日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 22:24:02 | 居酒屋
「一富」で思わぬ長居をしてしまいましたが、中洲の夜はまだこれからです。続いては同じ人形小路の「浅草」を訪ねます。
昨秋以来久方ぶりに人形小路を訪ねて驚いたのは、「一富」の並びにあったこの店が姿を消していたことです。古い店構えと、まさに割烹というべき丁寧な仕事ぶり、店主と女将の客あしらいは、「一富」に負けず劣らず秀逸だったこともあり、店主に何かあったのかとあれこれ思案させられました。しかしながら、人形小路の違う区画に移ったと「一富」の店主に聞いて、二軒目は迷うことなくこの店の暖簾をくぐった次第です。

直線のカウンターを中心に小上がりを二つ設けた小さな店内は、カウンターが奥行き方向から間口方向に変わったことを除けば、前の店舗とさほど変わりません。しかしながら、黒塗りだったカウンターが、木目調の化粧板に変わってしまったのはいただけません。てらいがなかった照明も明るめのダウンライトに変わっており、一見するとバーかスナックの跡地に居抜きで入ったようです。古い呑み屋小路の老舗大衆割烹とでもいうべき雰囲気が、この店のよさでもあっただけに、その雰囲気が大分変わってしまったのは残念でした。まあ、店主にも色々と事情があったのでしょう。
もっとも、移転により似て非なる店に変わってしまった天文館の"S.A.O"とは違い、前の店から移せるものは極力移そうと苦心はしたようです。目の前にある千社札を貼った黒塗りの仕切りと、背後にある食器棚、足下の止まり木もおそらくそうなのでしょう。棚に並んだ食器と、中央に掛かった黒板の品書きはもちろん変わりません。その中にあった「白身」を所望すると、 醤油かポン酢かと店主が一言。ポン酢を選ぶと、やがて見た目にも美しいあこう鯛の薄造りが差し出されました。木訥とした腰の低い店主の人柄も、「一富」の饒舌な店主とは一味違ったよさがあります。店の造り以外の部分は、何もかもそのままだったのが幸いでした。

★浅草
福岡市博多区中洲4-1-19
092-291-2040
1800PM-2330PM(LO)

清酒
突き出し(ツブ貝煮付け)
あこう鯛薄造り
和風しゅうまい
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 20:22:41 | 居酒屋
ネオンまたたく那珂川のほとりをしばし歩いて、中洲の人形小路にやってきました。今回博多で呑むならここだと決めていた店があります。教祖おすすめの「一富」です。

この店に始めて立ち寄ったのは二年前、クリスマスを五島で過ごした翌日のことです。福江から四時間以上かかる寄港便で長崎に戻り、「安楽子」で軽く一杯引っかけた後、博多に移動し中洲で呑んだとき、立ち寄った中の一軒がここでした。古い呑み屋小路の情緒と、店主の客あしらいが心地よく、以後福岡へ寄るたび再訪の機会をうかがいながらも、定休日や臨時休業に重なるなどして、これまで振られ続けてきた次第です。今回待望の再訪を果たすと、店内には先客が一人のみ。聖夜の中洲で一人酒を酌むには好都合です。

大雑把に言うなら、もちろん「居酒屋」ということになるのでしょう。しかし、店の造りにしても仕事ぶりにしても、さすがは老舗と感じさせるものがこの店にはあります。まず、暖簾をくぐって右手にある、分厚い白木のL字カウンターに年季が入っています。その中に据え付けられた、カウンターに負けず劣らず分厚く立派な俎板が店主の仕事場です。背後には、氷を使ったこれまた古めかしい冷蔵庫が鎮座しており、整然と並んだ調理器具など、カウンター回りを眺めるだけでも楽しいものがあります。この店内からして、仕事ぶりも推して知るべし。突き出しには、薄切り肉と千切りの牛蒡を使ったすまし汁が出てきました。突き出しに温かいものを出す店というのは、往々にして外れがありません。酒は錫のちろりで湯煎し、袴を履いた細身の徳利に注ぐといった具合に、調理、器、盛り付けの一つ一つに丁寧さが感じられます。
品書きは鯖、鯵、鰯の光り物を中心に、煮魚、焼魚、揚物、一品、鍋物、食事という組み立てです。店主が一人で営む店だけに、それほど豊富なわけではありません。だからといって選択肢に困るということもなく、一人酒には好適。まず選んだ鯖の刺身には、山葵とともに青唐辛子が添えられてきました。次いで選んだ千里鍋は、鰯をぶつ切りにした小鍋です。これらで酒を二本と少し飲み干し、残った出汁を雑炊に仕立ててもらえば、一軒目としては必要にして十分といったところでしょう。

