ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【書評など】松永安左ェ門「電力の鬼:松永安左ェ門自伝」/難波先生より

2016-04-26 11:38:53 | 修復腎移植
【書評など】
1)「買いたい新書」の書評No.318に、松永安左ェ門「電力の鬼:松永安左ェ門自伝」,毎日ワンズ) を取り上げました。
 田中角栄は「土方,土方と馬鹿にしてはいけない。スエズ運河もパナマ運河もみな土方が作った」と言ったそうだ。本書を読むと,実力のある経済人が本当に尊敬に値することをつくづくと感じる。松永安左ェ門(1875-1971)は「日本のフェニキア」,長崎県壱岐島に生まれた。明治8年のことだ。福沢諭吉「学問のすすめ」を読み,彼に魅せられて慶應義塾に入学するため,ハンガーストライキを実行し,親に進学を認めさせた。急死した実父の商店を継ぐため,18歳で一旦退学,三代目「松永安左ェ門」を襲名,実弟に後を託して21歳で復学した。これだけで並みの人物でないことがわかる。
 本書は後年「電力の鬼」と呼ばれ,敗戦後に「発送電・電力九社ブロック体制」を作り上げた人物の自伝である。これが面白いのは揣摩憶測(しまおくそく)の類を排除し,著者の実体験に基づいて,歯に衣を着せずに明治・大正・昭和前期の人物が描かれていることだ。 P.28に「日本三大美男子」に選ばれた時の著者の写真が掲載されているが,本書表紙の晩年の顔と比べて欲しい。これだけ顔が「鬼」に変わった男は,評者は寡聞にして,作家の小松左京以外に知らない。以下はこちらに、
http://www.frob.co.jp/kaitaishinsho/book_review.php?id=1460615936

2)献本お礼=「医薬経済」4/15号のご恵送を受けた。お礼申し上げます。
 本号で一番興味を引いたのは「生島准:技術革新と製薬企業の明日、第67回」が執筆している「iPS細胞の再生医療に光明、慶大が4つの技術で難関を突破」という記事だ。英語のブレークスルーがここでは「技術突破」と訳されている。ともかく「日経」の科学記事でも、ここまで詳しい内容報道はされていない。
 「STAP細胞事件の教訓が生かされたな」と思ったのは、分化したT細胞を用いてiPS細胞を作成し、これを移植用の「心細胞シート」に分化させて用いるという、第1のブレークスルーだ。iPS細胞を移植に用いる場合の最大の危険は、「がん化」にある。
 iPS細胞はいま「臨床研究」が行われているが、鳴り物入りで報道された「理研」眼科医高橋政代医師の「網膜移植」は第1例のあと、中断されている。理由をメディアはまったく報じない。
 生島レポートは、第一のブレークスルーとして、免疫遺伝子の再構成があるT細胞からiPS細胞を作ることで、もしがん化が発生したら、それがiPS細胞(ドナー)由来か、レシピエント由来かが簡単に突きとめられる利点があると指摘している。その通りだ。
 前号については、「記事は面白いが、値段が高すぎる(1冊、74ページで2000円)。よって記事をPDFで送ってくれ」というメールがあった。会社として、電子版を格安で提供されることを期待したい。
 他の3つのブレークスルーについては、割愛する。

 なお、「小径腎がんを利用した修復腎移植」に関しては、もし移植腎にがんが発生した場合には、DNAの全検査以外に、ドナー由来かレシピエント由来かを決定する方法がない。
 これに関してはイタリアのペドッティら(2004)の「1990-2000期間の腎移植例2,526人に発生した104例の固形癌について, 6ヶ月以内10例、6ヶ月以後10例を選び、腫瘍のDNA解析をSTR法で実施.17例で検査可能. 結果: 16/17で腫瘍はレシピエント由来. 1例は決定不能」という論文と、スペインのボイスら(2009)の「移植後14年目に発生した腎がん(肉腫様な部分あり)の DNA解析でレシピエント由来と判明」という報告しかない。つまり移植腎に発生した腎がんが、ドナー由来という医学的証拠はまったくない、ということを述べておきたい。

 俳優の渡辺謙に「早期胃がん」が発見された。彼は「急性骨髄性白血病(AML)」で骨髄移植を受けているので血液型が変わっている。(性格は変わっていない。)
 骨髄移植を受けた患者に発生するがんが、ドナーの造血幹細胞由来だという症例報告が増えている。ドナーの造血幹細胞が間違った臓器に定着し、そこで上皮性のがん細胞に変わるのである。渡辺謙の胃がん手術をどの病院がやったのか知らないが、主治医に知識があってDNA検査をやり、その結果を学会に報告することを期待したい。

 鍛冶孝雄「読む医療No.47」は「権威を背景に宗教化する日本の科学界」というタイトルで、和田秀樹「学者は平気でウソをつく」(新潮新書)と小谷太郎「科学者はなぜウソをつくのか」(dZERO, 2015/6)を紹介していた。要点は「医師や医学を無根拠に信じ込むな」という点にある。同感だ。
 徳州会による「修復腎移植」の先進医療再申請は、近々行われるが、日本移植学会や臨床腎移植学会は、科学的証拠もなしに「権威を背景に宗教化した反対」の態度をとれば、いまや同じような批判にさらされ、日本の移植医療は世界の非難の的になるであろう。
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