろんライブ全体がもったいないといえばもったいないけど、
そんな、客にとっても演者にとっても贅沢なライブがたまにあってもいいんじゃない?と
全体に関しては思えるけど、
この作品に関しては本当にもったいない、たくさんの人に見せたい。
もしかしてもしかしたら、ポツネン本公演でそのままやるかもよ?
質的に、本公演に入りそうな作品なのよ。
そんな気がするの。
気に入った演目だから特にくわしくレポしちゃったけど、
そして、だからこそ読んでもらいたいのはやまやまだけど、
「もしかしたら今後全国ツアーでそのままやる可能性あり、と村野は思う」
ということをお含み置きいただいて、
うんまぁ、それでもいいよ、という方だけ読んでください。

では以下、ネタバレします。










舞台が明るくなるといきなり第一声。
「タマシ」
一呼吸置いて、
「地名…ではありません。魂の師、と書いて、魂師(たまし)。
ものにはすべて、魂が宿ります。
たとえまだ新品の道具でも、魂が中に入っていないと動かなくなってしまう。
そこで僕たち魂師の出番となるわけです。」

『TEXT』の『銀河鉄道の夜のような夜』の冒頭で活版印刷の説明をするときと同じ、
若々しい声でテキパキと、過不足のない的確な説明。
それでいてその説明の内容は、現実の世界ではありえない、日常からズレた物事。
あっという間に「非日常の中の日常」に引きずり込まれる。

てくてくと歩いて、上手で立ち止まり、ピンポンと玄関の呼び鈴を押すマイム。
インタフォンに向かって
「こんにちは。ご予約いただいた魂師です」
言ったのち、しばし待つ。ドアが開いて、
「あ、どうも、ご予約いただいた魂師の加藤です。
あの、一応こちらご覧になっていただいて、確認していただいてよろしいですか?
(たすきがけした鞄からA5くらいの身分証明書みたいなのを取り出して、相手に示しつつ)
日本魂師協会公認、魂2級取扱責任者、加藤です。
はい、あ、こちらこそよろしくお願いします。
(相手に招き入れられて)失礼しまーす。。。
(下を見て)あ、どうも、あ、じゃあ遠慮なく…(靴を脱いでスリッパを履くマイム)
……えっと、お台所……あ、こっちですか、はい……」

電器製品の修理のためお客さんのお宅を訪問した若い技術屋さんさながら、
魂師くんは台所へ案内される。

「あ、この電子レンジですかぁ……(ためつすがめつしながら)
あ、まだ買って2年。
いえあのね、魂の場合、どれくらい使ったか、じゃなくて、
どれくらい使わなかったか、なんですよ。
ちなみに最近、しばらく使わなかったことってあります?
……ああ、出張で2週間お留守に。あー、それですねー。
一応、魂まだ入ってるかどうか調べますね。
(鞄から伸縮式の指示棒取り出して、すちゃっ!と延ばし、
電子レンジの上にかざして、スキャンするみたいに上下左右に動かしてから)
ハイ、やっぱり抜けちゃってますね、魂。
2週間なら、まだこの辺にいるかもしれないな……探します!」

ついっとアゴを上げて、何を始めるかと思ったら、
「くんくんくんくん!」とすごい勢いで辺りを嗅ぎ回り始める魂師くん。
あるところでピタリと止まって、

「……(小声で)いました。炊飯器の陰にいました。
(そーっと手を近づけて)……つかまえたっ!はい、これが魂です」

と示した手の中には、いつの間につかんだのか、朱色に塗られたピンポン球。
じゃなかった、電子レンジの魂。

「…え? あ、ええ、そうなんです、こんな色なんですよ。
最初は透明で、使ってるうちにだんだん赤くなってくるんです。
最後まで大事に使えば、すごーくキレイな色になるんですよ。
それじゃあね、これ、戻しますね。
あ、申し訳ないんですけど、電源コード、いったん抜いてもらえます?
ハイけっこうです。ありがとうございます。それでは……」

魂を持った手を横からそっと電子レンジに近づけて、コホンと咳払い一つ。
それからやおら。

「タマシイタマシイタマシイ!」

やたら早口で言いながら手をくるくるっとさせたかと思うと、さっと向き直って
「ハイ、入りました!」

簡単!エラく簡単!

