曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

小説・立ち食いそば紀行  高価なメニュー(1)

2012年10月02日 | 立ちそば連載小説
 
 
高価なメニュー(1)
 
 
通常の飲食店であれば、まずは味が重要。それに続いて金額となる。迅速さは、さほどでもない。
それが立ち食いそばではガラッと優先順位が変わって、まずは迅速さ。これが最も大事なこととなる。そのあとで金額、安いかどうかとなり、最後に味、美味いかどうかとなる。とにもかくにも「立ち食いそば」と「呑み屋での一杯目のビール」というものは、待たされては意味がない。
 
そんな性質を持つ立ち食いそばなので、これまで何度か、これはまずい! とうなるそばを味わった。最もひどかったのは中部地区のとある駅のホーム上の店舗で、わたしは残して返却してしまった。もうかなりの年月が経っているので今は変わっていると思うが、逆の意味でとても心に残る一杯だった。
 
そこまで記憶に残るものでなくても、イマイチだなぁと思うことはしょっちゅう。しかししょうがない。優先順位が3番目のことだからだ。味わうのなら定食屋に行ってよ、と言われればわたしはなにも言い返せない。
 
しかし優先順位2番目の金額に関しては、どこに行ってもわりと抑えられている。丼とのセットにしなければ、豪華な具を乗せてもほぼワンコインで済ませられる。この業界、早さの次に安さに重きを置いている様が伺える。
 
ところが三鷹駅の彩花庵は、サイドメニューを付けなくてもワンコインで済まないのだ。最もワンコインを飛び出すのはこの店のウリの武蔵野うどんで、一般のメニューはワンコイン内なのだが、しかし訪れる客の半数程度は武蔵野うどんの注文なので、立ちそば界では一段高い値段設定の店と言ってもよい。
 
武蔵野うどんはつけ麺タイプで、きのこ、肉ねぎが580円。両方入っているもので680円。わたしは肉ねぎにいなり120円を付けたので700円。
500円玉1枚に100円玉2枚。わたしは小食で丼を付けることは滅多にないので、この金額の投入はホントに久々だ。
 
わたしは細長い店内を奥まで進み、食券を差し出した。
 
 
(高価なメニュー つづく)
 
 

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