曠野すぐりBLOG 「小説旅日記」

「途中から読んでも内容の分かる連載小説」をいくつか、あと日記を、のんびりと載せていきます。
 

〔南浦和〕 浦和競馬場

2011年01月02日 | 彷徨う
 
昨年最後に訪れた駅は、南浦和だった。
 
 
武蔵野線の駅は、なぜか冷たい風が吹きすさぶ時期に訪れたくなる。強い風を受ける高架駅や、日の当たらない地下の駅ばかりで、それらもほとんどが畑や雑木林などで取り囲まれている。だから、すごく寒い。他の首都圏を走る通勤電車と比べると、寒さが五割り増しなのだ。
でも、だからこそ、いいなぁとも思う。ポケットに手を突っ込んで肩をまるめ、小さく足踏みしながら佇んでいると、じんわりと「わびしさ」というものを堪能できるのだ。
 
私の行ったのは、間もなく大晦日という日の昼すぎ。南浦和は京浜東北線も通っていて、気ぜわしさが駅全体に漂っていた。
 
通路にある立ち食いそばが、私の袖を引く。ここは「一ぷく」で、埼玉県の駅に多くあるチェーン店だ。ちょっと立ち止まったが、けっこう混んでいたので寄らずに改札を出た。
階段を降りて地上に出る。まず目に入るのは立ち食いの「山田うどん」だ。ここでも少し迷ったが、通り過ぎて信号を渡った。
 
南浦和に来たのは、浦和競馬場に東京大賞典の馬券を買いに行くためだ。大賞典は大井競馬場でやっているので現地に行く方がいいのだろうが、場外馬券場と化している年末の浦和競馬場を見てみたくて、こちらの方に来たのだった。
競馬場までは無料バスが走っているが、私はいつも歩いて向かう。競馬場のある街の眺めが好きだし、それほどの距離でもない。
10分ほど歩いて競馬場に着く。意外にもけっこう混んでいる。建ち並ぶ飲食店も盛況だ。
閑散とした雰囲気を味わいたかったのでちょっとがっかりだが、でも競馬場にはいいことだ。私は大賞典の馬券だけ買うとすぐに競馬場をあとにした。
帰りも歩き。浦和は坂道だらけで、いくつか上り下りしながら駅に向かう。
 
しばらくすると、武蔵野線の高架が見えてきた。だいだい色のラインが塗られている。いい眺めだなぁ、と思う。長年風雨に打たれてくすんだコンクリートに、申し訳程度の明るい色。
私は高架まで突き進んで、その下を歩いて南浦和駅へと戻っていったのだった。