昨日ほどの悩ましい判断にまでは至らずに、函館にいつまでいるかの問題に決着がつきました。結論だけ申しますと、函館に連泊してから朝のフェリーで発ちますが、そうなるまでの経緯を振り返る時間が今はありません。道中最後の夜は松風町で一献傾けます。
昨夜訪ねた「てっ平」が、記憶していた以上のよい店だったため、開いていれば二晩続けるにもやぶさかではありませんでした。しかし、日曜定休なら今夜はおそらく休みだろうとも思っていました。それでも念のため訪ねたところ、やはり明かりは消えており、その代わり店先には張り紙が。暇につきズル休みすると謳う、店主らしい洒落心のある文面でした。それでも落胆しなかったのは、一応想定の範囲内だったのに加え、代わりの店の心当たりがあったからに他なりません。その店とは教祖推奨の「函館山」です。
実は、投宿の際に通りがかったとき、店先の行灯が消えているのに一瞬焦りました。この店にまで振られれば、いよいよ後がないからです。まず疑ったのは早仕舞いの可能性ですが、その時点でまだ八時前でした。いくら何でも早いだろうと考え直して浮かんだのは、満席の間は明かりを消しているという仮説です。それはどうやら図星だったようで、谷地頭から戻ったところ、今度は明かりが煌々と灯っていました。暖簾をくぐると先客皆無のカウンターが見え、首尾よく入店という顛末です。
有り体に申しますと、元々多くを期待していたわけではありません。教祖の推奨店とはいっても、長年通ったなじみの店の一つではなく、番組向けに選んだ店と推察されたからです。画面を通じて見る限り、推奨店の多くが持つ老練さまでは伝わらず、現代的な造りの大店という印象でした。それでも他を探そうとまで思わなかったのは、探したところで無駄だろうと、何となく分かっていたからでもあります。往年の賑わいはさておき、駅周辺の繁華街は今や虫食い状態です。盛業中の店の多くも、この店と同様の現代的な大店が多く、ぜひここへと思えるほどの店がありません。どのみち同じ路線の店に落ち着くならば、教祖の太鼓判があった方が確実と考えた次第です。そして結果は期待を超えるものでした。
正確に申しますと、高くはなかった期待値を、現実が上回ったということであり、盛岡のMASSと違ってじみじみ感銘を受けるまでには及びませんでした。まず、眩しいほどの照明に浮かび上がる新築同様の外観は趣に欠け、店内も外観同様現代的です。最近の飲食店に多く見られる安っぽさこそないものの、だからといって味わいもなく、無駄に明るく感じられるとでも申しましょうか。角を切り取ったL字のカウンターが、ガラスケース、ホワイトボード、大皿、寿司桶などに占領され、見通しがよろしくないのも個人的にはいただけません。しかしその後は尻上がりでした。
写真入りの大きな冊子にまとめられた品書きは、眺めるだけでも楽しめた「てっ平」の黒板に比べるといささか野暮です。しかし、その他に横長横書き三段組にまとめられた日替わりのおすすめが一枚あります。噴火湾、木古内、松前などの産地とともに書き込まれ、これだけでも十分と思える内容です。カウンターの他に実質二つの厨房がある大店ながらも、接客のお姉さんの目配りが行き届いており、酒とともに和らぎ水が差し出されるなど、細かな配慮にも抜かりがありません。
尻上がりなのは肴についても同様でした。お通し、刺身こそ目を見張るほどの代物ではなかったものの、貝焼き味噌に着想を得たであろういかゴロ焼は酒の進む一品。身欠き鰊は味噌をつけていただく青森のそれとは違い、鰊のトバを薄切りにして葱と和え、酢味噌から酢を抜いたような特製の味噌ダレでいただくものでした。意表を突くすまし汁のあら汁を含め、一工夫加えられているところはさすがです。一見すると大同小異な店の中から、あえて教祖が推す理由も宜なるかなの一軒でした。
★函館山
函館市松風町10-15
0138-22-7747
1700PM-2330PM(LO)
