MT MANIAX

苦難の時にこそ、われわれは隣人に対して寛大であらねばならない。そうしていれば世界はわれわれにとって寛大なものになるはず。

福音館は謝罪・回収する必要があったのか?

2009年12月29日 | 日記
 福音館書店から発刊された月刊「たくさんのふしぎ」2010年2月号『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』が販売中止になるという記事を読みまして、興味を持ち、調べました。
 興味を引いたきっかけは福音館書店という出版社名です。エルマーとりゅう、だるまちゃんとてんぐちゃん、ぐりとぐら等々、子供のころに福音館書店の絵本はたくさん読んだ記憶があります。福音館書店の社名という出版社名に反応したのだと思います。
 販売中止になった経緯をざくっと説明すると、『おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり』にパイプを吸ったおじいちゃんが登場し、これが嫌煙団体の癇に障り、標的にされたためです。読売新聞の記事を読んでみますと……

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愛煙家おじいさん登場、児童誌が販売中止に

 福音館書店(塚田和敏社長)は28日、月刊「たくさんのふしぎ」の2010年2月号として発売した「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」(文・絵、太田大輔)を販売中止にすると、ホームページで発表した。
 対象年齢は小学校3年生からで、発明家のおじいちゃんが2人の孫に江戸時代の暮らしを説明する内容。おじいちゃんはたばこ好きの設定で、喫煙したまま孫たちと同席する場面が何度も描かれている。
 喫煙に反対する団体などから「たばこを礼賛している」「たばこ規制枠組み条約に違反する」といった指摘があり、同社は販売中止を決定した。
 ホームページでは、塚田社長名で「(たばこは)小道具として使用したものであり、喫煙を推奨したりする編集意図はまったくありません」と説明。「しかしながら、子どもの本の出版社として配慮に欠けるものでした」と謝罪した。
(2009年12月29日05時08分 読売新聞)
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 なんだか怪しい感じの新聞記事です。「おじいちゃんはたばこ好きの設定で、喫煙したまま孫たちと同席する場面が何度も描かれている。」というところがおかしいです。なぜ「何度も描かれている」というように書かれているのでしょうか。「何度も」と書かずに、例えば「9回描かれている」というように具体的な回数を書けばいいのに。なぜわざと、ぼかして書くのでしょうか。
 福音館書店のホームページには謝罪文が掲載されてました。平謝りのような感じの文章です。
 しかし福音館書店は本当にこのうような対応をする必要があったのか疑問に思います。まっさきに頭に浮かんだのは「ちびくろサンボ」です。「ちびくろサンボ」一斉絶版時に感じた臭いを、今回の件からも感じられました。
 もう少し調べたいと思い、各紙の記事を読んだのですが、肝心の「喫煙に反対する団体」の名称が描かれていませんでした。自力でネットで調べてみますと、NPO法人の「「子どもに無煙環境を」推進協議会」という団体がヒットしました。このページの中に福音館書店宛ての抗議文章が掲載されていました。

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福音館書店 御中

『たくさんのふしぎ』2010年2月号への抗議(子どもの受動喫煙について)

『たくさんのふしぎ』2010年2月号「おじいちゃんのカラクリ江戸ものがたり」を拝読し、とても驚いています。
http://blog.goo.ne.jp/kuba_clinic/e/efab983a0f4c6a6200cd6d3f24db4860

子ども達にパイプタバコの受動喫煙を平然と浴びせかけているシーンが数ページもあり、許せないと思います。
ましてパイプタバコの煙は紙巻きタバコより刺激性が強いですし、作者なり出版社の無知では済まないです。

そもそも子ども達の大半はタバコの煙を嫌がります。子ども達が嫌がっているどころか受け入れている場面には驚きを越え怒りを覚えます。

JTのたばこ塩博物館も協力していますが、この結びつきにも唖然とします。

絵本など児童書出版大手で良書発刊に評価の高い福音館書店ともあろう所が…


私たちは子どもを受動喫煙から守るための諸活動を20数年にわたり行っていますが、児童書でこんなにも平然と子どもに受動喫煙を浴びせかける場面はこれまでに無かったように思います。無知で済まない「子どもに受動喫煙を浴びせかける悪質な意図」も感じざるを得ません。

1.この本の早急な回収を求めます(販売・配本済みのものも全て)。
2.子ども達へ謝罪を求めます。この謝罪を社会に公表してください。
3.JTのたばこと塩の博物館とのつながりの経緯と連帯責任の釈明を求めます。
4.今回の発刊に至った経緯の公表と編集者及び御社の責任者の処分を求めます。

NPO法人 子どもに無煙環境を推進協議会  2009.12.26
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 なんだかこんな文書を読むと、げそっとします。ところどころ、変で、タドタドシイ日本語が混ざっています。一番イヤなのは、4つの要求のうちの2番目の要求です。「2.子ども達へ謝罪を求めます。」という箇所です。日本人でいることが嫌になるような文章です。こういう団体が一番うっとおしいです。
 しかし、この4つの要求は絵本会社にとっては致命的です。そんな要求を出版社に求めるには、書かれている抗議文書の内容だけでは、根拠があまりにも希薄だと思います。「「子どもに無煙環境を」推進協議会」が根拠としているのは、次の2点です。

(1) 子供向け絵本でタバコが登場した。
(2) JTが運営するたばこと塩の博物館が協力している。

 (2)についてはグレーとしか考えられないと思います。(2)を根拠としたいのであれば、調査して調査結果を公表した上でないと説得力がありません。仮に、JTが絵本会社に金を渡し、サブリミナル的にタバコを登場させる絵本の発行が行なわれたとしましょう。そうであれば、巻末に「たばこと塩の博物館」という名前は出さないと思います。黒い繋がりが何もないから、巻末に協力として名前が出てきた、と考える方が無理がないと思います。
 (1)については、もう根拠としては全く話にならないと思います。名探偵シャーロックホームズはどうやねん。ムーミンパパはどうなるねん。ルパン三世の次元はどうやねん。子供向けのメディアでタバコを吸うキャラクターは無数に存在します。これら全てに対して、回収と謝罪を求められるものなのでしょうか。
 1日遅れの27日付けで日本禁煙学会からも同様の文書が作成され、文部科学大臣、全国学校図書館協議会会長、全国学校図書館協議会理事長、日本図書館協会理事長、全国公共図書館協議会会長に送られたようです。ひどい話です。福音館書店にどれくらいの圧力がかかったのか、想像してしまいます。
 最終的に福音館書店は謝罪、回収の対応を行なうこととなりました。何だか釈然としない気分です。

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2 コメント

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なんだか嫌な感じです (mayuri)
2010-01-03 19:42:09
私は、喫煙者ではありませんが、
喫煙、飲酒などは大人の場合
法律で禁じられているわけでもない
れっきとした嗜好品です。
いわば趣味と同じですよね。。
昔、他界した私の曾祖母は相当なヘビスモで
ひ孫たちの前でも平気でぷかぷかタバコを
ふかしてましたが、今となってはほのぼのした
良い思い出です。
そんな小さなことに目くじらたてるより
もっと大事なことがあるんじゃないでしょうか??
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Unknown (moritomoaki2001)
2010-01-03 22:47:55
コメントありがとうございます。
飛行場のせまい喫煙室の中で
スパスパ吸っている人が、いつも気の毒です。
今ぐらいまで分煙が進めば、喫煙者に対して
要求することは何もないと思えるのですが……。
何が何でもタバコを悪者に仕立てたいのですね~。
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