「え?ハイ、終わりです。じゃ、一応動かしてもらいましょうか。
ちょっとスイッチ入れてみていただけます?
(苦笑して)……あ、「動かない」って、だってさっき電源コード…(笑)
(コンセント差しなおして、再びスイッチ入れるお客さん)
……ハイ…大丈夫…みたいですねっ。
それではですね、ここに作業終了のサインいただけますか?
ハイ、ありがとうございます。
それでは、料金250円になります」

ここで客席のあちこちから、笑いとともに「安!」「やっす……!」のツッコミが。
2日目も楽日も、一つ二つじゃなく、十以上は聞こえました、
「す…!」って空気の抜ける音が(笑)。
2日目終わったあと、イエティさんと
「なんであそこであんなにみんな「安い」ってつっこむんだろね?(笑)
てか、みんななんで安いってわかるんだ?」
って言い合って笑ってたんだけど、そうしたら楽日で賢太郎さんご本人も、
「みんな、何と比較して安いって言ってるわけ?」って笑ってたよ。

こんなふうにして、魂師くんの仕事は一段落。
キャンペーンで豪華賞品が当たるかもしれないアンケート用紙もちゃんと渡して
(「簡単なアンケートなんで。水枕とか当たりますんでね。
切手要りませんので、そのまま投函してくださいー」)、
1軒目の仕事は無事終了。

2軒目。同じようにして顧客の家を訪問する魂師くん。
今度のお宅の動かなくなったものは、石油ストーブ。

「あ、芯を取り替えても? ええ、点かないですよね。
これはね、完全に魂がどこか行っちゃって、もうたぶん近くにもいないですね……
ちなみに、どれくらい使ってないですか? あ、6年。
んー、ということは、もし見つかったとしても、野良化しちゃってますね、きっと…」

でも一応ということで例によって「ニオイ」で探す。
部屋の角、上の方があやしい?

「(上を見上げながら)…この天袋、ふだん使ってます?
どれくらい開けてないですか?…あ、ストーブと同じ。6年。
ふーん……え?(何か話しかけられて振り向く)あ、はい、学生のときバスケ…はい。
(また向き直って、独り言)……ここ、だな……
(ほんの少しだけ戸を開けて、背伸びして隙間から中をのぞく)
いたいた。あー、巣 作っちゃってますねー」

形式的なものなんだけど、プライベートな場所を開けたりもするということで一応、
なんて言いながら書類にサインをもらい、
つかまえ損ねた魂対策として、部屋のコンセントの差し込み口それぞれに
インスタントコーヒーを置いてもらい
(「ああ、魂って、カフェインに弱いんですよね」)、準備はOK。

腕を伸ばして、そっと天袋の引き手に両手をかける。
「……いいですか?開けますよ?
あ、逃げだしたら、その場で踏んづけちゃってください。
じゃ、いきまーす……」

さっ!と戸を開ける。と、上に伸ばした魂師くんの両手の隙間から、
ボロボロボロボロッ!とおびただしい数のまっ黒なフェルトボール、
じゃなかったまっ黒な魂がこぼれ落ちた!
すばやく拾い集める魂師くん。
無事にすべて拾い終わると、鞄から取り出したのはジップロックのビニール袋(小)。
魂を袋に入れて、ぎゅーっと押しつぶして空気を抜いて、
口をしっかり閉じ、鞄の中へ。

「……と、ハイ、これで大丈夫です。
えっと、これはもうストーブの中に戻すのはムリなんで、
新しい魂 入れさせていただいてよろしいですか?
ハイ、それじゃ、これ」

鞄の中から透明なプラスチックボール、じゃなかった透明な魂を取り出す。
給油口からすとんと入れて、作業終了。

今度の料金は、新品の魂代含めて、400円。やっぱり安い。ような気がする(笑)。

例によって水枕が当たるキャンペーンの説明をする合間に、また話しかけられる。
「……え?(苦笑して)やだなぁ、何でそんなこと聞くんすか。
え? いや……秘密です。ええ、まぁ、はい、独身すけど……
ええ、まぁ……」
テキパキした仕事ぶりから打ってかわって、ニヤニヤの魂師くん。
何言われてるかなんとなく想像つくね。

帰り際の玄関では果物か何かのおみやげを渡され、
遠慮しつつ受け取る魂師くんがカワイイ。
2日目のときには、ちょっと色っぽい奥さんにいろいろ話しかけられてるのかな、
って私は想像したんだけど、
楽日では、どうやら娘さんの写真を見せられたようなので、
50代・60代のおばさまだったのね、きっと。
「背が高いのねー、スポーツやってらしたの?」なんて言われてね。

