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習作の貯蔵庫としての

自分の楽しみのために書き散らかした愚作を保管しておくための自己満足的格納庫ですが、もし感想をいただけたら嬉しく存じます。

のび太とカツオの間にあるもの

2012-01-29 15:45:50 | 漫画とアニメ
 野比のび太と磯野カツオは、どちらも全国民的知名度を持つ漫画の主要登場人物(のび太は明確に主人公)であるとともに、どちらもアニメ版が歴史的長寿番組であるおかげで、日本人で知らない者は少数派と言っていいぐらいの著名キャラクターである。
 そして、彼らは、少なくともアニメ版においては同学年である。ともに小学校5年生である(※1)。


 国民的アニメといっても、ロボットアニメや萌えアニメのように熱心なファンがつくような作品ではないため(とくに『サザエさん』は)、双方の小学5年生の少年、すなわちのび太とカツオもことさらに比較の俎上に乗ることは少ない。
 が、ともすれば、どちらも「勉強のできない劣等生」というような、同じカテゴリーに入れられてしまいがちではないか。いや、先述の通り、わざわざ比較検討の対象にもなっていないのが現状だが、両者の相違というようなものはあまり意識されず、わりと両方とも、勉強嫌いで怒られてばっかりいる記号的キャラクター、というような印象でとらえている向きが少なくないのではないか。

 しかし、念のため(本当に念のため)、強調しておく。とくに磯野カツオの名誉のために。
 結論を最初に言ってしまうと、磯野カツオは野比のび太とは比較にならないほど頭の回転にすぐれ、大人が何を求めているか、どうしたら喜ばれるかなどを瞬時に判断し、その通りに器用に行動できる、きわめて「頭のいい」少年である。トム・ソーヤのように。
 と言えば、誰でも「ああ。そういえば、たしかに」と首肯するところだろう。


 たしかに、アニメのカツオは勉強嫌いという点が強調され(※2)、妹のワカメの優等生ぶりと対比され(※3)、たえず父親に怒鳴られている印象が強いが、それでも、のび太のように一般常識的な無知が描写されることはほとんどない。たとえば、のび太が原作でドラえもんに「君は本当にバカだなあ」と、その無知をあきれられるような、そういう場面はカツオに関する限り皆無のはずである。むしろ、大人から「何でそんなこと知ってるの?」と逆の意味であきれられるタイプだろう。

 私個人は野比のび太をおとしめる意図はないが、長編はあくまで別作品として膨大な正編群を見た限りでは、後期にはエコロジスト的なやさしさを強調されるなど、性格的に良いところも(まれに)あるものの、カツオ的な「学業成績とは別の本質的な『頭の良さ』」とでも言うべき部分を見せたことは実際ほとんどない(※4)。
 それに対し、カツオはアニメにおいても、その要領の良さに大人が舌を巻くという場面は数多い。そして、原作においても、修学旅行先の旅館から「ぜひぜひ養子に」と見込まれるような如才なさや、わらしべ長者テクニックでクリスマスツリーを入手してしまう世渡りの上手さなど、カツオの才気を裏づけるエピソードは枚挙にいとまがない。


 まったく、別にここでわざわざ強調しておく必要もないぐらいに自明のことだったかもしれないが、以前に、のび太とカツオを同じ5年生というだけで、似た者同士キャラのように認識している向きがあったので、とくに私が言う義理もないが、書きとめておいた次第である。


 お粗末様でした。




※1
原作でのカツオの学年は不明確である。
一方のび太の原作での学年は、原作が学年誌(『小学○年生』)に掲載されていたため、どの雑誌が初出かによって変わる。


※2
ついでにいえば、勉強ができないという部分は仮にのび太と共通だとしても、スポーツ全般がすべてダメなのび太と違って、カツオは外で遊ぶことがすきな活発な「昭和の子ども」である。


※3
なお、原作をよく知る向きには言わずもがなのことであるが、本来の原作のワカメは、かなりわがままで、そしてちょっと知能の足りない感じの子どもである。しずかちゃんのような(そういえば、長年に渡って声が共通だったっけ)優等生キャラはアニメだけの設定である。


※4
余談ながら、『ドラえもん』の圧倒的な知名度ゆえ、のび太をもって藤子F不二雄の典型的代表キャラのように語られることも多いが、個人的には少し違和感がある。
藤子F不二雄氏の他の児童向け作品(多くは家庭内異物居候もの)においても、のび太のような一人っ子の小学生男子がしばしば主役格として登場するが、勉強が嫌いということはおおむね共通で、スポーツや喧嘩も得意ではないとしても、『パーマン』の満夫のようにスポーツへの参加自体には積極的なケースもあるし、『モジャ公』の空夫などは強くはないが好戦的なキャラクターである。逆に『キテレツ大百科』の英一のようにスポーツは苦手でも勉強ができるというキャラもまれにいる。
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2 コメント

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Unknown ( )
2014-06-21 22:39:13
ワカメは勉強は出来る方ではないが、知能の足りない感じの子どもという描写も特に無い

それこそ原作を読んでいれば皆知っていることであろうが、彼女はアニメとは違い幼稚園~小学校に入りたて程度の年齢に描かれている
(しっかりした小学3年生のパンツ丸出しは不自然だが、その程度の年齢のこどもなら不思議でもなんでもない
しかもアニメ版は何故か異常なほどかたくなに常に丸出しだ)

アニメのタラちゃんの言動(原作有りの)の殆どが実はワカメの行動なのである
タラオの出番はあまり無い

巻数が進むにつれ年齢も少し上がってくる感じだが
その時には、それなりに年相応の行動もとっている


ついでに言うとカツオはことある事に勉強をしまくっているし、家族が注意する場面もまれだ
返信する
コメントくださる方がおられようとは (miushin4287)
2014-06-22 07:47:14
こんにちは。
どちらのどなた様かは存じ上げませんが、わざわざ
こんな自己満足的過疎ブログごときをご覧くださって、
そして、コメント足跡まで残していただいて、
御礼申し上げます。
今後の拙稿執筆の参考とさせていただきます。
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