月曜定休
国士無双・鰊御殿・みそぎの舞
鯨ベーコン
刺身盛り合わせ
生もずく酢
いかゴロ貝焼き
身欠きにしん
あら汁
昨夜訪ねた「てっ平」が、記憶していた以上のよい店だったため、開いていれば二晩続けるにもやぶさかではありませんでした。しかし、日曜定休なら今夜はおそらく休みだろうとも思っていました。それでも念のため訪ねたところ、やはり明かりは消えており、その代わり店先には張り紙が。暇につきズル休みすると謳う、店主らしい洒落心のある文面でした。それでも落胆しなかったのは、一応想定の範囲内だったのに加え、代わりの店の心当たりがあったからに他なりません。その店とは教祖推奨の「函館山」です。
実は、投宿の際に通りがかったとき、店先の行灯が消えているのに一瞬焦りました。この店にまで振られれば、いよいよ後がないからです。まず疑ったのは早仕舞いの可能性ですが、その時点でまだ八時前でした。いくら何でも早いだろうと考え直して浮かんだのは、満席の間は明かりを消しているという仮説です。それはどうやら図星だったようで、谷地頭から戻ったところ、今度は明かりが煌々と灯っていました。暖簾をくぐると先客皆無のカウンターが見え、首尾よく入店という顛末です。
有り体に申しますと、元々多くを期待していたわけではありません。教祖の推奨店とはいっても、長年通ったなじみの店の一つではなく、番組向けに選んだ店と推察されたからです。画面を通じて見る限り、推奨店の多くが持つ老練さまでは伝わらず、現代的な造りの大店という印象でした。それでも他を探そうとまで思わなかったのは、探したところで無駄だろうと、何となく分かっていたからでもあります。往年の賑わいはさておき、駅周辺の繁華街は今や虫食い状態です。盛業中の店の多くも、この店と同様の現代的な大店が多く、ぜひここへと思えるほどの店がありません。どのみち同じ路線の店に落ち着くならば、教祖の太鼓判があった方が確実と考えた次第です。そして結果は期待を超えるものでした。
正確に申しますと、高くはなかった期待値を、現実が上回ったということであり、盛岡のMASSと違ってじみじみ感銘を受けるまでには及びませんでした。まず、眩しいほどの照明に浮かび上がる新築同様の外観は趣に欠け、店内も外観同様現代的です。最近の飲食店に多く見られる安っぽさこそないものの、だからといって味わいもなく、無駄に明るく感じられるとでも申しましょうか。角を切り取ったL字のカウンターが、ガラスケース、ホワイトボード、大皿、寿司桶などに占領され、見通しがよろしくないのも個人的にはいただけません。しかしその後は尻上がりでした。
写真入りの大きな冊子にまとめられた品書きは、眺めるだけでも楽しめた「てっ平」の黒板に比べるといささか野暮です。しかし、その他に横長横書き三段組にまとめられた日替わりのおすすめが一枚あります。噴火湾、木古内、松前などの産地とともに書き込まれ、これだけでも十分と思える内容です。カウンターの他に実質二つの厨房がある大店ながらも、接客のお姉さんの目配りが行き届いており、酒とともに和らぎ水が差し出されるなど、細かな配慮にも抜かりがありません。
尻上がりなのは肴についても同様でした。お通し、刺身こそ目を見張るほどの代物ではなかったものの、貝焼き味噌に着想を得たであろういかゴロ焼は酒の進む一品。身欠き鰊は味噌をつけていただく青森のそれとは違い、鰊のトバを薄切りにして葱と和え、酢味噌から酢を抜いたような特製の味噌ダレでいただくものでした。意表を突くすまし汁のあら汁を含め、一工夫加えられているところはさすがです。一見すると大同小異な店の中から、あえて教祖が推す理由も宜なるかなの一軒でした。
★函館山
函館市松風町10-15
0138-22-7747
1700PM-2330PM(LO)
月曜定休
国士無双・鰊御殿・みそぎの舞
鯨ベーコン
刺身盛り合わせ
生もずく酢
いかゴロ貝焼き
身欠きにしん
あら汁