ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【異名同書】難波先生より

2016-12-27 14:36:39 | 難波紘二先生
【異名同書】
 私は山本七平の本はイザヤ・ベンダサン名のものを含めて大抵読んでいる。ところがある新聞広告で彼の「田中角栄の時代」という新刊(祥伝社)を認めた。さっそくAMAZONに注文したところ、扉見返しに「本書は1986刊行の「ご時世の研究」(文藝春秋)を改題・再刊するものです」とあった。「ご時世の研究」はすでに所蔵している。つまり同じ本を2冊買ったわけだ。

 しかも最初のハードカバー本は1000円で、今度のソフトカバー本は1250円と値上がりしている。良書を安く売るなら、文庫本にすればよいではないか。この本の中古品は700〜800円で出まわっている。まあ、文庫本価格だ。
 出版社がこういう詐欺まがいの商法をしていて、読者の信用が増し、本の売れ行きが増えるわけがない。
 私は出版不況には、出版社のモラル低下も大いに関係していると思う。新聞社の広告部には現品見本が納品されたはずだが、部員は見返しの「改題・再刊」という詐欺商法に気づかなかったのだろうか?
 山本七平といえば砲兵少尉としてルソン北部での戦争体験を綴った「一下級将校の見た帝国陸軍」(文春文庫, 1987、原著は1976)をぜひ再刊して欲しい。私はあの本が比較文化論や宗教論から脱して七平が「空気の研究」や「御時世の研究」を書く出発点になったと考えている。七平は巧緻な論理を駆使したが、同時に類い稀な状況描写の達人だった。
 私はルソン戦の本当の悲惨さを凡百の戦記物によってではなく、山本七平の著書により知った。


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