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もじもじ猫日記

好きなこといっぱいと、ありふれない日常

「さくらん」

2007-03-24 23:48:45 | 映画
蜷川実花ワールド炸裂。
オープニングからハートを掴まれる。
吉原のツクリモノの美しさにぴったりの、ビビッドカラー。
なにせワタシ赤が大好きなもので。

やせっぽちの買われてきた娘、きよ葉。
気の強さは呆れるほどだ。
自分の運命を呪わなければ、諦めもしないきよ葉の力強さ。
女郎になるのは嫌だと折檻にも懲りず、足抜けをたくらむ。
きよ葉の負けん気に火をつけるのは、
花魁・粧ひの意地悪にみせかけた言葉。
「客に言いたいことを言わせるのが手練手管」
美しさだけでは花魁は勤まらないのだね。
”苦界に身を沈める”
なんて言葉をせせら笑うようなしたたかな女たち。

艶やかな色彩は着物から、ふすま障子建具までに溢れる。
そして、セットも小道具も監督の女子的こだわりが満載。
きよ葉が最初に着ているみすぼらしい着物も、
実は地味なだけでかわいらしかった。

色彩ばかりを取り上げられる蜷川監督だけれど、
さすがに写真家。
光と影との扱い方が見事。

多分女性と男性では、感想がとても違いそうな作品。
風呂場のシーンで映し出される沢山の胸。
色っぽくも神秘的でもなく美しくも無い生身の女性の胸に、
男性スタッフが意義を唱えたらしいが、
どんだけ夢見がちなんでしょう、男子。

土屋アンナはまあアレですが、
木村佳乃と菅野美穂がいいなぁ。
艶やかさと意地悪さと女心の複雑さを見せてくれる。
ゴージャス感がないとさ、やっぱ花魁なんだから。

夏木マリはもうあの路線なんですね。
蓮司さんも食えないヤツで。
あと、日暮に本当に惚れてしまう大名。
すごくいい人なのに、椎名桔平だから『なんかどんでん返しが?』
と思ってしまった。
安藤政信ってストイックが似合うなぁ。
あ、ご隠居がすごくステキでした。

あと、ゲストも豪華。
女衒の小泉今日子に始まり
客の、大森南朋・庵野監督・キヨシロー・ゴリは解りましたが、
『もしや』の長塚圭史もエンドロールで確認。
解らなかったのは、津田寛治・古厩監督・ギャラリスト小山氏。
おおっ、と思ったのは
女郎全てにちゃんと名前があったこと。
監督のこだわりか脚本家のこだわりか解らないけれど、ステキ。

「金魚はびいどろの中でだけ生きてゆける」
女郎だけではなく、
大多数の人々は自分の生きられるびいどろの中にいると思うよ。
他人のびいどろがうらやましく見えたりするじゃん。

お客さんに年配者がちらほらいたのは、何効果?