
2 照ノ富士の師匠のこと等の雑感
ところで、今年の夏に定年を迎える(※6)、照ノ富士の師匠の伊勢ケ浜親方といえば、私が高校生の頃(1990年前後)に横綱だった元旭富士である。
90年前後の、旭富士のいた時代というのは、千代の富士(元九重)を中心に角界がまわっていた時代であるが、80年代後半は千代の富士に保志改め北勝海(八角)、北尾改め双羽黒、大乃国(芝田山)。それから双羽黒の廃業後は90年代初頭に千代の富士、北勝海、大乃国、そして旭富士と、昨今からは想像もできない4横綱並立という頭デッカチの時代であった。
その中で、一番目立たずに、一番人気がなかった旭富士が、今や照ノ富士を筆頭に、尊富士や熱海富士といった有名人気力士を多数擁する伊勢ケ浜帝国の総帥として、角界で最も知名度の高い親方になっているというのがおもしろい(※7)。
私がよくレファレンスとして閲覧させていただいている「大相撲おつかれマツェラート」の管理人さんが、旭富士について「まるでやる気のない顔」だったなんて書いているのを読んで、思わず
「そうそう!たしかに、やる気なさそうだった(笑)」
と、膝を打って大笑いしたものである(※8)。
ところが、そんないかにもやる気なさそうな顔と態度で、稽古嫌いだったと言われていて、今でもやる気のなさそうな風貌に見える旭富士が、実は今日では相撲界で最も稽古の厳しい伊勢ケ浜一家の組長として恐れられているというのが、これまた意外性があっておもしろい(※9)。
まあ、やる気が「なさそう」なんていうのは、見る人が勝手にそう思っていただけで、本人にとっては、心外な言われ方だったんだろうが。・・・
でも、そのやる気なさそうなところがおもしろくて(※10)、ちょっとだけファンだった自分としては、30数年の時を隔てて、指導者としての旭富士が見事な成果を上げていることに驚嘆するとともに、弟子と一緒にCMにも出たりするような人気者になっているということに、何だか感慨無量になって、やっぱりちょっと嬉しかったりするところである(※11)。
(※6)
親方には定年がある、というのは、改めて考えればおもしろいことである。
だって、プロ野球の監督・コーチに定年なんてないものね。
と、そこのところが、プロ野球選手と力士との地位の根本的な違いである。
一言で言うと、力士はサラリーマン、野球選手は自営業である。
野球選手は、税法上は個人事業主となる。球団との関係は雇用関係ではない。球団から見ると、いわば「外注」のようなもので、年ごとに専属請負契約を結んでいるに過ぎない。ある年は年俸いくら、またある年は年俸いくらで契約を更改する。
で、たとえば、年俸6000万なら、それを12で割って、月500万。そこからとりあえず税金等を引いた額を振り込まれるが、年明けには確定申告して、必要経費の控除を受ける(高額年俸の選手の中には、税金対策として、形式上、一人プロダクションとして法人化して、その個人事務所と球団との法人契約の形をとる人も多い。金田正一のカネダ企画や長嶋茂雄のオフィスエヌなどが知られている)。
ポイントとしては、年俸を払うのは読売球団とか阪神球団といった各チーム。当然ながら、日本プロ野球機構が払うわけではない。
一方、力士は基本給+諸手当てというサラリーマンと同じ給与生活者である。そして、その給料は日本相撲協会から貰っている。つまり、身分の上では協会職員である。そう。部屋から貰うのではなく、協会から直に貰うのだ。
これは、親方もたぶんそう。だから、サラリーマンと同じく定年があるというわけだ(協会理事長とかになると、給与でなく年俸制の役員報酬になって、定年がなくなるのかもしれないが)。
その意味では、所属部屋は会社というよりは会社の中の部署のような感じか。
結果、相撲界はメジャーリーガーのように年間何十億とかってバカみたいな高額所得者はいない代わりに、プロボクサーなんかと違って、末端でも皿洗いのバイトなんてせずに生活できるという社会主義的に完成された共同体となっていて、これは一つのシステムモデルとして注目に値しよう。
(※7)
弟子に何でも自分と同じ〇〇富士という名前をつけちゃうのも、やや安易という気がしないでもない。宝富士だの熱海富士だの錦富士だのって、まるで日本酒の名前みたいだ(笑)。
ちなみに、本文でタイトルを挙げた「大相撲おつかれマツェラート」では、八角親方が自分の現役時代の四股名「北勝海(ほくとうみ)」から、弟子に「北勝〇」と名付けまくっていることについて、管理人さんが「勝」は「と」とは読まんやろと、しごくまっとうなツッコミを入れていたのには、強く同意してしまった。
もっとも、それを言ったら、伊勢ケ浜、すなわち元旭富士の弟子の安馬改め日馬富士も、なぜ「日」と書いて「はる」なのか不思議なのだが。漢和辞典を引いてみないと迂闊なことは言えないが、「日」で「はる」と読む読み方なんてあるんだろうか?
