花見の旅で会津に連泊したとき、一日を「麦とろ」に、もう一日を「籠太」に注ぎ込むのが順当だと申しました。とりわけなじみの深い店が二つあるなら、それぞれを別の日に訪ねた方がよいという、きわめて当然の理屈を述べたわけです。那覇においてもそのような関係が成り立ちます。初日に訪ねた「八合一升」に対して、本日訪ねるのは斜向かいの"hinode"です。
旅先で呑むという愉しみの原点ともなった「八合一升」と違い、この店に通い出したのは比較的最近のことになります。斜向かいにある小洒落た店が、かねがね気になっていたため、初めて那覇に連泊した三年前、二泊目の特権を活かして飛び込んだのが最初です。およそ中年男の一人酒には似つかわしくない瀟洒な店構えに反し、和洋両刀遣いの献立は居酒屋使いにも好適で、店主と助手の客あしらいも心地良く、以来那覇では必ず立ち寄るなじみの店となって今に至ります。年に一度とはいえ、何度か通って要領を得てきたのはここでも同様です。玄関をくぐって店主と顔を合わせるなり、どちらが先というわけでもなしに軽く挨拶してから、L字カウンターの角に着席しました。
この店について語るなら、まずは小洒落た雰囲気からということになるでしょう。一銀通りを折れて「八合一升」のある路地を突き当たりまで進むと、公園の入り口に面して、一見するとフレンチかイタリアン、あるいは小洒落たカフェかと思わせる瀟洒な構えの店があります。マンションの一階にある軒先からは赤い日除けが下り、店先は様々な鉢植えで飾られて、床から立ち上がる大きな窓の奥に、ダウンライトで薄暗く照らされた店内が見えます。外観に違わず、店内にも「居酒屋」を連想させるものは何一つなく、なけなしの語彙に頼れば「ビストロ」などと形容すれば収まりがよさそうです。
黒い石を天板にしたL字のカウンターは広々して居心地よく、木目調のサッシを使った大きな窓、その窓に沿って斜めに置かれた正方形のテーブルなど、店内のあらゆるものが十分な手間を掛けて周到に作り込まれているようです。外を見遣れば、大きな窓の向こうで鉢植えが林立し、唯一無二の雰囲気を演出しており、奥の厨房はぴかぴかに磨かれて、二人組の料理人が注文をさばいています。店主はカウンターで接客と調理を両方こなし、他の二人は主として接客に回るというのがここの人繰りです。
小さなフォトアルバムを使った品書きは、和洋折衷というより両刀遣いというのが適切でしょう。洋でいうなら、肉類、パスタ、ピザなどのある程度想像がつくものに加えて、「アヒージョ」なる聞き慣れないようなものまで揃います。それなら洋風居酒屋かというと必ずしもそうではなく、和は刺身と寿司に始まり煮魚、干物、天ぷら、小鍋、さらには煮浸しなどのちょっとしたものまで揃い、純然たる居酒屋として考えても必要にして十分です。無節操といってしまえばそれまでとはいえ、これだけの品数を揃え、しかもそれぞれが完成されているのは大したものだと思います。
何度か通ううちに注文の流れが確立してくるのは、この店においても同様。まずはお造りを三品選んで盛り合わせてもらい、次いで沖縄らしいものを一つ、あとは豊富な品書きの中から、腹具合に応じてお好み次第といったところでしょうか。突き出しがない代わりにデザートがつくのは当店流です。二品ある中から紅茶のアイスをいただいて締めくくります。
★hinode
那覇市牧志1-6-13 グリーンヒルハイツ1F
098-863-2332
1800PM-2400PM(LO)無休
オリオン・瑞泉
お造り三点
島らっきょうの天プラ
和牛スジときのこ、チンゲン菜のとろ~り小鍋
ロイヤルミルクティーアイス(おごり)
旅先で呑むという愉しみの原点ともなった「八合一升」と違い、この店に通い出したのは比較的最近のことになります。斜向かいにある小洒落た店が、かねがね気になっていたため、初めて那覇に連泊した三年前、二泊目の特権を活かして飛び込んだのが最初です。およそ中年男の一人酒には似つかわしくない瀟洒な店構えに反し、和洋両刀遣いの献立は居酒屋使いにも好適で、店主と助手の客あしらいも心地良く、以来那覇では必ず立ち寄るなじみの店となって今に至ります。年に一度とはいえ、何度か通って要領を得てきたのはここでも同様です。玄関をくぐって店主と顔を合わせるなり、どちらが先というわけでもなしに軽く挨拶してから、L字カウンターの角に着席しました。
この店について語るなら、まずは小洒落た雰囲気からということになるでしょう。一銀通りを折れて「八合一升」のある路地を突き当たりまで進むと、公園の入り口に面して、一見するとフレンチかイタリアン、あるいは小洒落たカフェかと思わせる瀟洒な構えの店があります。マンションの一階にある軒先からは赤い日除けが下り、店先は様々な鉢植えで飾られて、床から立ち上がる大きな窓の奥に、ダウンライトで薄暗く照らされた店内が見えます。外観に違わず、店内にも「居酒屋」を連想させるものは何一つなく、なけなしの語彙に頼れば「ビストロ」などと形容すれば収まりがよさそうです。
黒い石を天板にしたL字のカウンターは広々して居心地よく、木目調のサッシを使った大きな窓、その窓に沿って斜めに置かれた正方形のテーブルなど、店内のあらゆるものが十分な手間を掛けて周到に作り込まれているようです。外を見遣れば、大きな窓の向こうで鉢植えが林立し、唯一無二の雰囲気を演出しており、奥の厨房はぴかぴかに磨かれて、二人組の料理人が注文をさばいています。店主はカウンターで接客と調理を両方こなし、他の二人は主として接客に回るというのがここの人繰りです。
小さなフォトアルバムを使った品書きは、和洋折衷というより両刀遣いというのが適切でしょう。洋でいうなら、肉類、パスタ、ピザなどのある程度想像がつくものに加えて、「アヒージョ」なる聞き慣れないようなものまで揃います。それなら洋風居酒屋かというと必ずしもそうではなく、和は刺身と寿司に始まり煮魚、干物、天ぷら、小鍋、さらには煮浸しなどのちょっとしたものまで揃い、純然たる居酒屋として考えても必要にして十分です。無節操といってしまえばそれまでとはいえ、これだけの品数を揃え、しかもそれぞれが完成されているのは大したものだと思います。
何度か通ううちに注文の流れが確立してくるのは、この店においても同様。まずはお造りを三品選んで盛り合わせてもらい、次いで沖縄らしいものを一つ、あとは豊富な品書きの中から、腹具合に応じてお好み次第といったところでしょうか。突き出しがない代わりにデザートがつくのは当店流です。二品ある中から紅茶のアイスをいただいて締めくくります。
★hinode
那覇市牧志1-6-13 グリーンヒルハイツ1F
098-863-2332
1800PM-2400PM(LO)無休
オリオン・瑞泉
お造り三点
島らっきょうの天プラ
和牛スジときのこ、チンゲン菜のとろ~り小鍋
ロイヤルミルクティーアイス(おごり)