こうして1日に5、6軒、多いときには7、8軒回る魂師くん。
だけど仕事はこれだけではありません。
作業場に戻ってくると、1日の終わりに大事な仕事が待っています。

それは、新しい魂の仕込み。

舞台中央に据えたワゴンの上に、小さな壺。
何もない中空から、いたわるような、いつくしむような、なめらかな手つきで
次々と透明な魂を取り出しては壺に入れていく。
「もの」「道具」に宿る魂にしてはあまりにも、それは幻想的で美しい眺め。

と、ふとその手が止まる。遠くを見やって、魂師くんはつぶやく。

「……結婚……かぁ……」

暗転。


再び明るくなるとすぐ、ポツネンさんは
「こいつの青春群像には興味がねぇ!」って笑ってました。
ちなみに、フルネームは加藤誠一くんというそうです。

おいしゃさんと同じく、いやそれ以上に、マイムでの描写が細かくて面白かった。
それにセリフの内容も、その言い方もうまい!
接客が丁寧で、仕事はテキパキしてて、まじめな好青年。
口調も物腰も何もかも、本当に、何かの修理に来たちょっと若めの技術士さんそのもの。
マジック要素もしっかり盛り込んであったし、堪能しました。


魂師の小道具をすべてしまって、扮装なし、持ち道具なしで舞台下手奧に
直立不動で立ったところで再び暗転。

次で泣いたよ、私。
もー、バカでバカで!
「ミイラ取り」以上に「やめてぇ、お腹が痛いぃぃぃ」なコントでした。
……コントなのか、あれ(笑)
レポその4に続きます。
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6 コメント

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たまし。 (プー子さん)
2010-01-12 12:51:49
魂士か…!魂師だと思ってた…
(電気技師的な)

これは「SPOT」でやるんじゃないかと思う〜
とってもキレイだった。
バランスが。

脚本のおもしろさと
お芝居のおもしろさと
賢太郎さんのファニー&キュートな魅力と(笑)
あとマジックの取り入れ方と。

あれは他の誰にもできないよね〜
感動しました。

コントなのに感動しちゃった。
(感動させる話じゃないのに)

あとイラスト言われる前に描こう(笑)
宿題も言われる前にやると気分いいもんね。
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うちも (イエティ80)
2010-01-12 20:55:46
魂師だとおもってた蟲師的な。
安いんだよねぇ~。
たぶん修理代と比べてるんだと思うのぉ~。
言っちゃうんだよね、「安い。」って。
今度のSPOTでもやりそう。
これと怪獣のお医者さん。
返信する
師と士ねぇ~ (りん)
2010-01-12 21:41:29
~ぷこさん、イエティちゃん

私も、最初にメモしたとき「魂師」って書いてたんだけど、
レポ書くときにふと、「あれ、意味から言ったら士かな?」
と思って魂士にしたんだ。
でも字面の収まりは「魂師」の方が断然いいんだよね~
師の方に直しちゃおうかな。

で、そう思う?
これ、やっぱ『SPOT』でやるかな?
キャラもしっかりできてるもんねぇ、誠一くん。
返信する
Unknown (りん)
2010-01-12 21:51:19
やっぱり、「魂士」より「魂師」の方が据わりがいいので、
本文も直したです。
返信する
はじめまして (こゆき)
2010-01-14 20:13:50
はじめまして、「こゆき」といいます。ねぶた県に住んでます。

私も去年の「小林賢太郎テレビ」以来、賢太郎さんにすっかりハマってしまい、「庭」の楽日のを観にいきましたよ。寝台列車に乗って。もちろん「青函トンネル、窓あれよぉー」って思いながらねwwww

初めて拝見した賢太郎さんは、そりゃあかっこよくて、面白くて・・・ますます好きになってしまいました。りんさんもその場にいたのですねえ。なんだか不思議な気分です。

それにしてもりんさん、素晴らしいほどの記憶力。私は一生懸命脳みそに焼きつけようとしてましたが、限界を超える情報量に細胞がフリーズしましたw

次のレポ、楽しみにしております。また遊びに来させてくださーい。うちで飼ってる犬中心の、しかも放置気味のブログですが、よかったら遊びに来てくださいね。


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Unknown (りん)
2010-01-14 20:44:50
~こゆきさん

コメントありがとうですっ!
おおっ、小林賢太郎テレビで!
そして初生賢が「庭」!
わぁ…それは…なんていうか…いい出会いのしかたをしましたねぇ…
うまく言えないけど、なんか、うらやましい!

このレポを見て、自分の見た「庭」をもう一回思い出して、
「面白かったなぁ…」とか「かっこよかったなぁ…」って
ぽやーんと幸せになっていただけたら嬉しいです。
どんどん遊びに来てください。
どんどん。どんどんどんどん。

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