ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】下重暁子「家族という病2」他/難波先生より

2016-08-08 11:18:05 | 難波紘二先生
【書評など】
1)「買いたい新書」の書評No.332: 下重暁子「家族という病2」(現代新書)を取り上げました。同名の前著「家族という病」には多くの賛否両論が寄せられたようで、それらを踏まえた本書では、記述がより具体的・詳細になっています。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1468909897

 特に驚くのが,「家族間殺人の増加」で日本の全殺人事件数に占める家族間殺人が, 2003年までの25年間はおよそ40%で推移してきたが, 04年以後急激に増加し13年には53.5%に達したという驚くべき数字が上げられている。親子心中, 一家心中は刑法上, 立派な殺人なのに日本社会はそれに寛容すぎると指摘している。
 第4章「家族という病の処方箋」では, 「人間の死に方は生き方で決まる」という印象的な節がある。「人間は生きて来たようにしか死ねない」とは, 若い頃, 多くの患者の死を看取った内科の名医が評者に教えてくれた名言である。「幸せな家族なんて存在しない」という著者の主張には異論もあると思うが, 現代家族論として推薦したい一書です。

2) 「買いたい新書」の書評No.333に森重明「原爆で死んだ米兵秘史」(潮書房光人社)を取り上げました。
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1470114756

「文藝春秋」7月号の森手記「オバマは広島で私を抱きしめた」を読んで、同氏が8月6日、己斐小学校への登校中に被爆したこと、戦災孤児として育った後、「相生橋の欄干に縛られて死んだ米軍捕虜」のいることを知り、彼らのことを調べ上げ、米国の遺族の元に知らせるという地道な調査活動に取り組んだことを知りました。
 
 その調査報告「原爆で死んだ米兵秘史」(光人社, 2008)は英訳出版され、「被爆者である日本人が死んだ米兵の調査をしてくれた」と感動を生み、ドキュメンタリー映画化もされたという。
「私は、自らが被爆した身として、ひっそりと死んでいった捕虜たちに光をあて、その無念さを後世に伝えたいと思った。」
 著者のこの言葉に感動するのは私だけではないだろう。

3)その後、広島テレビ放送・編「オバマ大統領がヒロシマを訪れた日」(ポプラ社、DVD付)を入手した。(書評は、No.334として8/15に掲載予定)
 本書に収録されている5月27日、原爆ドームを背景にして行われた17分間のオバマ演説全文を読み、DVDで録画を見て、米大統領が森重明氏の調査に対して、間違いなく謝意を述べているのを知った。しかも原爆死没者名簿に死亡した米兵の名前を記入する申請をし、「中国憲兵隊司令部」(捕虜が被爆した場所)跡建物に慰霊の銘板を私費で設置したのも森氏なのだ。
 併収の森氏の手記により「己斐國民学校」付近の被爆状況を読み、酷たらしさに慄然とした。

 敵兵に対しても味方と変わらない追悼の念を捧げる。これほど米国民を感動させる行為はないだろう。そういうわけで、これら3点の資料に目を通し、「オバマ広島訪問」をもたらしたのは、森氏の調査とその著書の英訳と映画化による、米世論の変化を受けたオバマ大統領の自発的決断だと思った。
 「ヒロシマとナガサキは核戦争の夜明けとしてではなく, われら自身の道義的目覚めの始まりとならなくてはならない」という、演説の一節には「謝罪」の意が込められていると思った。

2)献本お礼など
★献本お礼:「医薬経済」7/15号(医薬経済社)の献本を受けた。御礼申し上げます。
予想どおり、「鳥集徹の口に苦い話、NO.18:どうした「週刊現代」、意義ある批判が台無しだ!」が掲載されていて、彼が「週刊文春」誌上で「週刊現代」の医療特集記事批判にまわった事情がよくわかる。「週刊文春」の取材を受けた医師たちの中から、「本意でない発言が勝手に利用された」という声が多く噴出しているという。
 「週刊文春」7/21号は鳥集氏主筆の「胃がん特集」以外に、「<週刊現代>医療記事はねつ造だ」という4ページ記事で、「発言を歪曲、ねつ造された」と主張する医師たちの声を取り上げている。
 週刊誌、新聞の記者取材は、ことに電話取材の場合は、「行き違い」が起こりやすい。このことに気づいた私は、基本的にメールで「Q&A」の形式で応答することにしたら、「言った/言わない」のトラブルが原則的に解消できた。
 本号トップ記事の「OBSERVER」が面白い。「ファイザー・メディカル・アフェアーズ(MA)統括部長」が登場している。この人は東京医科歯科大医卒、都立神経病院で6年間臨床医として働いた後、米デューク大で基礎免疫学を研究、02年ファイザー入社。アルツハイマー治療薬、糖尿病薬、循環器治療薬の開発に関与した後、現職についたらしい。
 むかしは医薬品の宣伝員のことを「プロパー」と呼んでいた、ドイツ語の「プロパガンダ(宣伝)」の略称だと思う。話術巧に自社製品を売りこむのが仕事だった。
 その後「MR」という呼称に変わった。Medical Representative(医学代表)というのが、フルネームかと思う。ファイザーでは自社製品を売るMRの上に、MSL(メディカル・サィエンス・リエゾン)という役職をおき、「医師とのコミュニケーションはもとより、理路整然とした説明やロジカル・シンキング」の能力を発揮させるという。これを統括するのが「メディカル・アフェアーズ統括部」だそうだ。ディオバンなど製薬会社がらみの不正が相継いだだけに、外資系の製薬会社から本格的な販売対策の見直しが出てきたものと着目したい。

 「やっとこ」というのは、ペンチのような構造で握りも細く長く、対象を保持する部分も支点からかなり離れた部分にあった、和道具だがいまは見かけることもなくなった。その「やっとこさん」が「話題の焦点」に最近の若い男性は、勃起はするが、膣内性交により射精できないというケースが増えているという話題を取り上げている。これでは女性の生涯特殊出生率1.8など、「夢のまた夢」であろう。どうしてこういう若者が増えたのか?ネットのエロ画像の見過ぎか? いずれにせよ、若い世代の出生率の低さは、やがて社会問題になるであろう。

 帰省した娘が私の仕事場から数冊の本を「読みたい」といって持ち出したが、新書本の類なのに、結局読み通せた本はなかったようだ。理由は「読みにくい」である。
 それはよく分かる。彼女が使用しているiPAD、iPhoneはすべて横書きであり、読書用のKindleも横書きである。日本語を縦書きで読むというIT環境がもう消滅しているのだ。
 今日の日本文では、ちょっとテクニカルなタームが入ると、英語の略号やそのスペルアウトを使う必要があるが、これを縦書きにすると読むのに不便である。横組みにしてあれば、この違和感はない。
 「医薬経済」誌も横組みにすれば読みやすく、英字表記も自由に取り入れられると思うがいかがなものか…
 横書きは目下のところ、「日経サイエンス」「ニュートン」「科学」「ナショナル・ジオグラフィック」など理科学誌に留まっているようだが、パソコン画面に書くのも横書き、読むのも横書き、印刷も横書きが普通になっているから、早晩、印刷書物も左横書きに移行するだろうと思う。私も最近では和本を読んでいて縦書きでコメントを記入するのが苦手になってきた。英語本だと横書きでメモが記入できるので楽である。
 講談社から予定している現代新書「第三の移植」は編集者との話し合いで、「横書き、英語ルビ併用、索引と引用文献の充実」という構想が固まっている。執筆も気力の回復に伴い、順調に進み始めた。

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