(※8)
ちなみに、「大相撲おつかれマツェラート」の管理人さんは、私の大学時代の学友である。
(※9)
でも、元横綱旭富士の伊勢ケ浜親方、という肩書きを知らずに、眼鏡とスーツ姿のこの人をテレビで見たら、案外、スポーツ界の人というより、財務省ナントカ課長、とかそんな人だと思っちゃいそうだ。
(※10)
ファンになる動機としては、ずいぶん失礼な理由だ(笑)。
(※11)
https://www.youtube.com/watch?v=iz-dDDoT41s
https://www.youtube.com/watch?v=Yagm91ezvjY
ところで、今年の夏に定年を迎える(※6)、照ノ富士の師匠の伊勢ケ浜親方といえば、私が高校生の頃(1990年前後)に横綱だった元旭富士である。
90年前後の、旭富士のいた時代というのは、千代の富士(元九重)を中心に角界がまわっていた時代であるが、80年代後半は千代の富士に保志改め北勝海(八角)、北尾改め双羽黒、大乃国(芝田山)。それから双羽黒の廃業後は90年代初頭に千代の富士、北勝海、大乃国、そして旭富士と、昨今からは想像もできない4横綱並立という頭デッカチの時代であった。
その中で、一番目立たずに、一番人気がなかった旭富士が、今や照ノ富士を筆頭に、尊富士や熱海富士といった有名人気力士を多数擁する伊勢ケ浜帝国の総帥として、角界で最も知名度の高い親方になっているというのがおもしろい(※7)。
私がよくレファレンスとして閲覧させていただいている「大相撲おつかれマツェラート」の管理人さんが、旭富士について「まるでやる気のない顔」だったなんて書いているのを読んで、思わず
「そうそう!たしかに、やる気なさそうだった(笑)」
と、膝を打って大笑いしたものである(※8)。
ところが、そんないかにもやる気なさそうな顔と態度で、稽古嫌いだったと言われていて、今でもやる気のなさそうな風貌に見える旭富士が、実は今日では相撲界で最も稽古の厳しい伊勢ケ浜一家の組長として恐れられているというのが、これまた意外性があっておもしろい(※9)。
まあ、やる気が「なさそう」なんていうのは、見る人が勝手にそう思っていただけで、本人にとっては、心外な言われ方だったんだろうが。・・・
でも、そのやる気なさそうなところがおもしろくて(※10)、ちょっとだけファンだった自分としては、30数年の時を隔てて、指導者としての旭富士が見事な成果を上げていることに驚嘆するとともに、弟子と一緒にCMにも出たりするような人気者になっているということに、何だか感慨無量になって、やっぱりちょっと嬉しかったりするところである(※11)。
(※6)
親方には定年がある、というのは、改めて考えればおもしろいことである。
だって、プロ野球の監督・コーチに定年なんてないものね。
と、そこのところが、プロ野球選手と力士との地位の根本的な違いである。
一言で言うと、力士はサラリーマン、野球選手は自営業である。
野球選手は、税法上は個人事業主となる。球団との関係は雇用関係ではない。球団から見ると、いわば「外注」のようなもので、年ごとに専属請負契約を結んでいるに過ぎない。ある年は年俸いくら、またある年は年俸いくらで契約を更改する。
で、たとえば、年俸6000万なら、それを12で割って、月500万。そこからとりあえず税金等を引いた額を振り込まれるが、年明けには確定申告して、必要経費の控除を受ける(高額年俸の選手の中には、税金対策として、形式上、一人プロダクションとして法人化して、その個人事務所と球団との法人契約の形をとる人も多い。金田正一のカネダ企画や長嶋茂雄のオフィスエヌなどが知られている)。
ポイントとしては、年俸を払うのは読売球団とか阪神球団といった各チーム。当然ながら、日本プロ野球機構が払うわけではない。
一方、力士は基本給+諸手当てというサラリーマンと同じ給与生活者である。そして、その給料は日本相撲協会から貰っている。つまり、身分の上では協会職員である。そう。部屋から貰うのではなく、協会から直に貰うのだ。
これは、親方もたぶんそう。だから、サラリーマンと同じく定年があるというわけだ(協会理事長とかになると、給与でなく年俸制の役員報酬になって、定年がなくなるのかもしれないが)。
その意味では、所属部屋は会社というよりは会社の中の部署のような感じか。
結果、相撲界はメジャーリーガーのように年間何十億とかってバカみたいな高額所得者はいない代わりに、プロボクサーなんかと違って、末端でも皿洗いのバイトなんてせずに生活できるという社会主義的に完成された共同体となっていて、これは一つのシステムモデルとして注目に値しよう。
(※7)
弟子に何でも自分と同じ〇〇富士という名前をつけちゃうのも、やや安易という気がしないでもない。宝富士だの熱海富士だの錦富士だのって、まるで日本酒の名前みたいだ(笑)。
ちなみに、本文でタイトルを挙げた「大相撲おつかれマツェラート」では、八角親方が自分の現役時代の四股名「北勝海(ほくとうみ)」から、弟子に「北勝〇」と名付けまくっていることについて、管理人さんが「勝」は「と」とは読まんやろと、しごくまっとうなツッコミを入れていたのには、強く同意してしまった。
もっとも、それを言ったら、伊勢ケ浜、すなわち元旭富士の弟子の安馬改め日馬富士も、なぜ「日」と書いて「はる」なのか不思議なのだが。漢和辞典を引いてみないと迂闊なことは言えないが、「日」で「はる」と読む読み方なんてあるんだろうか?
(※8)
ちなみに、「大相撲おつかれマツェラート」の管理人さんは、私の大学時代の学友である。
(※9)
でも、元横綱旭富士の伊勢ケ浜親方、という肩書きを知らずに、眼鏡とスーツ姿のこの人をテレビで見たら、案外、スポーツ界の人というより、財務省ナントカ課長、とかそんな人だと思っちゃいそうだ。
(※10)
ファンになる動機としては、ずいぶん失礼な理由だ(笑)。
(※11)
https://www.youtube.com/watch?v=iz-dDDoT41s
https://www.youtube.com/watch?v=Yagm91ezvjY
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