それにしても、今回改めて思うのは、店主が無類の話好きだということです。これほど間断なく喋るのは、自分の知る限り会津若松「麦とろ」の店主と、三日前に訪ねた長崎「桃若」の店主夫妻に若主人だけです。そのどれもが、決して騒々しいわけではなく、むしろ心地よく感じられるのは、真似ようとしても容易には真似のできない人柄、個性によるものといえばよいでしょうか。軽妙な話術につられ、旅のことやら酒のことやら雑多な事どもについて語るうちに、いつしか滞在時間も延び、二本で終わりにするつもりだったお銚子を三本空けてしまいました。
昔ながらの店だけに、勘定は必ずしも明朗ではなく、百円単位の勘定を気にしながら呑む向きにはおすすめできません。しかし、古い呑み屋小路のカウンターに向かい、老練な店主と語らいつつ一献傾けるなら、ここが中洲で屈指の存在といえそうです。

★一富
福岡市博多区中洲4-1-193
092-281-5120
1800PM-200AM(日祝日定休)

酒三合
突き出し
鯖刺身
千里鍋
雑炊
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 18:53:16 | 九州
福岡に着きました。雲海を見下ろしながらの単調な飛行でしたが、一瞬雲が途切れたところで彼方に冠雪した火山が現れ、さらには眼下の狭い湾に見覚えのある斜張橋が架かっているのを見て、ここは長崎だと気付いた瞬間が印象的でした。
やや手間取ったものの、只今宿に入って一息ついたところです。窓の外には那珂川が流れ、中洲のネオンが水面に揺れています。到着の直前まで降っていた雨が上がり、傘要らずになったのは助かります。沖縄がかつてないほど肌寒く、これなら福岡はどれだけ寒いかと思ったところが、体感上ほとんど変わらないのは意外でした。これなら上着は必要ないでしょう。X'masは福岡や長崎でも雪に降られるなど、過去四年続けて寒かっただけに、久方ぶりの暖かい聖夜となりそうです。
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 14:32:09 | 沖縄
荷物を預けて搭乗口へ向かいます。今までならば、那覇空港に着いたが最後、あとは羽田までの無機質な空路と、大荷物を担いでモノレールと電車を乗り継ぐ煩わしい移動が残るに過ぎず、これで旅が終わるという憂鬱さしかありませんでした。しかし、今回の旅はまだ終わりません。そう思っただけでも、自分にとっては苦痛でしかない空路での移動が、多少はましに思えてきます。那覇も福岡も国内有数の大空港であり、天候も一昨日ほどではないだけに、長崎から飛んだ往路ほど楽しめるわけではなく、あくまで苦痛が軽減されるに過ぎません。しかし、沖縄への行き来に地方空港を起点にするという奇策は、思った以上に功を奏したというのが実感です。
やや汗ばんだ昨日とは対照的に、今日は薄手の半袖一枚では肌寒く感じられます。那覇でこれなのですから、聖夜の福岡はかなり冷えそうです。次は到着後にお会いしましょう…
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 14:20:40 | 沖縄
その後年に一度の慰霊を兼ねて魂魄の塔に立ち寄ってから、本島最南端の喜屋武岬を回り、レンタカーを返して那覇空港に移動してきました。名残を惜しむ間もない駆け足ながら、空が多少なりとも明るくなってくれたのは幸いでした。
全行程を終えて思うのは、足かけ三日を注ぎ込んだにもかかわらず、例年になく行動範囲が狭かったということです。北は万座毛、南は喜屋武岬まで行き来したに過ぎず、訪ねた酒場も二晩で三軒といたって控えめでした。国際通りなど近寄りもしていません。しかし、やり残したという感覚がほとんどしないのは、毎年通い続けたことによって一通りの場所を回ることができ、今更欲張る必然性を感じなくなったからでしょう。
たとえば、たかが一週間前後で北海道を一周するなど到底無理な話で、今年の花見であれば函館と小樽と釧路、秋であれば空知からオホーツクといった具合に、主戦場をある程度絞る必要が出てきます。それによって切り捨てられた場所は、次回以降の候補地に回るわけです。この理屈は沖縄においても当てはまるような気がしています。積み残しは次に回せばよいと、すっぱり割り切れるようになったという点で、沖縄も北海道と同じ域に近付いてきたようです。
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 12:07:58 | B級グルメ
朝食をとったばかりでまことに間が悪いのですが、間髪入れずにお昼をいただくことにしました。「ジョージレストラン」でステーキをいただきます。
今回沖縄に上陸して、最初に何をいただこうかと考えたとき、思いついたのはAランチでした。これに対し、滞在時間も残りわずかとなって、最後の食事をどうしようかと考えたとき、思いついたのがステーキだったということです。もちろん腹ごなしをしてから臨みたいのはやまやまながら、この後那覇市街を離れて南下するため、最後の最後で那覇市街に戻ろうとすれば、往復だけで30分は消費してしまいます。そうだとすれば、続けざまになるのを承知の上で、今いただいてしまった方がよいと判断しました。結果的には、朝食を抜きにして今まで引き延ばせばよかったということになります。しかし、朝食の時点では、ステーキに対する執着がほとんどなかったのですから仕方がありません。
沖縄のステーキといえば、肉質云々よりも何よりも質量感です。しかし、当然ながら空腹感は戻っていないため、300gのステーキは選択できず、一番手軽な200gのニューヨークを選択。人気店である「ジャッキーステーキハウス」の盛況をよそに、こちらの先客は一人だけです。Aサインを掲げた古めかしい店内で悠然といただきます。

