《主人公の「私」が、各地の立ち食いそば屋を食べ歩く小説です》
朝霞(2)
すぐに玉子そばができて呼ばれる。私は受け取ると、着席して箸を取った。
玉子そばでちょっと失敗したかな、と思う。玉子そばはそばの上に生卵を落とすのだけなので、ハズレのないのが長所だ。しかし汁に同化してしまう具なので、汁を全部飲み干さないともったいないことになる。なので、お腹がすいていないときは苦しいメニューなのだ。汁を飲まなくてももったいないと思わなくてすむ、固定物の具にすればよかった。
そんなどうでもいいことを思いながら、私は黙々と食していく。だいたいにおいて、腹がすいていないときに食べる方がどうかしているのだ。そんなヘンテコなことをしている以上、いかなるときも汁を飲み干すぐらい徹底するべきである。
ガリレオ八兵衛の麺は歯ごたえがあり、なかなかのものだ。わざわざ来た甲斐があったというものだ。また機会を作って、他のメニューも食べてみたくなった。
お客がぽつりぽつりと入って来て、食券を差し出している。この店には煮込みうどんやガリレオそばなど、見るだけでも見てみたいメニューがいくつかあったが、客の注文は天ぷらそばなどの定番メニューだった。
食べ終えた私は食器を返却し、表へ出た。この店は表に大きくメニューが貼ってある。私はそれを携帯電話で写すと、駅の階段へと向かっていったのだった。
(朝霞・おわり)