ジョージレストラン
那覇市辻2-1-9
098-868-5036
1130AM-100AM(月曜定休)
ニューヨーク200g1100円
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 10:46:26 | B級グルメ
本日も移動の前に朝食をとります。複数の選択肢が考えられる中、宿の近くの「花笠食堂」に飛び込みました。
沖縄、とりわけ那覇を中心とした南部の特徴として、個人経営の食堂が至る所に点在していることが挙げられます。食堂とは、定食、麺類、ご飯ものを一通り揃えた、文字通りの食堂です。そば、ステーキなどの専門店には何度も足を運んだのに対して、「食堂」という業態にはとらえどころがなく、これまで素通りを続けてきました。しかし今回、朝食の定番であった漁港の食堂は既に昨日押さえており、その一方でそば屋もステーキハウスも開店にはまだ早いという中途半端な時間だったため、これがよい機会と思い立った次第です。
場所は松山の繁華街の外れ、平屋の建物は小ぎれいに改装されてはいるものの、中は飾り気のないごく普通の食堂といった雰囲気です。テーブルが整然と並び、突き当たりには厨房があって、バンダナをかぶった二人組のおばちゃんが店を差配しています。短冊の品書きは定食、麺類、ご飯ものからステーキまで一通りのものが揃い、これまた絵に描いたような町中の食堂です。野球帽をかぶった中年の一人客が、新聞を広げながら遅い朝食をとっており、自分の後にも一人客が三々五々入ってきました。注文した沖縄そばとじゅうしいは、可もなく不可もなくといった味わいながら、今回「食堂」を選んだのは雰囲気を味わうためだったのですから、そのような観点からは十分目的を果たしたといってよいでしょう。

花笠食堂
那覇市牧志3-2-48
098-866-6085
日曜定休
沖縄そば+じゅうしい650円
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九州沖縄縦断ツアー 四日目

2013-12-24 09:09:00 | 沖縄
おはようございます。昨夜は結局hinode一軒限りという想定外の結果に終わりました。すっかり満腹になってしまったため、宿に戻って腹ごなしをしてから出直そうとしたところが、連日の疲れからそのまま眠りこけてしまった次第です。去年の今頃にも釧路で似たような経験がありました。そのときは年中無休で朝まで呑める「万年青」に救われたわけなのですが、今回は目覚めた時点で店の心当たりもなく、なおかつ今更探す気も起こりませんでした。やはり、一旦宿に戻るとこのような結果になりがちです。
結局、一晩最低三軒はしごするなどと意気込んでおきながら、終わってみれば二日で三軒という控えめな結果でした。実は、一軒目を出てから間髪入れずに次へ移れば、すぐ近くにもよい店はあったのです。しかし、その時点の腹具合からして、腹ごなしをしない限りおいしく飲み食いすることはできない状況でした。次善の策としては、一時間ほど置いてから、閉店間際の「八合一升」で軽く一杯やるのがせいぜいだったのですから、こうなったのもある意味仕方がないでしょう。あれもこれも行けなかったと惜しんでいるわけではありません。数を絞ったことにより、むしろ一軒に心ゆくまで滞在できたのですから、これはこれでよかったのだと思います。

さて、本日は15時の便で福岡へ飛び、そこで聖夜を迎える予定です。その結果、島内で活動できる時間は実質昼過ぎまでとなるため、それほど欲張ることはできません。本島南部を軽く流し、どこかで腹ごしらえをするのがせいぜいではないでしょうか。昨日までの好天とは対照的に、今日は冬場によくあるどんよりした曇り空となっているため、あくまでおまけ程度と割り切ります。やはり今日の目玉は、福岡で過ごす聖夜になりそうです。
blog開設以来六度目の聖夜ですが、その間大阪釧路福岡長崎釧路、そして今年の福岡と、いずれも旅先で過ごしています。大阪のときは福岡からの帰りに立ち寄っており、X'masの前後は北海道か九州のどちらかを旅しているということになります。これは、23日が祝日のため、X'masがかなりの確率で連休または飛び石連休となり、休暇を組み合わせて遠征するのが必然的な流れとなるからです。出発直前に慌てる場面があったとはいえ、なんだかんだで今年も休みが取れたことについては感謝しなければならないでしょう。若干の火種を残してきたのが唯一の不安材料です。心置きなく聖夜を迎えられればよいのですが。
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